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ウルトラマンヴァルキリー【第10話 逃れられぬ悪夢】

ここ数日、今までのことが嘘かのように平穏だった。
マコト「平和なことはいいのだが、突然怪獣が出現しなくなったな。」
メイ「パトロールをしているのですが、これといった異変なんてありませんですからね。」
しかし、ヤエは不服そうな顔をする。
ヤエ「隊長、異変なら起こってます。ここ最近不思議な空間がありましてですね…」
しかし、隊長が否定する。
マコト「レーダー内には何も映ってないぞ。寝ぼけただけじゃないか?」
隊長がヤエの肩に手を置く。
マコト「君は疲れているんじゃないか?少しは休みなさい」
だが、ヤエがその手を払う。
ヤエ「いえ、この後はパトロールが入っているので。」
ヤエは1人、パトロールへ出掛けた。
そこへツトムが戻ってくる。
ツトム「あれ、あいつのために俺特製のコーヒー持ってきたのに?」
マコト「高山隊員なら今パトロールに出かけたぞ。」
ツトム「あいつ、相当疲れてるはずなのにまだ働くのかよ…」

ファイトスワローが街中の空を駆ける
ヤエ「確かに私は疲れている。ここ最近は寝不足だし、なんならウルトラマンとして戦ってるもの…」
すると突然、睡魔がヤエを襲う。
ヤエ「なんだか…眠たく…」
ヤエは眠ってしまった。
ヤエを乗せたファイトスワローは不思議な空間へと飲み込まれた。

一方オペレーター室
メイ「隊長!高山隊員との通信が切れました!」
マコト「何!?場所は何処だ!?」
メイ「それが…レーダーから突然消えたんです。」
オペレーター室が騒つく。
マコト「消えた位置を特定するのだ!早く!」
メイ「それが、特定できません!」
マコト「なんだって!?」

ファイトスワローは不思議な空間を進み、何処か知らぬ場所へ不時着した。
ヤエ「ハッ!」
そこでヤエの目が覚める
ヤエ「ここは…」
ヤエは1人歩く、どうやら外敵はいないようだ。
ヤエ「早く出なきゃ…」
ヤエが歩いていくと木製の扉が見え、ヤエは迷わず扉を開けた。するとそこは、MAGの基地寮の廊下だった。後ろにはヤエの部屋と証明するナンバーが書かれていた。周りを見渡すと、オペレーター室以外の通路はまるで壁のようになっており進めない。
ヤエ「ここは夢なのか?」
ヤエは寮を出ると散策しはじめた。
人は、いないようだ。
そして最後に着いたのがオペレーター室だった。
ヤエ「ここなら、何かわかるかもしれない…」
ヤエは中へ入る、入ったと同時に何かがヤエの胸を貫く。やがてその傷口から出血する。胸を貫いたものの正体は、MAGガンの銃弾だった。すると立て続けざまに銃弾が2、3発命中する。
ヤエは倒れ込む。
ヤエ「な…なんで…」
何者かがヤエに近づく、その人物の正体はMAGガンを持ったメイだった。なんとヤエを撃った犯人はメイだったのだ。メイは銃口をヤエの頭に向ける。
そして発砲。
それと同時にヤエの意識は次の場所へ向かう。

次に向かったのは、果てしなく続く草原だった。ヤエの胸が少し痛む。ちょうど最初に撃たれた場所だった。
ヤエ「…これは、現実なの?」
段々と夢と現実の区別がつかなくなってくる中、ヤエは草原を歩いていく。歩いていくと、ちょうどヤエと同じく草原を彷徨う人々がいた。
ヤエ「あの、すみません…」
ヤエが1人の肩に触ると、その人は悲鳴を上げながらまるで塵のように消えていった。ヤエがもう1人に触れると、先程と同じように塵となって消えた。ヤエは自分の掌を見ると、指が塵となっていた。指の他に足や脇腹が塵となって消えていく。やがて残った人々に囲まれて、かごめかごめを歌いはじめた。消えていく体を見つめ、自分の無力さを悔やみながら叫んだ。

ヤエが目を開くと、何処かの鳥居の目の前だった。消えたはずの体は元に戻っていた。ヤエは鳥居を潜ると、寺の前に老人を見かけた。老人はこちらを見つけると近づき警告した。
「お主、ここは危険じゃ!一刻も早く逃げるのじゃ!」
ヤエが当たりを見回すと5、6人の子供がヤエを引っ張っていた。
「おねーちゃん、あそぼ」
「あそぼ、あそぼ」
「あそびましょ、あそびましょ」
やがて子供達の顔はどろどろに溶け始め、声も鈍くなり始める。
「あそぼ…あそぼ…」
「なにして…あそぶ?」
「あそぼ…私たちと…ずっと…」
奥からは同じような子供達が近寄ってくる、それらは業火から逃げているように見えた。それと同時に悲鳴が聞こえてくる。
「あつい…あついよぉ…」
「たすけて…だれか助けて…」
「おかー…さん…」
やがて掴まれていたヤエの手足が自由になり、ヤエは後ろに逃げながら人々をMAGガンで排除していた。人々は弾が当たると風船のように破裂しては血飛沫を撒き散らしていた。
「どう…して…?」
「なんで…ひどいよ…」
「かなしいよ…つらいよ…」
その声に耐えきれなくなったヤエは全速力で逃げた。

やがて周りの景色が変わり悲鳴や啜り泣く声、笑い声が混じり、響く空間へと入っていった。ヤエが地面を踏み締めるたびに悲鳴が聞こえ、血飛沫が舞い、進むたびに笑い声が、泣く声が聞こえてくる。歩みは止まらない、この悪夢を脱するため。しかし、どう足掻こうと悪夢は終わらない。ヤエは最後の希望であるヴァルキリーアームを取り出した、その時、ヴァルキリーアームが砕け散った。
ヤエ「なんで…なんでよ!」
残ったのはあちこちから聞こえる声、見えるのは悲鳴を上げる顔や笑う顔、泣く顔が荒く繋がった空間のみ。
ヤエ「いやぁぁぁぁぁ!」
ヤエはついに発狂し、膝から崩れ落ちた。そして、ヤエは磔にされた。
それでも悪夢は続いていく。ヤエがどう足掻こうと、泣こうと、抵抗感しようと、悪夢は終わらない。
ヤエの目は虚になる
もはやこの悪夢からは逃れられないと絶望したその時…
「諦めるな!」
壁が裂け、光が指す。それと同時に声がやんだ。ヤエは鎖を力任せに外すと光指す方向へ走っていき、飛び込んだ!その光の中に、ヴァルキリーアームが輝いていた。ヤエはヴァルキリーアームを手にし、悪夢を脱出した!

シュワァー…

現実世界
不思議な空間の扉が大きく開く。そこからウルトラマンが出てくる。
空間の扉は閉じたと同時に体を生成した、それはヤエが見た悪夢を体現したようなものだった。悪夢の正体。

悪夢怪人 バットドリーム

バットドリームは突然呻き声をあげる
この現実世界に対応しきれていないようだ。ウルトラマンは腕をL字に組み、ヴァルキウム光線を放った。ヴァルキウム光線はバットドリームを直撃した。
バットドリーム「ギャアアアア!」
バットドリームは凄まじい断末魔をあげると、光の粒子となって消滅した。
ウルトラマンは天を見上げると、飛び立っていった。
ウルトラマン「シュワッチ!」

ヤエ「隊長、戻りました。」
マコト「お疲れ様だった。」
オペレーター室はいつもと変わらなかった。
ヤエ「隊長、あの空間はやはり存在しました。」
ヤエがそう報告すると隊長は首を傾げる。
マコト「空間?何を言ってるんだ?」
ヤエは少し驚くも、自分の頬をバシバシと叩く。
ヤエ「すみません、私のミスで…」
マコト「そうか、取り敢えず休んだらどうだ?」
ヤエ「…そうします。では」
ヤエは一礼するとオペレーター室を出た。
ヤエ「あれはきっと嫌な夢だよ。」
そう言い聞かせたとき、ふと胸元が痛む。よく見ると、銃弾と思われる痣が残っていた。
ヤエ「…あれは、夢なんかない。現実なのかもしれない…」
ヤエは今までの出来事を少し疑った。
ヤエ「まぁいいや!食堂でカレー食べよ」
ヤエは疑いを振り払うと食堂へ走っていった。
それと同時に、ヴァルキリーアームがキラリと輝いたのだった…

続く

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