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ウルトラマンヴァルキリー【第16話 月夜に舞う蝶】

とある日の月
そこには、巨大な繭が眠っていた。
その繭から羽が這い出る、羽は月に照らされ輝く。
そこから、まるで妖精の様な生き物が生まれた。

月蝶人 ムーンバタフライ

ムーンバタフライは地球を見つめると、地球へと飛び立った。
ムーンバタフライの旅が始まったのだ。
しかし、地球でその旅が終わることは知る由もなかったのだった…

そのころ地球

月の観測隊から通信が入った。
「こちら観測隊、月にて異変を確認しました。」
マコト「異変?」
「えぇ、どうやら巨大な蝶がこちらに向かってる模様です。」
マコト「蝶?」
「それも異質な…まるで妖精みたいでした。」
マコト「妖精?」
オペレーター室がざわつく
サトシ「なんだ、寝ぼけたんじゃねぇの?」
「いえ、そんなことは…」
メイ「田山隊員、見てください。」
サトシがモニターに目を向ける。
メイ「これ、大気圏を超えて今地球にやってきました。」
メイが指差すマークはおそらくムーンバタフライだろう。
マコト「奴が何をするかはわからない。中田隊員と高山隊員は奴をおってくれ、残りは情報収集だ。」
隊員達「了解!」

ムーンバタフライは雲の間を縫う様に自由に飛ぶ。ムーンバタフライにとっては全てが目新しいものに見えるのだ。
やがて、1つの光が見えた。大都市だ。ムーンバタフライはその光を目指し降下した。そこへ何かが当たる、マーキング弾だ。バスターホークがムーンバタフライを発見したのだ。
ヤエ「こちら高山、怪獣を発見しました。」
メイ「了解、こちらのレーダーでも捉えています。」
マコト「奴は都市に向かっている。被害が出ない様、迎撃せよ」
ヤエ「了解」
バスターホークはムーンバタフライを追いかけ、ミサイルで攻撃した
ツトム「にしても、まるで妖精みたいだな。観測隊の証言は間違いではないみたいだな」
ヤエ「とりあえず、今は奴を都市から遠ざけることが先決よ」
ツトム「わかってる、攻撃は任せたぜ!」
バスターホークとムーンバタフライは大都市の夜空を駆ける。ムーンバタフライの羽から溢れる鱗粉が月を照らし、地上では幻想的な夜空を観測できた。しかし、撮影していた人々が突然倒れだす。ムーンバタフライの鱗粉には人を麻痺させる作用があるのだ。
ツトム「人々が…倒れている!?」
ヤエ「何がおこってるかはわからないけど、奴を地上に向けてはいけないわね。」
空ではバスターホークのミサイルがムーンバタフライを牽制する。
ムーンバタフライはやがて都市を離れていった。
ヤエ「よし、逃げていくわ」
ツトム「こちら中田、帰還する」
バスターホークは帰路に着いた

マコト「なるほど、そんなことが…」
マコトは2人の報告を聞き、頷く。
ケンジ「バスターホークに付着していた鱗粉を採取し調査しましたが、どうやら人が吸い込むと体が麻痺してしまう様です。」
ヤエ「だから、人が次々と…」
都市ではあの後、鱗粉を吸い込んだ人々が病院に搬送されていた。
マコト「とにかく、奴が何かをする前に倒さなければ被害は拡大するだろう。」
メイ「隊員、奴は今都市から離れた山の中で止まっています。」
マコト「よし、全員バスターホークで出撃せよ!」
全員「了解!」

ムーンバタフライは羽を休め終え、今再び飛び立とうとしていた。そこへミサイルが飛んでくる。バスターホークだ。
ムーンバタフライは触角から光線を放つ、バスターホークは光線を交わし攻撃を続ける。
ケンジ「隊長、あの羽を破壊すれば奴は何もできなくなるでしょう」
マコト「よし、照準を羽に向けろ!」
バスターホークがムーンバタフライの羽に狙いを定める。
マコト「撃てっ!」
放たれたミサイルは羽に直解した。
と、思われたが…
マコト「なにっ!?」
ミサイルは羽をすり抜けていったのだ
サトシ「おかしい…確かに命中したのに…」
マコト「まるで…幻?」
驚愕してる中、機体が大きく揺れる。
光線が当たったのだ。
ツトム「隊長、墜落してしまいます!」
ヤエは咄嗟にヴァルキリーアームを装着する。バスターホークが光を放つ。

シュワァー…

ウルトラマンが間一髪の所でバスターホークを受け止めたのだ。
マコト「ウルトラマン!」
ウルトラマンはバスターホークをゆっくりと下ろすと、不意打ちとして放たれた光線を弾き返した。
ムーンバタフライは飛び立つと、指から光弾を放つ。それはまるで、流れ星の様だ。ウルトラマンはヴァルキリーシールドを展開し、光弾を受け切る。
ウルトラマンはヴァルキリーシールドをフリスビーの様に投げる。
シールドはムーンバタフライに直撃し、撃墜した。
ムーンバタフライは迫り来るウルトラマンを羽ばたきにより発生した強風で押し返そうとした。ウルトラマンは強風に煽られ空へ吹き飛ばされてしまった。そこへ追撃するかの様にムーンバタフライが飛翔し接近する。ウルトラマンは空中で一回転すると流星キックで反撃した。反撃は見事命中し、ムーンバタフライは墜落する。ムーンバタフライは立ち上がるとまた飛翔し、空を舞い始めた。月に照らされた羽からは鱗粉が溢れ、宙を舞う。様子を見ていたウルトラマンに鱗粉がある程度付着したのを確認すると、ムーンバタフライは口から光弾を発射した。光弾は鱗粉が舞う地上に着弾すると大爆発を起こした。ウルトラマンはその爆発に巻き込まれた。
ウルトラマンのカラータイマーが鳴る

ピンチのウルトラマンに突撃してくるムーンバタフライを突然、謎の爆発が襲う。
爆発の正体はMAGガンに装填された爆裂弾であった。
ムーンバタフライは大きくそれて、地面に激突した。ウルトラマンは立ち上がるとムーンバタフライにヴァルキウム光線を放った。しかし、ヴァルキウム光線をムーンバタフライは吸収し、光弾として跳ね返した。ウルトラマンは光弾をパンチで弾き返した。弾き返された光弾はムーンバタフライに激突した。
大きく怯んだ所で、ウルトラマンはヴァルキリーアームを天に掲げる。月の光がヴァルキリーアームに充填される。
ムーンバタフライは何かを察し、羽を広げ空へ逃げた。それをウルトラマンは逃さない。ウルトラマンは体を右に大きく傾けると充填したエネルギーを右腕を下から上へ大きく振りかざし、三日月状の斬撃を放った。

ムーンギロチンだ!

ハーフムーンギロチンはムーンバタフライを真っ二つに切り裂いた。
ムーンバタフライはまばゆい閃光を放ち爆散した。
爆発により砕け散った羽が月の光に照らされキラキラと舞う。その最期はどことなく美しく、儚かった…
ウルトラマンは天を見上げると、星々が輝く夜空へと飛び立っていった。
ウルトラマン「シュワッチ!」

ヤエ「…」
ヤエは現場近くの公園で柵に寄りかかり、夜空を見つめていた。そこへお汁粉を持ったケンジがやってくる。
ケンジ「お疲れ様でした。よかったら、お汁粉いかがですか?」
ヤエ「ありがとう…」
2人は夜空を見つめながらお汁粉をゆっくりと飲んだ。
ケンジ「…僕たちの選択は正しかったのでしょうか。」
ケンジがうつむきながら語りかけた。
ヤエ「どうしたの?」
ケンジ「いや、あの怪獣について色々調べたのですよ。あの怪獣…ムーンバタフライは宇宙を旅する無害な怪獣…
僕たちはあの怪獣の夢を、旅路を、命を奪ってしまったのではないのかと…」
ヤエ「うん…ムーンバタフライは初めて来た星で儚く散っていった…罪のない怪獣を殺めてしまった。」
ヤエは空を見上げる
ヤエ「確かに、私たちは奴の未来を奪った。本当だったら、もっともっと素敵な星を巡っていたのかもしれないわ。」
ケンジ「でも、その未来を僕たちは奪ってしまった。」
ヤエ「うん…私たちは、何かを奪わないと生きていけないのよ…
たとえ、それが何の罪がなくたってね…」
2人は静かに、お汁粉を飲み干したのだった…

続く

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