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樹堂骨董店へようこそ⑪

「パパ!やっぱり説明して!」
帰宅早々、那胡につめよられてイツキは困惑した。
「何をそんなに怒ってるんだ?」
イツキは仕事を終えて帰宅したばかりで、とにかく夕飯が食べたい。なのに、那胡がカレーの鍋を持ったまま動かない。
七緒はため息をつくと
「那胡、おじさんにご飯出しながらでもいいと思うよ?」
と那胡に促した。那胡は渋々カレーを皿によそう。先ほどのヒヤッとする体験の後、二階に女の子のオバケがいるという恐怖を感じながら二人で作ったカレーだ。あんなに強そうなオバケと共同生活していたかと思うとイツキに腹が立ってくる。那胡はイライラしていた。
七緒は仕方なく事の顛末をイツキに話した。
「なるほど、それて゛こんなに怒っているのか…」
「おじさん。あれは隠しとおせるレベルじゃないよ。今まで何もなかったのが不思議」
七緒はあきれて言った。
「すまなかった。にしても…七緒はさすがだな。あの子が言う事聞いて部屋に戻るなんてありえない」
「普通に説明しただけ。素直だったよ」
七緒に逆らえる人なんて人間でもあんまりいないんじゃないかな…とふと那胡は思った。
「パパ、あの血だらけの子誰なの?」
「あれは、この家の主だ。見た目は子供だが、生きていたら八十才を越えている」
イツキは説明を始めた。

かつてこの家はイギリス人の一家が住んでいた。もともとは行商のために日本に来ていたのだが、思いのほか気に入ってしまいこの地に家を建てたのだった。夫婦には男女の子供がいた。
男の子はフィル、女の子はリリアという。リリアが10才の誕生日にお祝いに来てくれた親類や友達と遊んでいた時、リリアは二段ベットから転落して亡くなったという。不慮の事故だった。

「これはイギリス人一家の末裔からの話とリリア本人から聞いた話だ。一家はもう仕事を引退して帰国した」
イツキは説明を終えた。聞いていた那胡と七緒は何とも言えない気持ちになった。

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