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無脳無体①

※この話は僕の実体験から着想して作られた作品です。




あらすじ
生きていても誰の害にもならないし、行きていても誰の利益にもなら無い男。
そんな主人公、佐藤。 
そんな佐藤はいつからか、心が成長していき、自分の事について問答する時間が増えていった。
自問自答の末生み出された答えの影響で、
彼は個性や自分の存在価値に餓えていく。
そして劣等感や自己顕示欲を抱いて日々をとても静かに過ごしていた。


だがその日は突然訪れる。
佐藤の自転車の籠の中におもちゃのような銃と紙が入っていた。



そこから彼の日々は変貌する。


この作品に冒険なんてありません。愛情なんてありません。友情なんてありません。
ただそこにあるのは日々の陰鬱とした日常だけ。
この作品を通してぜひ僕の捻くれを堪能してください。













   俺ができる事なんて誰でもできるんだ。








佐藤 15歳、高校1年。
今日も学校へ行かなければいけない。
ノイローゼになりそうだ。

学校は近いから選んだ。周りの奴らは「友達がそこに行くから」や「好きな人がそこにいるから」など、みんな俺と同じでやる気を感じない志望理由。少し安心する。

信号につまずいた。自分が通るときだけここの信号は毎回赤になる。意図してやってるとしか思えない。

学校に着いた。正直もう帰りたい。

チャリを置き、靴を履き替え下駄箱から廊下に渡ろうとしたその時、靴紐を踏み転びそうになった。幸いにも横転はしていないものの、急だったので体制を崩しそうになった時にかなり大きな声で「すわぅえぃっっ!」と言ってしまった。
軽く廊下に響き渡る、三人組の女子が無言でこっちを見てる。笑うなら笑えよ。

教室へ入る。今日も俺の席はびしょびしょに濡らされていて、椅子には画鋲が巻き散らかされていているんだろうなんて事は多分起きていない。

俺は学校では一言も話さない。こうやって心のなかでは沢山不満をぶちまけているが、俺が現実でこれを口に出すことは絶対にない。
これを口に出した瞬間、俺の高校生活は終わる。そんなこと流石に分かっている。
なので俺に対してのイジメが起こったことは一度もない。そもそも俺を巻き込んだイベントが起きたことすらない。

こんな自分だが友だちはいる。とは言ってもクラスの片隅にいる陰キャ達だ。
みんなクラスカースト5軍みたいな顔をしている。
そいつらはなんかよくわからんアニメの話やゲームの話をよくしている。
俺はアニメとかはあまり見ないので5軍のやつらの会話すらついていけない。
でもまぁ俺がそいつら以下と言われたら絶対に違う。奴らよりかは上だろう。

後、他の人達とは「すみません」としか会話したことがない。

なんだか自分は者というよりも、物と言った方が近い気がする。


朝学活が終わったのでバキバキにヒビの入ったスマホで時間割を確認する。

うわっ……1時間目から体育だよ……

俺は体育がかなり苦手だ。走ったり時には投げたりと野蛮だ。健康のためという売り文句。肉体的にも身体的にもストレスが溜まって逆にこっちの方が体に悪い気がする。

授業が終わった。やはりゴミだ。
そりゃ運動ができるやつからしたら楽しいだろう。他の人間を蹴散らして、点を入れる時の快感、女子が見ていれば高感度アップにもなる。
だが苦手なやつからしたらただの恥さらしにしかならない。
しかもペアをかってに組めと言われてもな、
ペアくらい教師が決めとけよという話だ。
余って死ぬかと思ったわ。

そう思いながらやたらと狭い独房のような更衣室の中で着替える。
こういう何も考えないで作業してる時、よく自分のことについて考えてしまう。

俺になにか強みや誇れる事があれば、自分だけの個性があれば、周りがどんなに地獄になってもその場所に逃げれるというか、自分を見失わないでいれるのに。誰かが求めてくれるのに……


2時間目は数学か。

俺は陰キャなのに勉強も出来ない。
これは陰キャにとってかなり痛手だ。
普通こういう物静かなやつは運動はできないが並以上の知識は持ち寄せてるというのがお約束だ。
その知識でクラスではそこそこ頭がいい奴ポジションにつけるはずだが、俺にはその役すらできない。

教師が数学のミニテストを配っている。そういえば今日はミニテストだったんだっけ。


テストが終わった。
テストは答えをもらって各自がその場で丸付けをする方式だった。
俺の点数は20点中、4点だった。数学はそもそも式の解き方がわからない。だから答えようが無いのだ。

テストを一通り丸付けできた時、後ろの席の陽キャが「俺8点だったわw終わったw」と言っていた。
続けて周りの奴らが「それはエグすぎw多分このクラスでお前が一番点数低いww」と言った。

俺はプリントを裏面にして教科書の下に置いた。

なんで周りより勉強ができないのだろう。理解力が乏しいからか?暗記が得意じゃないからか?なんで周りはこんなにできているんだよ。


長かった。ようやく6時間にも及ぶ地獄と言うなの授業が終わった。
これから俺は部活に行く。部活は軽音部だ。

俺の唯一の趣味それはギターだ。
ギターは人並み以上なら弾けると思っている。だからそこそこ自信はある気もする。

部室に入るといかにも陽キャの顔をしている四人組が中央のアンプの周りを占領して、大声で笑っている。
なぜか少し自分が恥ずかしい。

端にアンプを置き、ギターを弾く。
やっぱりギターは楽しい。辛いことを忘れられる。俺の唯一の、







「スゲェ!!やっぱりお前ギタークソ上手いな!!」








陽キャ達が何か言っている。

見てみると四人組の一人がギターを弾いている。その音や光景は遥かに俺の技術を越していた。



………………


中央で盛り上がる中、端で一人ギターを弾いている俺を誰も見ていない。きっと彼らの眼中に俺はいない。

もう帰ろう。



自転車置場で自分の自転車を取り、サドルに座り、ペダルを踏むその時、何か光った。

ってなんか籠に入ってないか?

見てみるとおもちゃの光線銃のような物が入っている。それとその銃に紙が貼ってある。



        『雨過天晴』



と書かれていた。
一体何だ?同級生のイタズラか何かか?
なんか不気味だ。イタズラにしてももう少し書くことがあるだろうと思うが雨過天晴(うかてんせい)とだけしか書かれていない。

銃、、、


持ってみると少し重みを感じる。



「ミャー」





壁の上に猫がいる。





「雨過天晴………」







銃口を猫の体に向け、構る。
なぜかこんな状況なのに馬鹿馬鹿しいと思わない。
猫は止まっている。





そしてトリガーを引く












やっぱ無理だ……俺にはこれはできない。
なんだかしてはいけない気がする。そう本能で感じているような。
そもそも猫は何もしていないのに籠に入っていた素性のわからない物を撃とうとしたのがまずい事だった。


猫を撫でる。

動物たちは生きる義務なんてわからないんだろうな………


第2話⬇

第3話⬇


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