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ぬくもり

母のお腹の中にいたのあの頃のぬくもりを忘れられない。

辛いことは何も無く、ただ安心に包まれていて、全てを肯定してくれるようなそんな世界。

だが、もうそのぬくもりを感じることは難しかった。私にとってこれは最大の悲劇だった。

赤ちゃんの時も学生の時も社会人の時だってそのぬくもりに飢えていた。
成長するにつれてどんどんとその飢えが増していき、もうその事しか考えられず、
とうとう狂ってしまった。

私はそこらの見知らぬ女を5人くらい殺した。
その女達の体を集め合わせ、解剖し、それぞれの皮膚や肉を縫い合わせ、
新しい母のお腹を作り上げた。

その中に私は入った。
肉の蓋を閉じた瞬間、
あの頃のぬくもりに私は包まれていった。

警察が部屋へ入ってきて、
皆が驚愕し悶絶したらしい。
異臭漂う肉の塊の中で犯人が餓死してたというのだから。
それも嬉しそうに。

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