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第一  事実とされているイギリスの3枚舌外交⑵バルフォア(国際)宣言について

バルフォア宣言による英国のパレスチナ人の公益騙取,福利をユダヤ人に付け替えたと事実認定される事象への考察

目次
  全文翻訳
  前提であるフサインマクマホン密約との比較

全文翻訳

[Title] Letter from the United Kingdom’s Foreign Secretary Arthur James Balfour to Baron Rothschild

[Date] November 2, 1917

[Full text]
Dear Lord Rothschild,

I have much pleasure in conveying to you, on behalf of His Majesty's Government, the following declaration of sympathy with Jewish Zionist aspirations which has been submitted to, and approved by, the Cabinet.

His Majesty's Government view with favour the establishment in Palestine of a national home for the Jewish people, and will use their best endeavors to facilitate the achievement of this object, it being clearly understood that nothing shall be done which may prejudice the civil and religious rights of existing non-Jewish communities in Palestine or the rights and political status enjoyed by Jews in any other country.

I should be grateful if you would bring this declaration to the knowledge of the Zionist Federation.

Yours,

Arthur James Balfour


(拙訳)

表題 イギリス外務大臣アーサー・ジェームズ・バルフォアより,ロスチャイルド男爵へ手紙として送られた宣言

日付 1917/11/2

全文
 親愛なるロスチャイルド卿へ

 私には大きな喜びがあります。それは,内閣に提出・承認されたユダヤ人シオニスト諸君の悲願を叶え得る以下の宣言について,陛下の政府代表として卿にお伝えできることがです。

 陛下の政府の公式見解。
 この決定により,ユダヤ民族はユダヤ民族のためにパレスチナに設立される故郷に帰ること,そしてその目標達成のため,彼ら(英国公務者)は最大限の努力を惜しまないと。
 それは以下の確約が取れたこと,すなわち何者もが,そこに暮らす市民に危害を加える恐れがなく,現在ユダヤ人が保有しているパレスチナ,およびその他宗教(イスラム圏)の国々における商用権について,これが毀損される恐れもありません。

 あなた(ウォルター:ロスチャイルド男爵)は,これを国際シオニスト会議の席上で公開宣言とするでしょうね。それこそ私の誇りと言えます。

 敬具
アーサー:ジェイムズ:バルフォア


前提であるフサイン:マクマホン密約との比較

➖ⅰ バルフォア宣言による建設予定地再確認
 本タイトルに使用させていただいたオスマン帝国時代の行政区画は,他人様の作成物で,拝借させていただくに一言お断りをしたいわけだが,具体的バルフォア宣言に約束された区分とは,このシリア諸州のうち,図中「クドス自治区」と区分される現ヨルダン建国地と現イスラエル建国地である。
 先行するフサイン:マクマホン密約によって東半分(言語は「アレッポ・ハマ・ヒムス・ダマスカスを結ぶライン」),その東はマクマホン大使がフサインに領有権割譲を先約しているので,バルフォア外相が建国許可をユダヤ人に付与できない,及び,この地図で分かるだろうか?ガザも,オスマン帝国の行政区に入っていない,よく間違われるのだが,ガザはイスラエル建国時もイスラエル・パレスチナの領域に含まれず,イギリスの進駐区画であっただけで,イギリス撤退後はエジプト領になっており,超のつく後日である第三次中東戦争においてイスラエルが占領することで現在の紛争地に含まれるわけでしかなく,イスラエル建国問題にガザは無関係であることは覚えておいてもらいたい。

➖ⅱ 成立しない利益相反取引
 バルフォア宣言による真実・ユダヤ人の国家建設先としてイスラエル・パレスチナの地が公式に伝えられていることは,フサイン:マクマホン密約によって,イスラエル・パレスチナの地にアラブ人国家が建設される先行成約が存在する前提で,同地にユダヤ人にもユダヤ人国家の建設を約束することについて,イギリスの利益相反取引を事実認定されているものである。
 しかし,前項に述べたように,フサイン:マクマホン密約には,ヨルダン川より西に位置する地をフサイン:イブン:アリーに,アラブ人居住区とは言えないとの理由で非アラブ人建国地として告知しているので,事実認定されているイギリスの利益相反取引は成立しようがない。

➖ⅲ 留意点
 バルフォア宣言で注目すべきは,ユダヤ人がイスラエル・パレスチナの地に建国しようとも,「現在ユダヤ人が保有しているパレスチナ,およびその他宗教(イスラム圏)の国々における商用権について,これが毀損される恐れもありません。」とされていることだろう。
 これは,WW1以前から戦争中であるバルフォア宣言当日まで,ユダヤ人経済界はオスマン帝国において恒常的に通商を営んでいる証拠である。
 イギリス政府にしてみれば,敵国の支援財閥がユダヤ金融であり,WW1勃発時点で,ユダヤ人と現パレスチナ勢力とは,共にオスマン帝国を構成する敵国分子であったわけだ。
 イギリスは,将来ユダヤ人とアラブ人を殺し合わせてやろうと思ったわけではなく,ユダヤ人とアラブ人にオスマン帝国への貢献を止めさせて,戦況を優位に導こうと,あらゆる可能性が試され,その代償が提案されたであろうことは想像に難くない。
 しかし結論として,フサイン:マクマホン密約とバルフォア宣言との間に,利益相反となる契約は存在していない🟰いま言われるイギリスの3枚舌外交は事実無根との見解を示しておく。

では,もう一つのイギリスの利益相反行為に当たるとされる「サイクス:ピコ密約」と「フサイン:マクマホン密約」との齟齬はどうなのか?

それは次回【事実とされているイギリスの3枚舌外交⑶サイクスピコ密約】にて。

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