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「グラム染色」をマスター!細菌検査の基本技術を身につけよう

食品衛生管理の中心技術である「グラム染色」。この記事では、その基本手順から結果の読み取り方、そしてトラブルシューティングまで、全てを詳細に解説します。
一歩進んだ細菌検査の知識を身につけ、より安全な食品環境の実現に貢献しましょう。


グラム染色とは

グラム染色は、細菌を顕微鏡で観察する際に用いる染色法で、細菌の細胞壁の構造によって染色結果が異なる特性を利用した細菌を分類する基準の一つです。
細菌を「グラム陽性」と「グラム陰性」の二つの大きなグループに分けることができます。
「グラム陽性」は紫、「グラム陰性」は赤に染色されます
また、グラム染色には3種類あり、ハッカー変法、フェイバー法、バーミー法があります。

グラム染色の歴史とその重要性

グラム染色は、1884年にデンマークの医師ハンス・クリスチャン・グラムによって開発されました。
彼が肺炎の患者の肺組織の細菌を調査していた際、独特の染色法を用いることで細菌の観察が容易になったことからこの技術は広く認識され、今日まで使われ続けています。
グラム染色は、その速度と簡便さから、感染症の初期診断において非常に重要な手段となっております。

グラム染色が使用される場面

グラム染色は様々な場面で利用されます。
医療現場では、感染症の原因となる細菌を特定するために行われます
例えば、咳や発熱が続くとき、医師は痰や血液を採取してグラム染色を行い、感染症の原因となる細菌の種類を特定します。
また、食品衛生の管理では、食品から細菌を検出し、その種類を確認するために用いられます。これにより、食材の衛生状態や保存状態を評価するのに役立ちます。

グラム染色の手順

グラム染色を行うためには一連の手順が必要です。
ここでは、ハッカー変法について概要を説明します。

必要な材料と準備

グラム染色に必要な材料は以下のとおりです。

・細菌の培養液や試料
・グラム染色キット(クリスタルバイオレット液、ルゴール液、アルコール、サフラニン液)
・スライドグラス
・顕微鏡
・安全装置(手袋や防護眼鏡など)

これらを揃え、細菌の取扱いに必要な安全な環境を整えてから手順に進みます。

染色の具体的な手順

染色の手順は、
①スライドグラスに細菌を塗抹し、空気で乾燥させます。
②乾燥したら、スライドグラスを弱い火炎中に通します。
③クリスタルバイオレット液で1分間染色し、水で洗い流します。
④ルゴール液を加えて1分間置き、再度水で洗います。
⑤アルコールで約10秒間洗い流すことで脱色します。
⑥サフラニン液で1分間染色し、水で洗い流して乾燥させます。
⑦乾燥後、顕微鏡で観察します。

注意点とトラブルシューティング

グラム染色において注意すべき点はいくつかあります。
特に、細菌を取り扱う際には安全に最大限の配慮を払う必要があります。
また、アルコールによる脱色不足と水洗不足だと、偽陰性となる可能性があります
このようなトラブルを防ぐためには、脱色工程の時間を正確に守ることと、染色液や脱色液をきちんと洗い流すことも重要なポイントとなります。

グラム染色の結果の解釈

グラム染色の結果を解釈するためには、まずグラム陽性とグラム陰性の違いを理解する必要があります。

グラム陽性とグラム陰性の違い

グラム染色後、細菌はクリスタルバイオレットの色を保持するか否かで二つのグループに分けられます。
色を保持するものをグラム陽性、保持しないものをグラム陰性と呼びます。
これは細菌の細胞壁の厚さや構造に起因します。
グラム陽性菌は外膜がなく、グラム陰性菌に比べて厚いペプチドグリカン層を有し、紫色の染色を保ちます
一方、グラム陰性菌は薄いペプチドグリカン層と外膜を持ち、脱色されやすく、サフラニン液で染まりやすいことから赤色に見えます

結果の読み取り方とその意義

グラム陽性かグラム陰性かの判断は、顕微鏡観察によります。
染色された細菌が紫色ならグラム陽性、赤色ならグラム陰性と判断します。
この結果は、細菌の種類を特定し、その細菌が感染症の原因である可能性を評価するために重要です。
また、食品衛生の観点からは、食品の汚染源や、食品が適切に加熱・保存されているかの指標となります。
さらに、これらの結果から適切な抗生物質の選択や、食品の保存状態の改善策を立てることができます。

よくある質問

Q. グラム染色はどのような細菌を識別できるのか?

A. グラム染色は、細菌の細胞壁の特性に基づいて細菌を識別する方法です。具体的には、細菌がグラム陽性かグラム陰性かを判別します。例えば、グラム陽性菌には乳酸菌やビフィズス菌など、グラム陰性菌には大腸菌やサルモネラ菌などがあります。ただし、全ての細菌がグラム染色で識別できるわけではありません。一部の細菌は染色困難な場合があります。

Q. グラム染色以外にどのような細菌検査の方法があるのか?

A. グラム染色の他にも、酵素活性を確認する酵素試験、特定の培養基での生育性を見る培養法、細菌の遺伝物質を検出するPCR法など、多くの細菌検査の方法があります。

Q. 自宅でグラム染色は可能なのか?

A3. 理論的には、必要な材料と器具が揃っていれば自宅でもグラム染色は可能です。しかし、染色液や試薬は特殊なものを使用しますし、観察には顕微鏡が必要です。そのため、一般的には専門的な研究室や教育機関で行われます。

Q. グラム染色の結果はどのくらいの時間で出るのか?

A. グラム染色そのものの作業時間は約10〜30分程度です。しかし、その前に細菌の培養を行う必要があり、培養時間は細菌の種類や培養条件によりますが、一般的には24時間以上を要します。したがって、培養を含めた全体の結果が出るまでには最低でも1日以上は必要となるでしょう。また、その結果の解釈には専門的な知識と経験が求められます。

これまで解説してきた「グラム染色」の知識と手順は、食品衛生管理を担うあなたにとって、大切な武器となります。
安全な食品環境の確保は、その解釈と適切な対応によって成り立つのです。

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