目薬

魚屋の片隅にあった目薬を買う
お店の人と角膜や水晶体等について
少しだけ話した
すぐ側で魚介類はそれぞれに
幸せそうな形で整然と並んでいた
それから帰りの駅ではお腹が痛くて
膝を抱えたまま眠った
どれくらいたったのか、眼が覚めると
あたりはすっかり暗くなっていた
電気を落とした列車が
一番線のホームに停車していた
模型のような息だけが
唇のわずかな隙間から漏れていく
ポケットから目薬を取り出す
透明な薬剤の中を
小さな魚が泳いでいる
今まで見たどの魚とも似ていて
どの魚とも違う気がした
そのようにして記憶をたどると
辛かったことも楽しかったことも
同じくらいに残っていて
それでも自分の気持ちは
半分以上が良くわからなかった
 
 


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