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認知症の母:遠隔介護 モノが行方不明になる問題

母は、50代で退職するまで長いこと法律事務所で事務長をしていた。
年齢としては珍しくパソコンも普通に使い続けていたし、身に付いた事務処理能力は素晴らしく、家の中も常に整然と片付いていた。

「家の中が散らかる」のは認知症の症状だとよく聞くが、母の場合は認知症になっても家は常に片付いていた。掃除機を使えなくなったのでヘルパーさんに週に1回掃除してもらっていたが、ゴミや衣類が散らかるようなことは全くなかった。

でも、片付けというのはモノの『仲間』のまとまりを理解することだ。
ハサミは文房具の仲間だし、炊飯器はキッチン道具の仲間だ。
母はその『仲間探し』が徐々にできなくなっていた。
ハサミが食器棚の引き出しに入ったり、炊飯器がテレビの脇にあったりした。
どんどん『仲間探し間違い』が増えていった。
あるべきところに、あるべきものが無い。
母はモノを手に取ると元に戻せない。
それがゆっくりと増えていった。

綺麗好きな母は「片付けた」状態にしたいのでどこかへ仕舞う。
それが間違っているので次に探せない。

ハサミなどはまた買えばいいが、無いととても困るモノが、
・お金に関わる、通帳、カード、印鑑、ワンタイムパスワード発行器
・書類。郵便、マンション管理組合のお知らせ、身分証など
これらは無いとさすがに困るので、慌てて家中を探すことになる。

 お金は、お財布にキャッシュカードを1枚だけ、現金を2〜3万円以上は入れないと決めた。運用は弟と私が訪問したい際に補充することに。
お金に関わることはルール決めと運用がとても大事なので必要に応じて変更していった。介護スタッフが複数出入りする以上、だらしない運用ではトラブルの素を作ることになる。「お金はちゃんとある」と母が安心することも大事だし、関わる周囲の方を疑う余地をなくすことも大事だ。

 郵便などの書類については専用のファイルケースを作ってみた。
母の家には、背表紙にタイトルを付けたファイルケースが山ほどあったので、それを利用した。

とりあえず書いたタイトル。そのうちファイルは1つだけにした


「チラシは捨てて、自分宛の郵便が来たらここに入れてね」
母が使い慣れたファイルなのでとてもうまくいった。

届いた書類を漏れなく受け取ることは本当に重要なことだった。
介護が始まった翌月の2022年2月からドドドーーーっと請求書が届いたからだ。届いた順に慌ててどんどん支払ったが、2ヶ月続いた頃、必要に駆られてこのファイルを用意した。
常に母の目に付くテーブルの上に平たく置くことにした。ファイルをどこかに立ててしまうとまたわからなくなる。
母に見えなくなったり見えにくくしないことも重要だった。
その後、郵便や未処理の書類がなくなることはなかった。
母にはとてもわかりやすかったようだった。

介護がスタートした時からなぜか弟はお金の処理を全くしなかったので、自然と私がお金に関わることを全て引き受けるようになった。
私はとても大変だったが結果的にはそれで良かったと思う。
お金に関することは責任者を一人に決めた方がいい。
もちろん母を含めた家族で情報共有する前提で。
(お金に関わる話は別に書きたいと思う)

とにかく支払いが滞りすぎて、変な色の封筒が届かないようにしないといけない。同時に民間の保険の加入確認証のようなものも届き、徐々に母の総資産を調べていった。

とにかく書類が無いと調べようがないことがたくさんあった。
介護のはじめは、事務仕事が中心だった。

私の家にも母のファイルケース。
書類が多い…..


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