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手相鑑定で運命は変わった②

占いからの帰り道、ふと高校生の頃を思い出した。
私は女子校に通っていたのだが、クラスの一部で流行っていたのが、「恋愛小説」だった。それを読むのではなく、書くこと。つまり小説を書くのが流行っていたのだ。

小説といえるような物じゃなく、作文のような文章だった。それはそれで楽しくて、休み時間になると、集まっては小説の創作をしていた。
文章を書くのが得意とするものが数名書き、イラストを得意とするものが挿絵を書き、その他は憧れる恋愛を妄想して、アイデアを出していた。
私は物語を書く方で、クラスメイトが言う妄想恋愛を文章にしていった。
主人公や設定は私が考え、シチュエーションをみんなで考える。
出来上がった物語は、クラスで回し読みをしていた。

突然キスする?
抱きしめる?
偶然助ける?

不思議な設定が盛りだくさんの高校生の妄想恋愛。
今時の高校生もそうであるように、昭和の女子高生も恋愛に憧れ、ときめいていた。
キザなセリフとキスシーンが出てくるだけで、赤くなりキャーキャーいう私たちは、純情で本当に可愛かったと思う。

「書いてみよう」

休日にぼーっとしていると浮かぶ物語。妄想癖をどうにかしないとなんて悩んでいたけど、そうじゃなかった。どうにかするんじゃなくて、吐き出せばよかったのだ。
占いに気づかされ、背中を押されたような形になったが、それからずっとパソコンに向かって書きまくった。
文芸誌の新人賞に応募しないと、小説を発表する場所はないと思っていたので、発表はせずに創作だけをして、ただ文章を書きあげるだけで満足だった。
そんな日々の中で、小説を投稿するサイトがあるとネットで知ったのだが、

「いやいや、私の小説なんか読まれない」

行動する前に決めつける悪い癖が出る。投稿したい、投稿は恥ずかしいと気持ちがいったりきたりする中で、書いた小説もたまっていく。

「やっぱり投稿しよう」

ペンネームを考え、投稿の仕方を熟読し、複数ある投稿サイトの中から、一つを選んで登録をした。
どきどきした。
胸が高鳴った。
ペンネームから姓名判断までした。
自分の中でゴーサインが出た時、エイヤッと投稿した。
すでに人気作家がいる中での新人。誰にも読まれるはずもなく日々は過ぎた。投稿サイトの中で埋もれていく小説。それでも投稿していくと、嬉しいことに読者がつくようになったのだ。

「あ、本棚に入れてくれた!」

私のファン一号、今でもその方のユーザーネームは忘れていない。
それからとんとん拍子にファンが増えていき、とうとう編集部おすすめ作品に取り上げられるまでになった。
これをきっかけに、ランキング1位になった。
涙が出た。
本当に嬉しかった。
それから今までゆっくりと小説を書いてきた。
同じ作品でもサイトによって、評価は様々だが、それでも私は書きたいものを書く。
ランキングを気にしないと言ったら噓になるが、一人だけでも好きだと読んでくれれば、それも嬉しい。
地道な投稿が書籍化へと向かった。書籍化のオファーが来たのだ。

「噓でしょ?」

書籍化が信じられずに、オファーのメールを何度も読み返した。
ただの物書きだった私が、曲がりなりにも、小説家と名乗ってもいいのだろうかと思った瞬間だった。

小説を投稿している人なら、誰でも本という形になってほしいと願うもの。それを叶えるのは容易ではないけれど、続けていくことに意味があり、続けた先にはきっといいことがあると思う。私もここまでくるのに、10年かかった。だから完結だけはしてほしいと切に願う。
私の読者から、こんなコメントを頂いたことがある。

「完結しない小説が多い中、必ず完結してくださってありがとうございます」

完結しない小説が、そんなにあるのかと初めて知った。このコメントをいただいてから、私は時間がかかっても、完結することを目標としている。そして、作品を楽しみに待っている読者のために、今日も私は投稿をする。


★小説を書いている方、これから書こうとしている方、執筆していく上での悩みなど、共有出来たら嬉しいです。


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