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web3の「PLAY to EARN」はポンジスキームなのか?

「遊ぶために金を使う」⇒「金を稼ぐために遊ぶ」の謎

 価値の流動性革命の例として、あるブロックチェーンゲームを紹介したいと思います。

web3の世界を体験したことがある人にとっては、誰もが知っているAxie Infinity というゲームです。

(※偶然ながら、奇しくも昨日 Axie Infinity はハッキングにより、暗号資産史上最悪の770億円が盗まれたようです。この記事は、約2週間前に書いていたため、内容はハッキングの件には触れていません)

Web3の世界を語る上で、ブロックチェーンゲームの話題を語ると、
「これがweb3の本質だ。web3に本質的な価値はない」とか、
「web3の本質はポンジスキームだ!」
というような誤解をされかねないので、念のために始めに断っておきます。

ブロックチェーンゲームを取り上げる理由は、web3の本質という訳ではなく、あくまで、web3の世界では、「我々のこれまでの常識や価値観では考えられない事が起きるという」一番インパクトのある例だからです。

 また、その考えられない事が起きる理由が、価値の流動性によるものだからと結論から申し上げておきます。

Axie Infinityは、NFT化されたモンスターを3体以上購入し、そのモンスター達を育成して、チームを組ませて戦わせるバトルゲームです。

 私はゲームにあまり詳しくはないですが、ゲーム自体はそれほど真新しい内容のものでは無いと思います。

 では、これまでの一般的なweb2.0のゲームとの違いは何か?

それは、このゲームのプレイヤーが、ゲームをプレイすることで、お金を稼ぐことができる点です。

 web3の世界では、もはや当たり前すぎる事なので、もはや話題にもなりません。

 ただweb2のゲームしか知らない人にとっては、かなり眉唾な(怪しい)情報のように聞こえるかもしれません。

 しかし、実際には、日本では少ないものの、このAxie Infinityで稼いで生計を立てている人もいます。

 例えばフィリピンでは、コロナ過で仕事を失った人達が、こぞってAxieをやり始め、大きなムーブメントとなりました。(フィリピンのこの現状のドキュメンタリー映像がありますので、興味のある人はどうぞ)

 最も盛り上がっていた時期(2021年の8月あたり?)では、時給換算すると、日本円で約3000円~約5000円ほど稼げていた時期もありました。

 こういう話をすると、多くの日本人は、
「そんなのは、ポンジスキームだ。詐欺に違いない」
と否定します。

 私も全面的にAxie Infinityを肯定しようとは思いません。
確かにポンジと言えば、構造はポンジに限りなく近いかもしれませんが、詐欺でない事も確かです。

 また、これがビジネスとしてきちんと成立している事も紛れもない事実です。

ポンジスキームとは、出資した側がその資金を配当として、出資者に配に還元することで、「儲かる」と謳う詐欺の事ですね。先に参加した人は、どんどん、出資者を募っていき、集めたお金の一部を配当として出資者に配ります。
 
 日本では”ねずみ講”と言われたりします。

こういったポンジスキームでは、最後の出資した人達が、出資した額の配当をもらえないため、結果的に損を被るシステムになっています。

 ポンジスキームに似たものと言えば、ネットワークビジネスがあります。代表的なネットワークビジネスと言えば、アムウェイや、New Skinなどがあります。
 
 これらは、詐欺ではないですが、実質的にはポンジスキームに限りなく近く、信用をお金で売るようなサービスなので、現実的にはなかなか受け入れられにくいものでしょう。

 Axie Infinityを代表とするブロックチェーンゲームは、一見すると、こういったポンジスキームや、ネットワークビジネスに構造的に似ているので、多少の気持ち悪さがあるのですが、しっかり見てみると、本質的に異なったものになっています。

 一番の違いは、ゲームのプレイヤーであるフィリピンの人達(Axieで生計を立てている人達)の多くが、初期投資としての、NFTのモンスターを自分で購入していない人がほとんどである点です。

 彼らは、ゲーム内のスカラーという制度(NFTのレンタルに近い制度)を利用して、先進国のお金に余裕のある人達に、NFTのモンスターの費用を出資してもらい、バトルで得た報酬の50%から60%を自分が貰い、残りを出資者に還元するという方法で生計を立てているのです。

 つまり、現状の資本主義経済の、出資者と労働者の関係と同じです。

 出資者は、プレイヤーのプレイ時間、つまりここでは労働力にあたるものに価値を感じて出資していて、プレイヤーは出資者に時間的労働価値を提供しているのです。

 仮にこれをポンジスキームだと言ってしまえば、すべての株式投資は完全なポンジスキームになってしまいます。そうなると、資本主義全体もポンジスキームという事になるのです。

 そもそもよく考えてみれば、資本主義の社会はポンジスキームのようなものなのです。消費者の支払うお金を出資と見立てれば、価値のありそうなものに、一番遅れて出資した人達のお金が、先に出資していた人達の利益になり、労働者はその差額のお金をもらうという仕組みですからね。

 さて、このAxie Infinityの例のように、一部のフィリピンの人達は、お金を稼ぐためにゲームをプレイしていますね。この概念を、web3の世界では、「Play to earn」と呼んでいます。

「Play to earn」 が成立する理由は?

Axie は、2018年にリリースされ、今年ですでにもう4年目になります。

 一時期ほどのバブルではないですが、いまだにAxieで生計を立てている人は一定数います。

 そして、ブロックチェーンの世界では、play to earn は当たり前の概念として、日々新たなゲームが公開され続けています。

 正直に言えば私は、初期の頃、この「play to earn」の考えに多少の嫌悪感を持っていました

頭では理解しているものの、一種の気持ち悪さがどうしても拭えなかったのです。

 しかし、よく考えてみれば、過去を振り返ると、こういった気持ち悪さを感じる事は、今に始まった話ではありません。
 
 例えば、「youtuber」が世の中に出始めた時は、多くの人がこの種の違和感を感じたではないでしょうか?

 「好きな事だけやって、それを動画にして、稼ぐ?そんなのが成り立つほど世の中甘くねえわ!仕事をなめんなよ」と私を含め、多くの人が言っていましたね。

 しかし、youtuberは、今では当たり前の存在になりつつあります。市場が飽和しつつあるため、今からyoutuberとして稼ぐのは簡単ではありませんが、初期の頃にシェアを獲得したyoutuberは、ずっと稼ぎ続けていますね。

 youtuberが職業として成立するようになった要因は何でしょうか?
当たり前ですが、インターネットが普及したからです。

 これまで、テレビに出られるごくわずかな人にしか与えられなかった、「人々の注目を浴びて、広告収入を得る」という特権が、一般市民のレベルに流れてきたのです。

 これは、まさにインターネットによる情報の流動性革命の産物の一例と言えるでしょう。

 ではここで、play to earn の話に戻りましょう。

play to earn が Axie Infinityの成功にとどまらず、これからも拡大し続ける事ができるとすれば、何故そんな事が可能なのでしょうか?

例えば、Axie Infinityという一つのゲームの経済圏を取り巻くお金の動きを考えてみます。

  1.  Axie Infinity を始めるには、NFTのモンスターを3体買わないといけません。この段階でAxie Infinity の世界の外から、投資家により資金投入されます。

  2. 投資家は、自分でゲームをプレイするか、スカラー制度を使って、人を雇ってプレイさせてお金を稼ぎます。このお金の出どころは、誰かが勝ったNFTの購入金額の一部から発生すると考えられる。

  3. 「ゲームをプレイするとお金が稼げる」事が話題となり、注目があつまり、Axie Infinityを始める人が増える(人が集まる)。

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 確かにポンジスキームに限りなく近いビジネスモデルではありますね。(汗)

さて、ここで一番の不思議は、なぜプレイヤーは遊んでいるだけで、何の価値を生み出していないのに、お金をが貰えるかという点ではないでしょうか?  

 実はプレイヤーは、何も価値を生み出していないわけではないのです。
そもそも、このAxie Infinity という世界が成立するには、プレイヤーがいないと始まらないのです。絶対に必要な役割なのです。

 別の言い方をすれば、ゲームの中の登場人物という事になるでしょう。

その登場人物の役割を時間をかけて演じてくれるわけなので、何も価値を生み出していないわけではありませんよね。

 また、プレイヤーの参加により、ゲームが盛り上がれば、「このゲームは面白い」という事になり、注目度も上がります。

 注目されれば、今までAxieを知らなかった人が、このゲームに参加することになり、また外からお金が投入されることになります。

 つまり、プレイヤーはゲームの盛り上げ役として、集客の一端を担っているとも言えますね。

 現実の世界でも、人を集められる人物は、お金を稼ぐ事はできまね。

どんなビジネスにも共通していると思いますが、一番難しく、一番お金がかかるのは、「集客」です。

 私も本業は経営者ですので、集客の苦労は痛い程わかります。 

そう考えれば、Axieで人々の関心を集める役割を担うプレイヤーがお金をもらうのは当然の話だと思いませんか?

 では、なぜこれまでのweb2のゲームの世界では、これができなかったのでしょうか?

 私は、頑張って仕組みを作れば、web2でもできた可能性はあると思っています。例えば、Axieで言うところの初期投資のNFTの収入の部分は、参加費という形で徴収し、参加者が集まれば広告収入を得る事も可能です。

 しかし、結局プレイヤーにお金を支払うとなると、一人ひとりのプレイヤーがゲームに費やした時間を正確にカウントして、間違いのない報酬金額を正確に支払う必要性が出てきます。

 これには大変なコストがかかります。さらにプレイヤーの数が増えれば増えるほど、コストは膨れ上がります。

 まともな運営者であれば、これでは到底ビジネスとして成立しない事は想像できると思います。だから、web2では誰もチャレンジすらしなかったのだと思います。

 そのため、web2においては、プレイヤーをとにかく夢中にさせるコンテンツを作って、彼らからお金を集めるしかないのです。

 つまり、web3とweb2のプレイヤーを比較すると、見た目は同じようなゲームをやっているのに、「web3ではプレイヤーはお金を稼ぎ、web2ではプレイヤーはお金を払う」という、全く正反対の現象が起きる事になります。

そして、この正反対の結果を生み出す決定的な差は、「報酬の分配コスト」という事になります。

 つまりこれが、まさに「価値の流動性」の差なのです。

 ちなみに、Axie Inifinity をプレイしている人の中には、自分でNFTを購入して、自分でプレイしている人も多数います。さらにそういった人の中には、「Axieはプレイするだけでも楽しい。別に初期に投資した金額が取り返せなくてもいい。」という人もいるでしょう。

 逆に言えば、こういう人がいないゲームはいかにweb3とはいえ、長い目で見れば、成立しなくなるでしょう。

 結局は、それぐらい面白いゲームを作れるかどうかで、ゲームの価値が決まるので、そこについてはweb2と大きな差はありません。

 Play to earn の例では、

「このゲームは絶対に面白い。だから今後沢山人を集めることができる。よし、このゲームのトークンを最初に買っておこう。そうすれば必ず利益がでる」

  • こういったゲームを作る事ができる人

  • こういったゲームを見つけてなるべく早い段階から投資できる人

が大きく儲ける事ができる人です。
当然ですが、労働者としてのプレイヤーは、時間を売って、お金をもらうので、それほど大きな儲けはありません。

 本質的には、現在の資本主義と大きな違いがないですよね?
むしろ、資本主義が、脱皮してアップグレードしたものと考えれば、気持ち悪さはなくなるのではないでしょうか?

価値の流動性が生み出す、無限の可能性

Play to earn の構造を知った時に、私は、
「こんな事が成り立つなら、なんでもありなんじゃないか?」
と感じました。

 とにかく、何か注目を浴びる新たなweb3のプロジェクトを作れば、たいていの事は成立するのでは、と疑問を持ちませんか?

 私がそうやって戸惑っているさなかにも、つい最近あらたな概念が生まれました。

 walk to earn( move to earn)という概念です。
つまり、歩く(動く)だけで稼げるという概念です。

 2021年12月にStepnというDappsがβ版で発表されました。

Web3のスマホアプリをインストールし、アプリ上でスニーカーのNFTを購入します。そのスマホを持って、リアルの空間で歩くと、スマホのGPSがその移動距離を自動的に算出し、移動距離に応じてお金(GSTトークン)がもらえるというシステムです。

 SNSなどでも、このStepnを導入し、もうすでに毎日の通勤を徒歩にして、一日に数千円分のGSTを稼いでいるといった、投稿をよく見かけるようになりました。

 当然ですが、Axie Infinity 同様スカラー制度もあり、初期投資ゼロで導入することもできます。

(※今はバブル状態だから稼げているのですが、これがいつまでも続くかはわかりません。)

  Stepnの収益構造は、ほとんどAxie Infinityと同じです。エコシステム全体は、注目を浴び続けて新たなユーザーが外からの新規のお金をどんどん入れてくれいている間は、GSTトークンの価格は上昇か維持できるという仕組みですね。

 私がこのDappsを取り上げた理由は、これが物理空間とつながった点ですね。

 スマホとGPSを応用することで、Web3が仮想空間からようやく飛び出し始めたという点に注目しています。

 StepnはSolanaというパブリックブロックチェーン上のDappsです。
これまで、物理空間とつながるブロックチェーンと言えば、ほとんどがコンソーシアムブロックチェーン(企業)のような、閉鎖的なブロックチェーンでした。

 今後は、このStepnのようにパブリックブロックチェーンが物理空間や、あるいはWeb2の世界に徐々に接続されていく動きが加速していくと思います。

 実は、私自身も、「価値の流動性革命」というヒントを頼りに、すでにWeb3のプロジェクトのアイデアが様々湧いてきています。

今はまだまだ黎明期ということもあり、時折ひらめくアイデアとして
「こんなDappsがあったらいいのにな」
というものが、まだほとんど世の中に出回っていない状態です。

 この1000年。。。いや、2000年に1度のチャンスを逃す手はないので、必ず近いうちに、Web3のDappsを発表しようと考えています。

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