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おしゃリスタとズボラスタの遭遇

先日、ある用事の帰りに近所のGUを覗いてみた。
店内に入ると、「おしゃリスタによるコーディネート講座」が開催中だった。なんと無料で受けることができるらしい。普段ファッションには全く興味を示さない私だが、無料ならと、面白半分で受けてみることにした。

受講者は私の他に5人ほどいたが、全員女性だった。
みんな服を着ていて、おしゃれだなあ、と思った。あいにく私はファッションに関してこの程度のボキャブラリーしか持ち合わせていない。そんな私でも、講座を受ければ「おしゃリスタ」とやらに一歩近づくことができるのだろうか。少し緊張してきた。

開始時間になると、快活な女性が一人、私たちの前に現れた。

「どうも!おしゃリスタの中村(仮名)と言います!本日はよろしくお願いします!」

ハキハキした声で挨拶を終えると、私たちに爽やかな笑顔を向けた。私たちはまばらな拍手で彼女を出迎える。
彼女は笑顔のまま、一人一人に自分の名刺を配っていく。名刺には大きく「おしゃリスタ」と書かれていた。

おしゃリスタ。改めて見るとすごい肩書きである。常におしゃれでいることが求められるのだろうか。だとすると私には荷が重すぎる。間違っても名乗ってはいけない肩書きだと肝に銘じた。

しかし彼女はそう名乗るだけあって、おしゃれな着こなしをしていた。服装自体はシンプルであるが、完全に彼女に似合ったコーディネートをしている。おしゃリスタとしての実力が垣間見えた。

おしゃリスタとしての輝きを放つ彼女を見て、私は自らがおしゃリスタとは対極の位置にいることを自覚した。
まず、このグレーの毛玉に塗れたセーター。5年前に無印良品で購入してからずっと着用しており、ヨレヨレである。また、右胸には謎のワッペンが付いている。ワッペン。おしゃリスタの前でワッペンなど口にすれば、血を吐いて倒れるかもしれない。
また、寝癖を確認せずに家を飛び出してきたので、頭はボサボサである可能性が高い。コンビニにアイスを買いに行く感覚で、コーディネート講座に来てしまっている。
極め付けはこの靴下だろうか。しっかり右親指部分に穴が空いている。見えないところでオシャレしろ、の真逆をいっている。見えないところも念入りにダサくしている。

彼女の目に私はどう映っていたのだろうか。珍獣が1匹混ざっているな、と思っているかもしれない。おそらく彼女の中には、身だしなみを整えずに外出するという概念はないだろう。身だしなみを整えた上でどんなおしゃれをするのかが彼女にとっては重要であり、私はその土俵にすら上がれていない。彼女がおしゃリスタならば、私はズボラスタだ。

おしゃリスタとズボラスタ。決して出会うことのなかった二人が、ついに相まみえた瞬間だった。

前置きが非常に長くなった。その後は骨格診断をしてもらった。骨格をいくつかの系統に分けることで、その人に似合うファッションを導き出せるらしい。系統によって、得意なファッションと苦手なファッションがあるようだ。

私は骨格ウェーブだと診断された。筋肉が付きにくく、腰位置が低いのが特徴らしい。このタイプの人はハリのある生地の服は似合わないらしく、ヨレヨレダボダボの服を選ぶべきだとアドバイスされた。

ん?ヨレヨレだとダメじゃん。でもおしゃリスタがそう言っていた気がする。ヨレヨレだったか?ヨレヨレなんておしゃリスタが言うのか?どうだったっけ。おしゃリスタという肩書きに興奮して舞い上がりすぎて、肝心なところを全て忘れてしまった。




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