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不気味なシャッター街と謎の居酒屋

私は散歩中に、細い路地を好んで歩く習性がある。
今日も散歩中に細い路地を見つけたので、無意識に路地へと足を進めた。
細い細い路地を通り抜けると、そこには商店街があった。

ほとんど整備されていないのか、天井に吊るされた蛍光灯のほとんどは機能しておらず、日中だと言うのに薄暗かった。ほとんどのお店がシャッターを閉めており、人っこ一人いる気配もない。前日雨が降っていたわけでもないのに、少しじめっとした、嫌な空気を感じる。

この先進むべきではないのでは、と直感したが、興味の方が勝った。私はアーケード内に足を踏み入れた。
不気味な雰囲気を感じながら商店街を歩いていると、一軒だけ賑わっている居酒屋があった。ガヤガヤとした声が聞こえる。かなり賑わっているようだ。店の前で立ち止まっていると、女性店員の「シークワーサーサワーひとつと、唐揚げですね!」というハキハキとした声が外まで聞こえてきた。

やっと営業しているお店を見つけて、少し安心した。
しかし、何かがおかしい。
この居酒屋以外のお店は全てシャッターを閉めており、外には人一人いる気配もない。それなのにこの居酒屋だけが異常に賑わっている。誰かがこの居酒屋に出入りする様子もない。

不審に思い居酒屋の中を覗き込もうとするも、人影が動いていることしか視認できず、中の様子はわからなかった。
私は少し怖くなり、足早にその場を立ち去った。背後からはずっと、居酒屋の賑わっている声が聞こえていた。

あの居酒屋は何だったのだろう。結局商店街を抜けるまで誰一人見かけなかったし、シャッターを開けているお店はひとつもなかった。
もしかして、人間用の居酒屋ではなかったとか?「千と千尋の神隠し」の冒頭シーンのように。
もしあの時、居酒屋の扉を開けていたら…

私のゴールデンウィークが始まった。


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