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【レビュー】おばさんになってから見る東京ラブストーリー【ネタバレ】

バブル感丸出しのまさにトレンディドラマ!

東京ラブストーリーといえば、ドラマ界のレジェンドと言っても過言ではないほど世間の話題をかっさらい大流行したドラマである。
見出しに一応【ネタバレ】と書いたが、きっと私のような40代以上の世代はほとんどの人がなんとなく内容を知っているであろう。

1991年放送だったらしいので、細かく言うならばバブルが弾けるかどうかの境目だったのかもしれないが、ドラマの中はまさにバブリーな世界。
当時私は小学生だったのでリアタイでは観ていなかった。
でも学校やテレビなどで東京ラブストーリーというドラマが流行っているらしいことだけは知っていた。

その後、夕方に何度か再放送されていたので後々観ることになるのだが
当時見ていた感想としては一途で健気なリカに肩入れし、カンチとリカの恋路をとことん邪魔してくるさとみに心底ムカついたものである。

おばさんになってから見るラブストーリーとは

結婚して子供を二人育てているうちに41歳になってしまったおばさんがAmazonプライムで東京ラブストーリーを配信しているのを見つけ、なんとなく見てみようと1話目を見てみたら続きが気になって…という感じで結局最後まで見てしまった。

若い時に見た角度とはまた違った視点で観ることが出来て新鮮だったのでレビューしてみようと思い立ったのだ。

ラブストーリーに全振り

大人の恋愛ドラマなので、当然登場人物は仕事をしていて会社に勤めていたりする。

「いやいやいや…そういうドラマの話ですやん、エンタメですやん」
と言われればそれまでだが、ラブストーリーに全振りしてるなぁと感じるのはなぜかというと、登場人物全員が頭の中ソレしかないんかというほど恋愛感情に支配されているからである。

カンチとリカは仕事中だというのに職場で頻繁にイチャイチャし、
リカの元不倫相手であった上司が「今夜ちょっと付き合え」と言って呼び出してはカンチにはリカの事を、リカにはカンチの事を
「あいつとは最近どうなんだ?」と聞き出そうとする等、登場人物同士の話題が十中八九、色恋沙汰の会話で成り立っている。

ちなみに仕事をしているシーンはほとんどない。

さとみは保育士か幼稚園教諭として勤めているが、同僚に腹を割り過ぎなのでは?というほどに1から100まで逐一男事情を報告する。

三上は唯一学生という身分だが、医学生でエリートの卵。
今でいういわゆる陽キャというところだろうか。
しかし女好きが祟っているのか、地元の幼馴染達か三上に言い寄ってくる女くらいとしか付き合いがなく、大学では孤独な陽キャエリートなのである。

反感の対象が変わる

若い頃に見た東京ラブストーリーでは、素直にさとみに対してムカついていたが、この歳になってみると感想が変わってくる。

もちろんさとみが男に全身全霊で寄りかかろうとするしたたかで狡猾な人物という印象はそのままなのだが、それにいとも簡単に翻弄されまくるカンチに腹が立ってくるのである。

青春ど真ん中の高校生時代に好きだったさとみを未だ虎視眈々と狙うカンチ。
三上との仲を応援するフリをしながら隙あらばさとみといい感じになろうとする。
そのくせ上京したてでTHE・都会の女という感じのリカに目移りし、ちょっと味見してみたくなった感が否めない。
最初からさとみのことしか頭にないくせに余計な味見をして、無駄にリカを傷つけていたのは他でもないカンチなのである。
優柔不断で大人になりきれていないカンチにはまだ都会の女は早すぎたのだ。

計算されつくした演出

演出といえば、このドラマには欠かせない主題歌、ラブストーリーは突然に。
ここぞというタイミングで流れるジャカジャーンという音楽が感情にしっかりと突き刺さる。

リカとさとみの正反対のキャラクターも、実に濃いコントラストとなって観る者を惹きつける。

思いをストレートにぶつけ、いつもピョンピョン飛び跳ねているような明るい性格のリカ。
そのストレートさ故に、重いと感じられてしまう損な一面もある。

対して、さとみは守ってあげたくなるような控えめな女性という印象のキャラクター。
しかし、「永尾くぅん…」「私、何言ってんだろ…」「ううん、いいの…」等のセリフをねっとりとした口調で連発し、奪うものはしっかりと奪っていく狡猾さは目を見張るものがある。
その狡猾さで伝説の「おでん女」という名誉ある呼称を世間からゲットした。
(カンチがリカに会う約束を取り付けて今まさに家を出るというタイミングで手製のおでんを持って家に押しかけて来た出来事に由来する)

この二人を比較した時に、恐らく視聴者のほとんどはリカに肩入れをしていたのではないだろうか。
もちろん私もその一人である。

そのため、リカが強がって本心とは違う言動や行動をとって二人がすれ違っていく様子が視聴者の胸を締め付けるという、完璧な演出だったのではないかと思う。

永尾完治という男

全話を見終わると、この永尾完治という男が大嫌いになってしまった私。

さとみが好きなら素直にさとみを口説け!なぜリカと付き合った!
リカが好きならねっとり言い寄ってくるさとみにほだされるな!
どっちつかずで保守的で短気なくせに二人の女の間でウロウロしてんじゃねぇ!とイライラさせられる。

最終話では結局さとみと結婚するという結末が、昔は後味悪い終わり方だなぁという印象だった。
しかし今見ると、リカほどのいい女だったらカンチなんかよりもいい男と充分幸せになれるだろうし、カンチなどさとみにくれてやればいいと思えるから不思議である。

ここまで書いて、三上についてあまり書いていないなと気が付いた。
彼はあくまでもストーリーを盛り上げるためにカンチ周辺でチョロチョロ何かをしでかすという感じだったが、三上に言い寄ってくる女がいちいち三上を呼び出しては「私、結婚するの」「親が決めた好きでもない男と結婚するの!」等と言いに来るので「いや、だから何?」と何度も心の中で突っ込んでしまった。
でも結局その女と三上は結婚したので、うまくまとまったということだろうか。

まとめ

放送当時と現在では時代背景が大きく違うので、改めてみると新鮮なシーンがたくさんあった。
携帯電話が当たり前の時代ではないので、家の固定電話に電話を掛けるという連絡手段しかなく、これもまたいい感じにすれ違いを演出しているのである。

本音を言えばカンチとリカが結ばれるというのが一番スッと腑に落ちる結末だったのだろうと思うが、そうは問屋がおろさないぜという矢継ぎ早に仕掛けられてくるすれ違いにまんまと感情を揺さぶられた。

この歳になってくると恋愛にも興味が全くなくなり、恋愛ドラマは胸焼けがする感じがして避けていたのだけど、久しぶりに何十年も前の恋愛ドラマを見て新鮮だった一方、やっぱり胸焼けしてしまったのに、なぜかとても楽しかった。

それと、なんといっても
鈴木保奈美さんがもうものすごく!それはそれはものすっごく!可愛くて美しくて素晴らしかった。

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