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不思議な猫

忘れもしない
この猫との出会いは2021年9月5日

その日の私は仕事だった
通勤に1時間ちょっとかかってしまう山にあった療育園に勤めていた。
帰る時はもちろん真っ暗で街灯なんてものはなかった。そんな中軽い残業を終えていつものように帰宅しようとした。職場を出て5分くらいの場所だったかな。

車のライトのみが照らされた道路の真ん中で
ガリガリに痩せこけた猫が伏せをする形で座り込んでいた。
道のど真ん中だったため、通れないのもあったし見過ごすこともできなくて、私は車をおりた。
ガラガラな声で弱々しくその子は鳴いた。

ここは危ないよ
せめてこっちへおいで

そうして道の端へと誘導しようとした時だった
開けっぱなしの運転席にその猫自らフラフラした足取りで乗り込んできたのだ。
とりあえず安全な所へそのまま移動するかと
そこまで気にもとめずに私は車を走らせた。

車に揺られながら目を瞑り大人しく助手席の足元へと伏せている猫ちゃん。かなり弱ってるのは見てわかった。
とりあえず餌でも与えようと、私はコンビニまで移動した。それも職場からは20分程離れた場所にだ。
着いてからミルクとカツオの缶詰を手に取り購入。猫を駐車場におろして餌を与えた。いけないことだとはわかっていたが、どうしても見捨てることはできなかったからだ。

けれどその子は餌を口にすることはなく
再び私の車に乗り込んで伏せてしまった。
何度やっても結果は同じ、しまいには私の膝に伏せ寝込んでしまう始末だった。
なんだか変な臭いがする野良猫だったけれど、それをふりおろすことも出来なかった私はそのまま実家へと連れ帰った。
でもわかっている。中に入れてやらないし、飼うこともできない。それでもここに1人置いてけぼりにするよりはマシだと、偽善ならぬ行動を私はとった。

そこから30分以上の帰り道でも、その子は私の膝の上で弱々しい寝息をたて眠っている。
家に着いてから私はその子を抱きかかえるように抱っこした。
にゃっ!だとその子は小さく鳴いた。
そして絶句した。

手にはヌメッとした感触。
よく見るとお腹が綺麗に縦に裂かれていた、
明らかにおかしかった。喧嘩でできたような抉られ方でなく、綺麗な一本線で裂かれた傷だったからだ。
玄関の灯りの下でよく見ると、おかしな点が他にも何個か見られた。
この子はもしかして、、、
でもそれなら何故?人間である私に自らついてきたのか。何故私の膝に乗るのか。何て不思議な子なんだ。
そんな印象を抱いたことを今でもよく覚えてる。

親に兄弟に事情を話しその子を見せた。

なんだか今にも死んでしまいそうだね

みんながそう言った。
玄関の外で私は座り込み、その子は再び私の膝の上で眠りについた。離れようとしないその子にとても複雑な感情が湧いた。
それを私の横に座って眺める弟と母親。

人間のことがこんなにも好きな子なのに、、、。
可哀想だね。

そこから全く起きる気配がなく眠っているその子に、母親が綿の布を詰めた段ボールを玄関に持ってきた。

せめてこの暖かい所で看取ってやろう。
私は自分の着ていた服を脱ぎ、自分の匂いがついたその服でその子を包んで段ボール入れた。
一瞬顔を上げたが、匂いに包まれたせいか再び服に埋もれてゆっくりと眠ってくれた。

此処なら安全だから
最後くらい温かいものの中でゆっくりお休み。

そう言い残し私は家へと入った。


翌朝、仕事へ行こうと準備をしてると鳴き声が聞こえた。
外へ出ると起き上がり、枯れた声で玄関前をウロウロ歩き回るその子がいた。
段ボールの横に小さな皿が二つ。

そっか。笑
弟がキミにあげて行ったんだね
まだ足りないの?でもいきなり入れすぎるのは良くないから少しずつ食べてみよっか。

そう言って餌を与えると
がむしゃらになってその子はムシャムシャとご飯を食べた。

死ぬ間際の元気ってやつじゃないといいね。
でもここらは猫は飼えないし、これだけ大声で鳴かれたら、どのみちここには置いとけないよ?

と母に言われた。
わかっていたけど、やっぱりダメか。
そう思って私は再び職場へその子を乗せて車を走らせた。
その間も最初こそ鳴いて落ち着がない様子だったが、途中からは昨日のように膝に乗りすやすや眠っていた。

私は職場に連れて行くこともできない。
飼うこともできない。でもこの子は元々野良猫だし元の場所に返してやろう。
でも何もないところだとのたれ死んでしまう可能性があるから、せめて自然でありつつちょっと下れば古民家がある場所へと、置いていこう。
そう思い車通りの少ない自分が思った適した場所へとその子を置いた。
多めの餌ともちろん私の服を段ボールに入れて
自分はなんて残酷なことをしてるのかと思いながら。

でもきっともとは野良猫なんだ
きっと仕事が終わる頃には居なくなっているに違いない。

そう思いその子を置いて私はいつも通り仕事へ向かった。仕事中はその猫のことで頭がいっぱいだった。
そして仕事が終わりその通りへ様子を見に行った。

まさか居ないよね。
でももしかしたら、、、。

そんな気持ちで向かうと
なんと朝と同じその段ボールの中で私を待っていたのだ。私が見えた途端に

にゃー!

っと真っ直ぐこちらへ走ってきたのだ。
私は涙が出てきた。
これはちゃんと責任を取らないといけない、、
でもどうしたらいいのか。どうすることもできず私は再び餌を買いその子をまたその場に置いて一度家へ帰った。

その日私はS N Sでその子について投稿した
もちろん怪我してることも、飼ってくれる人がいればその子の治療費は負担すると投げかけて投稿した。
すると高校の同級生が、その投稿を見てその子をすぐ動物病院へ連れて行こう。
面倒は私がみるから!
その連絡がきたのが23時過ぎだった。

私は急いで1番下の弟とともに
車を走らせた。走らせてる途中で雨が降り
罪悪感と心配な気持ちで、車を飛ばした。
山での雨はとても寒く元々弱ってるあの猫はそのせいで死んでしまう可能性があったからだ。

1時間ほどでその場所に着くと
びちゃびちゃに濡れた段ボールと私の衣類がそこにあった。でもその子は居なかった。

私と弟は雨に濡れつつ叫びながらあたりを探した。

すると、


にゃー、、、。


とどこからか聞こえてきた。
弟があっちからだ!っと走って向かった先には
大きなトラックがあった。その下からその子が勢いよく走ってきた。

偉いね、、、
ちゃんと移動して雨宿りしてたんだね!
こんなところにトラックが止まってたのはラッキーだったな。
とにかく急いで戻ろう!!

そう言って暖房を効かせた車に乗せ
体を震わすその子を毛布でくるみ、弟に抱っこしてもらい急いで友達の元へ車を走らせた。

その間もなにかを訴えるように鳴くその子に
私は謝ることしかできなかった。

友達と合流し、飼ってもいい許可を親から得られたことを確認した上で動物病院へと連れて行った。

結果その子は

極度の栄養失調、脱水
猫風邪、これは拗らせると死んでしまう可能性もあったとのこと
そして疑惑は確信へと変わった。

お腹の傷、、、。これは虐待の可能性が高いですね。鋭利なもので切られたようだ。
そして尻尾が半分しかありませんが、これはきっと生まれつきでしょう。
そして言いにくいのですが、、、
首に針金が埋め込まれるように刺されていました。

私は言葉を失った
世の中にはなんて残虐なことをする奴がいるのかと。
それなのに、そんな過去があったのに
この子の人懐っこさはなんなのだろう。こんなに可愛らしい子なのに。と
私は悔しさと泣きそうな気持ちを堪えた。

それ以降その子はしばらく入院。
治療費はその友達と分担して払い、日々その子の状況を聞き、画像や動画を送ってもらい
時折顔を出しにいった。
無事退院してからも、親身になって面倒を見てくれた友達とその両親には感謝してもしきれない。

本当に人が大好きな可愛い男の子だよ。笑
それより見て。
反動なのかめちゃくちゃ食欲旺盛でこんなにお腹が出てきたのよ。笑
と笑顔が優しい素敵な友達の母親

そして

あとね、マコト!
この子の名前はマコちゃんにした!
この子を救ったマコト名前をつけたぜ^ ^
大人になってから中々会ってなかったのに
今となっては再び遊び、連絡を取る仲になった友達

そう言ってくれた2人には今でも感謝してます。
いやいや、命の恩人は私ではない。私は偽善に過ぎない、本当に行動を起こしてくれたのは貴方達だ。

そしてマコ

キミは人間に酷く傷つけられ
そして違う人から命を救われた
キミが諦めずに人間を信じてくれたから
きっと今の命があるんだと思う
私を、そして私の家族、友達を信じてついてきてくれて本当に有難う。

違う生き物でもきっと信じ、繋がることは出来る。家族になれる。
私はこれからもそう信じたいです。
そして動物は大事にこれからも自分がペットを飼うことがあれば、家族として大事に育てていきたいです。

ありがとうございました。
これは実際の出来事をブログに書き綴ってみました。読んでいただけたら嬉しいです。

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