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【第20話】36歳でアメリカへ移住した女の話 Part.2
ダンナの息子が高校1年生になったある日、珍しく、息子のママから電話がかかってきた。
ニヤニヤしながら受話器を置いたダンナが、元気に言った。
「息子に会ってくるわ!あいつ、部屋で彼女とセックスしてんて!メリー、めっちゃ怒ってて、俺からも話して欲しいって言うてるねん!」
すっごく楽しそうだ。
「高校生になったら、友達が最優先やから・・・。わかるねんけど、俺、なんのためにシアトル来たんやろ・・・」
ここのところ、ダンナはしょんぼりしていた。
ところが、息子がセックスをしてくれたおかげで、会えるだけではなく、父親として、人生の先輩として、息子とお話ができるのだ!
嬉しくないはずがない。
「行ってらっしゃーい」
あたたかく見送った。
それにしても高校1年生で、そんなことをするんだ。
アメリカだからか、時代なのか、私の知らないところで他の人たちはそんなことをしていたのか?
私が高校1年生のときとは随分違う。
キスは理解できたけれど、それ以上は想像したこともなかった。
帰宅したダンナに尋ねた。
「高校1年生でセックスってアメリカでは普通なん?」
「俺は13歳のときやで」
すっごーーーい!
ダンナからすると、高校生の息子は晩生なんだ!
私が中学1年生の時は、好きな男の子と一緒に下校することが「デート」だった。
二人で歩くだけでドキドキ、お洋服を脱ぐことなんかなかった。
私がドキドキしながら男の子と手をつないで下校していた頃、アメリカの子供たちはセックスをしていたのね。
彼の最初のお相手は、近所に住む年上のお姉さんだ。
ダンナ曰く、”年上の女”は、男が必ず通らなければならない道らしい。
最初のガールフレンドは向かえで暮らすミシェルだ。
彼女のパパは厳格で、悪い男たちから娘を守るため、彼女を家に閉じ込めた。
けれども、外からやってくる男たちを止めることはできない。
「俺の家の窓から、彼女の家を見てたら、色々な男が入っていくねん」
ある日、お洋服を脱いだミシェルのお腹がポッコリしていた。
そしてお洋服を脱ぐたびに、そのお腹は大きくなっていった。
「俺はたまたま避妊を知ってたけど、俺ら子供やで。なーんも知らん。親がおらん子供もいっぱいおるやん。黒人の子供に、セックスしたらどうなるとか、どんな大変なことになるとか、そんなこと教えてくれる人はほとんどおらん」
優しいミシェルは、訪問してくる男たちを受け入れ、パパの違う3人の子供を授かった。
ミシェルは本当に優しい女の子で、彼のおばあちゃんも大好きだったそうだ。
この話を聞いたとき、環境を理解しているとはいえ、彼女がしたことではなく、”ミシェル”自身、人柄だけを評価できるダンナや、おばあちゃんは素敵だと思った。
さて、13歳といえば、彼が家出を繰り返していた頃だ。
何度補導しても家出をする彼に、警察官は、家に帰るか、孤児院で暮らすか、選択を求めた。
孤児院を選んだ彼は、イリノイ州とインディアナ州の境にある施設に入った。
彼以外の子供たちは全員白人、悪ガキばかりだ。
親がいない、親に捨てられた、親に子供を育てる能力、経済力がない、理由は様々だ。
その施設の敷地内には、家がいくつかあり、各家には、子供たちの世話をする夫婦、ハウス・ペアレンツがいる。
彼のハウス・ペアレンツは黒人夫婦だ。
ハウス・ファーザーは筋肉隆々の大男で、彼の腕にはいつも5、6人の子供がぶら下がっていた。
ハウス・マザーは、いつも美味しい食事を準備してくれた。
「あの頃が、一番ええもん食べてた」
その美味しい食事を作ってくれるハウス・マザー以外、施設の中は全員男子だ。
ある日孤児院は、子供たちのために、女子だけの孤児院と共に、パーティーを開催した。
ダンナはこの時、はじめて白人の女の子と話をした。
楽しい楽しいパーティーが終わり、自分たちの施設に戻った翌朝のことだ。
施設の中は空っぽ、30人の男子全員が消えていた。
彼らは夜中に施設を脱出し、テクテクテクテク10マイル(16キロ)の距離を5、6時間かけて歩き、女の子に会いに行った。
「俺らみたいな悪ガキを女の子と会わせたら、何が起こるか予想できなあかん」
女子の施設にたどりついた彼らは、セックスをして、再びテクテクテクテク10マイル先の施設に向って歩き始めた。
途中で警察に保護されたので、帰りはあまり歩かずにすんだらしい。
さらに、ポリスステーションで、ハンバーガーとミルクシェイクもご馳走してもらえた。
彼以外の男子が白人だったからかな?とちょっと思った。
この日は、女子と会えるし、楽しいし、ハンバーガーもご馳走してもらえるし、いいこと尽くしの1日だった。
”子供が子供を出産する連鎖”という大きな問題は別にして、私はこのストーリーが大好きだ。
テクテクテクテク、セックスのためだけに5時間歩き続けるダンナも、部屋でこっそりセックスをして、ママに見つかって怒られる、息子のことも、たまらなく愛おしいのである。
最後まで読んでくださってありがとうございます!頂いたサポートは、社会に還元する形で使わせていただきたいと思いまーす!