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万引きパラダイスの裏側

 ショッピングカートいっぱいの盗品を、3人の白人男性が、せっせと車に積みかえている。
 品物は洗剤、トイレットペーパー、1ダースのジュースなど、大きいサイズのものばかり。
 いずれも、お腹が空いて、どうしようもなくて盗む品物ではない。
 20歳代後半と思える男性たちは、特に身なりも悪くない。
 悪人やギャングにも見えない。
 
 この様子を撮影していたのは、若く、体格の良い警察官だ。
 支払いを済まさず、店の外に出た犯人たちの後を、

 「えー、お前ら、ホンマにそれ全部持って行く気?」

 携帯で撮影しながらついて行く。
 そして逃走直前、ナンバープレートをカヴァーしていた紙をはがし、車のナンバーを撮影した。
 ナンバープレートを隠すくらいだから、自分の車だったのだろう。
 後日、車の所有者から犯人が割り出され、3人は逮捕された。

 インタヴュアーは、この映像を撮影した警察官の行動が正しいか否かを、警察署長に尋ねた。

 「彼はその時ひとりでした。彼は自分の身も守った。彼がナンバープレートを撮影した結果、私たちは犯人を逮捕しました。正しい行動です」

 ふーん・・・。
 確か、コロラド州の話だったと思う。

 アメリカは州によって法律が異なる。
 他の州はわからないけれど、我々が暮らすワシントン州でも、ここ数年で万引きの様子は随分変わった。
 従業員はもちろん、セキュリティですら、犯人の体に触れてはならないという法律ができた。
 盗品の入った袋をつかむことは可能だけれど、体に触れることは許されない。
 体に触れたセキュリティは、物を盗んだ犯人から訴えられる可能性がある。
 犯人捕獲は警察官のみ許される。
 とはいえ、保身優先になったら、コロラド州の警察官のように、携帯で撮影するのかな?

 ジョージ・フロイド氏殺害事件の後、警察官の暴力に対して、人々の感心が高まった。
 政権はバイデンに代わり、警察予算が削減された。
 その結果、ワシントン州では、犯人に対する首絞め行為は禁じられた。
 その一方で、警察官に課される任務も激減した。
 周囲の人に危険が及ぶ場合を除いて、精神疾患の患者保護には応じない。
 小さな事件なら、調書もとらない。
 犯人が車で逃走した場合、追跡はしない。
 カーチェイシングで一般人を巻き込む可能性があるという理由だ。
 
 警察いらんやん?と思う。

 首絞め行為のターゲットは黒人で、そもそも必要のないことだった。
 予算削減により人員不足で仕事ができない?
 本当かもしれないけれど、どうも胡散臭い。
 予算増減のためのパフォーマンスのようにも思える。
 
 パフォーマンスかどうかは別にして、実際に仕事をしなくなったことは事実だ。
 真夜中に、私の車のタイヤを盗もうとした犯人をダンナが発見し、窓から威嚇して追い払ったことがあった。
 ダンナは直後に警察に電話をした。

 「俺、犯人見たで。車種もわかるよ。インフォメーションいらんの?」

 「今回は結構です」

 ・・・今回じゃなければ、いつ必要なんだろう?

 数か月前、アパートの駐車場に車上荒らしがやって来た。
 犯行現場を見た住民が通報し、3台のパトカーが到着した。
 たまたま1階のジムにいたダンナが、警察官のために扉を開けた。
 それとほぼ同時に、駐車場から犯人の車が飛び出してきて、パトカーの間をすり抜けて行った。

 「追跡せえへんの?」

 「追跡はしたらあかんのですわ」

 「・・・へー」

 ダンナはこの時、逃走した車の中に、自分の大切なスピーカーが積まれていることを知らなかった。
 その後、何度か警察に進捗状況を確認したけれど、なーんにもしていないことはすぐにわかった。
 追跡しない代わりに、設置しているカメラを分析して、犯人を割り出すのかな?と思ったけれど、軽犯罪のために予算を使う気はないらしい。
 万引きや軽犯罪で警察は動かない。
 
 泥棒にとったらパラダイスだ。⛱️

 私たちが行くグロッスリーストアでも、毎日のようにホームレスが買物?をしている。
 特に、閉店間際になると、従業員も客も少ないので、堂々としたものだ。
 両手いっぱい、ポケットには鉛筆などの文房具まで入っている。

 「お前、どこ行くねん!?」

 キャッシャーを通らず出口に向かうホームレスに、従業員が厳しい表情で尋ねる。
 けれども、法律はホームレスの味方だ。
 胸を張って出て行った。

 取り返されないように、バックパックに商品を詰め込み、その上からコートを着ている人もいる。
 彼らは皆、従業員が何もできないことを知っている。

 昨日は、バーベキューグッズを次々とカートに入れている人がいた。
 支払う気がないので、とても楽しそうだ。
 仕事をしていても、こんな豪勢なショッピングはなかなかできない。                               
 これじゃ、まともに商品を購入することを、バカバカしく思う人が出てきても不思議はない。

 注目すべき点は、これら犯人の多くが白人ということだ。
 少なくとも、これまで私が目撃した人は、全員白人だった。
 しかも、比較的若い人ばかりだ。
 黒人は、白人同様見逃されるとは限らないので、ショッピングにチャレンジしないのかもしれない。
 とはいえ、白人ホームレスの数が激増していることは事実だ。

 「白人のためにできてる社会でドラッグ中毒で、ホームレス?
 余程のアホか、根性ないか、どっちかや」

 とダンナは言う。
 確かに、厳しい社会で育っていない彼らは弱い。
 これからもっと白人ホームレスは増えるだろうな。

 軽罪が見逃され、グロッスリーストアの食品は盗み放題。
 ドラッグ、アルコール中毒でホームレスに陥った若者は、盗んだ品物を売り、ドラッグや酒を購入し続ける。
 これでは、ホームレスからも、中毒からも抜けられない。
 万引き、軽罪が見逃されるとなれば、懸命に働く低・中所得者層の中には、労働意欲を失う人も出て来るだろう。
 秩序が乱れ、犯罪者、ドラッグユーザー、アルコール中毒者が増えていく。
 一方、物価の異常な上昇は、ある一定の人たちを確実に豊かにしている。

 ムムム・・・なんだかにおうぞ。

 法律は中毒の人を減らすよりも、増やすようにできている。
 タダでショッピングが許される裏には、隠されたプランがある。
 社会は白人の味方だけれど、すべての白人の味方じゃない。
 黒人の環境が変わったわけではないけれど、白人の環境は変化している。

 こらー、若者ー!
 万引きパラダイスの裏には闇があるぞー!
 社会の生贄になってる場合じゃない!
 ドラッグより楽しいことは、いっぱいある!

 正解かどうかはわかりませんが、グロッスリーストアへ行くたびに、こんなことを考えています。

 

最後まで読んでくださってありがとうございます!頂いたサポートは、社会に還元する形で使わせていただきたいと思いまーす!