2023年5月東京都写真美術館『土門拳の古寺巡礼』感想

「ドキュメント、人物、古美術、建築、風景、そのいずれにも忘れがたい作品を残し、日本の写真史に巨歩を記した土門拳(1909-1990)。ライフワーク『古寺巡礼』の第一集が刊行されたのは1963年、今年で60年を迎えます。戦前から仏像行脚を続けた土門は、みずからの眼で選んだ古寺や仏像を徹底して凝視し撮影。建築の細部や仏像の手や足、口などをクローズアップで捉える独自のスタイルを貫きました。『古寺巡礼』の刊行途上、脳出血で倒れ、以後は車椅子生活になってからも不屈の精神で撮影を続行し、1975年、第五集で完結。本展はカラーの代表作と、土門を魅了した室生寺の釈迦如来坐像をはじめ、重量感のある平安初期の木彫仏を中心にモノクロームの仏像写真と、合わせて約120点を展観します。土門が対象の本質に迫った、力強く個性的な「日本の美」をご覧ください。」(東京都写真美術館HPより転載)

以前より写真集などの媒体では、見たことがあったのですが、写真そのものは初めて見ました。
休みの日にどこか美術館に行きたいなと思って、いろいろ探して、見つけてふらっと訪れました。そのためそこまで強く見たいという気持ちがあったわけではないのですが、実際に見てみるととても楽しむことができました。

写真集で見たときは、強く引き込まれるというより、仏像や寺社などの写真を撮る人で有名であるくらいにとどまっていたのですが、実際の写真の衝撃は想像を超えるものでした。

まず、シンプルに大きな写真というだけで、写真集などの本で見るよりもだいぶ印象が異なりました。仏像の写真のうち全体をとるものもあれば、顔などの一部を接写して撮っているものも多く、その中にはおそらく実際の仏像のサイズよりも大きくなっているものもあるのかと思います。
そのため、顔の造作などの細かい部分が見ることができます。また表情も大きい分、自分自身に対して迫ってくるものがあります。
写真の技術については全く分からないのですが、顔全体と細部の両方を見ることができるというのはやはり技術によるところなのでしょうか。

また接写の中には、顔以外のものあり、印象的だったのは「足の裏」「着ている服の台座にかかっている裾の部分」です。
「足の裏」については、偏執的というか変態的とでもいえるような印象をうけました。ちなみにこの足の裏だけの写真は、この展覧会の中でも最大級の大きさでした。
「着ている服の台座にかかっている裾の部分」は(これでうまく伝わるのか分かりませんが)、裾の部分が無造作に折り重なっている様子のことです。写真そのものもそうですが、これをわざわざ像として作成することも、今の視点から見ると不思議というか、そこだけでみるとキュビスムのような前衛絵画を想起しました。

接写の、ある部分だけ切り取るという方法は、撮影している土門の仏像に対する視点の提示というか、仏像に対してこういう見方を見方をしています、という意思が、伝わってきました。
それは、仏像に対する土門拳自身の愛のようなものにも思えました。

ワンフロアの展示だったので、そこまで広くはないですが、多くの作品が展示してあり、1時間強ほど鑑賞しました。
写真集も購入しましたし、山形にある土門拳記念館もいつか行ってみたいなと思います。

気に入った作品メモ
・薬師寺金堂薬師如来像
・法隆寺東院夢殿観音菩薩立像(救世観音)
・法隆寺西院金堂釈迦三尊像
・室生寺
・東大寺仏殿前庭八角灯籠音声菩薩像

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