藤野梅吉

現代詩などに関する記事を中心に書きます。ペンネームです。別の名前で詩の投稿もしています…

藤野梅吉

現代詩などに関する記事を中心に書きます。ペンネームです。別の名前で詩の投稿もしていますが、最近は思うように書けない日が続いています。練習のつもりでよく読んでよく書いていこうと思います。よろしければお付き合いください。

最近の記事

コロケーションと言語の詩的側面について

 コロケーションという用語がある。小林真大さんの『詩のトリセツ』(五月書房)という本でわかりやすく説明されていた。コロケーションとは、二つ以上の単語を組み合わせてできる言葉のつながりのことを指し、特に、「招かれざる」と来れば、次に続くのは「客」というように習慣的に決まっている関係のことを指す場合が多い。    私たちが普段使っている言葉は、日常生活の中で使い慣らされてきた表現である。情報伝達に便利なように洗練され、固定化した組み合わせである。「お似合いの」と来れば、「服」とか

    • 2022年ノーベル文学賞について

      10月6日(木)に発表されたノーベル文学賞は、アニー・エルノーという作家だった。不勉強ながら知らなかったが、受賞の発表を見た後でAmazonで翻訳を探してみると、数冊翻訳が出ているらしい。 見つかったのは、『シンプルな情熱』『嫉妬』『場所』『ある女』などの作品。ここ二年ほどは、ノーベル賞が発表されても邦訳がそもそもない状態だったが、今回は結構そろっていたようだ。見た範囲では、ほとんどが古本だったため、現在日本で読まれている作家というわけではなさそうだけれど、受賞をきっかけに

      • 2022年のノーベル文学賞が気になる

         長年まめにチェックし続けているわけではないが、ここ二年ほどの話をすると、ノーベル文学賞が発表されるたびに邦訳があるか確認している。そして、そのたびに邦訳がなくて受賞した作家について断片的な情報しか得られないことを残念に思っている。  といっても、それほど世界の文学作品に詳しいわけでもないし、受賞した作家の作品を読んでもよくわからなかったりするから、ミーハー的な盛り上がりみたいなものなのだけれど。それでも、一応文学愛好者を自認するものの一人としては、全然邦訳が見つからないこ

        • 言葉の不在について/ルイーズ・グリュック『野生のアイリス』の感想

           詩が書けない時間は、どれぐらい続くものなのだろう。それは人によって場合によって千差万別で、1ヶ月ほどで書けるようになることもあれば、何年も書けなくて苦しむこともあるのだろう。ルイーズ・グリュックの場合、再び書けるようになるためには2年の歳月が必要だった。  2020年にノーベル文学賞を受賞したアメリカの詩人ルイーズ・グリュックは、現代のアメリカを代表する詩人だ。しかし、日本では全くのノーマークだったようで、受賞の発表とともに邦訳を探したが1冊も見当たらなかった。その年の終

        コロケーションと言語の詩的側面について

          詩人にはアイデンティティがない

           詩を書きたいと思って机に向かってもなかなか書けないことが多い。それが辛くて机から遠のいてしまうこともしばしばだが、ある時ふとしたきっかけで書けることがある。それでも自分で納得できる作品に出会えるのは稀で、基本的には「何とかそれっぽくなった」程度のものしか出てこない。  多くの詩人たちにとっても詩の訪れは似たようなところがあり、思うようになど書けないことが多いらしい。やはり詩と言うのは、何時間働いたらこれぐらいの成果が出るというようなわかりやすいものではないのだろう。詩の訪

          詩人にはアイデンティティがない

          詩が生まれる場所について

           私たちは日々、色々なものを見て、聞いて、生活しているはずなのに多くのことは意識にのぼることもありません。仮に意識してもすぐに忘れ去ってしまいます。ところが時々、その日、その場所で、何やら印象的な光景に出会うことがあります。ポストの上に丸く雪が積もっていたり、蜘蛛の巣が朝露に濡れて輝いていたりする。そういうことがふっと意識に刻まれて長く記憶に残ることがあります。  同じように、詩になるモチーフは至る所に転がっているはずであり、その意味で何だって詩にできるはずなのに、すべてを

          詩が生まれる場所について