見出し画像

『幻の天才画家 鈴木華邨展』図録感想

書店の美術本コーナーで見慣れぬ名前を見かけ、気になって読んでみました。
タイトルは『鈴木華邨 花に鳴く鳥、風わたる余白』。東京美術の出版なので印刷が綺麗。フルカラーA5判と小さいのだけが残念。

内容説明によると、この本は2021年に逸翁美術館(大阪)で開催された展覧会の図録を兼ねた画集だそうです。ちなみに、鈴木華邨の画集としては本邦初とのこと。


そもそも、鈴木華邨かそんって何者?
本書の解説部分やWikipediaによれば、鈴木華邨という人物は、明治中期から大正にかけて活躍した日本画家。キャリアの始まりは主にヨーロッパ向けの日本風デザイン分野周辺だった様子。

こうした明治時代の超絶技巧的なヨーロッパ向け細工物は旧来の美術界では低く評価されていて、作品関連人物ともども忘れ去られていることが多いのですが、鈴木華邨もその例に漏れなかったようです。
「幻の画家」と言われるほどに忘れ去られてしまった画家。
幸いにも阪神鉄道の創始者である小林一三が好んで収集し、コレクションが現存しているため、最良の作品は現存しています。
弟子にあたる小原古邨と同門の渡辺省亭がここ2-3年で急速に再評価が進んでいるので、華邨も今後再評価されていくのではと画集を眺めながら思いました。

『鈴木華邨 花に鳴く鳥、風わたる余白』、逸翁美術館編、東京美術より
https://www.tokyo-bijutsu.co.jp/np/isbn/9784808712327/

こちらは本文からサンプルページを抜粋。
地味な色調ですが、翼の躍動感と淡彩による深みのある彩色が素晴らしい。そして描き込み過ぎない空間表現が見事です。
適当な図がなかったので掲載していませんが、花を描いた美しい植物画の数々も必見。
江戸琳派好きに刺さる画家だと思います。おすすめ。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?