第22回『お前それあかんやろ!? 客にガチ恋した後輩ホストの苦悩』

うぃす! 大阪男塾の塾長です。

みんなからハブられ「大人やのに、こんな子供じみた無視のしかたするヤツおるんや!?」と、憤ってた2004年秋。

やっと幸太郎という波長の合うヤツとの出会いがありました。

振り返ると、ここから僕の潮目が変わった感じがするっすね。

当時はパラパラが全盛期で『ナイトオブファイヤー』が流行してましたが、僕と幸太郎はオアシスなどのUKロックの方が好み。

こんな感じで幸太郎とは、音楽の趣味など結構重なる面があったっす。

僕も幸太郎も夜職で働く人間としては、あまり夜職っぽくないタイプ。だから馬が合ったのかもしれません。

さて今回は、孤立していた僕になついてたマサトという男について語ります。

年齢はそんな変わんないんすけど、僕を慕ってくれる弟分みたいな存在でしたね。

こいつは背が低くてパッションのみで突き進む、盛りのついたイノシシみたいなヤツ。

考えていることが、そのまま出る人間で裏も表ありません。

マサトは入店から半年で辞めることになるんすけど、その一部始終を目の当たりにしていろいろ学びがあったっすね。

ホストの仕事で大切なのは、お客さんに夢を見せられるホストであること。

ホストクラブもキャバクラも同じなんすけど、夜のお店がお客さんに非日常、ドキドキを提供する場所というのはみなさんもご存知のとおりっす。

なので、僕らが常に意識しておかないといけないのは一人一人のお客さんにとって当たり前のように特別な存在であり続けること。
「こんないい男二度と出会えない」というプレミア感を感じてもらうことっす。

当然、お客さんに感情を入れすぎたり、なあなあになって素の部分を出すのはNG。

しかしこのマサトは、なんとお客さんの女性にガチ恋しちゃったんす。

ほんまに、どこまでもピュアなヤツでした。

いわゆる女ボケです。

こんなピュアピュアなマサトなんすけど、何と彼がガチ恋した女性客が、同じグループの別のホストに乗り換える事態が発生。

ホストのグループには、それぞれのルールがあります。

グループの中には複数の傘下となるお店があるんすけど、当時はお客さんが同じグループの別のホストに乗り換えることってルール的にOK。

複雑なのはマサトの気持ちっす。

自分の大好きな女性が、別のホストにどんどん熱を上げてるって知ったマサトはジェラシー爆発

ついに「もう俺、耐えられないっすよ」と感情をあらわに。

なんとマサトは女の子に対して

「お前は騙されてる!目を覚ませ!」

と他店のホストに対して潰し行為を行ったんすよ。

これはホストが絶対やっちゃいけないことで、御法度なんです。

そんなマサトに対し、お店の上の連中は「ルールやから耐えろ」の一点張り。

「耐えろ」
「耐えれないっす!」
「耐えろ」
「耐えれないっす!」
「耐えろ」
「耐えれないっす!」

この応酬がトータルで100回以上、繰り広げられたっすね。

結局マサトは「俺、ホストである前に、血の通った人間なんすよ!」と悲痛な叫びを残し、ホスト稼業から足を洗うことに。

何度も僕の目の前で涙する彼を見て、僕は思ったっすね。

やっぱりホストは仕事でしかない。恋愛感情はこちらが提供するもので、ホストがほれてもうたらあかんと。

ただしマサトのように、情けないところも含めてむき出しにする、裏のないヤツは人間臭くて好きだったっすね。

集団無視という憂き目にあっていた僕に、明るく接してくれたマサトには今でも感謝してるっすよ。

あと、自分が興味なくした瞬間に思いっきり相手に興味をなくす女の子のことを「こいつ、マジで冷たいな」と思ったすね。相手の心の痛みとかそういうのは見向きもせず、自分のことしか考えてないと感じたんで、客といえど嫌いになったっす。

もちろんホストである僕が言える立場じゃないんすけどね。

ただ、新たにホストにハマるにしても「目の届く範囲でわざわざやらんでもええやろ?」と、そこはマジで思ったっすわ。

世の中いろんな矛盾があるんで、その中で折り合いをつけて生きていくのは大変すよね。
「不器用な人はその折り合いがつけれなくて傷ついたり、悲しんだりするんやな」
「俺も不器用やけど、少しずつこの矛盾に折り合いをつけれるようになっていかなあかん」と、自分を大人にさせてくれた出来事でした。

さて次回は、孤立していた僕を助けてくれた別のホストについて書くっす。

最後まで読んでもらって、あざしたぁ!!

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