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距離感の誤差

「やめて」が通じない相手だった。
最終手段、とやむを得ず無視をしても、にこにこと話しかけてくる。
どこまでも距離を縮めてくるのではないかと思った。
人気のない部屋で。
相手の方が体は数倍大きい。
もう全員ににこやかに話すのをやめようと思う。それはあなたのいいところなのに、と彼女は寂しそうに言った。

心が女の子だった。
彼女が選ぶスカートはいつもよく似合っているのだった。
肩が触れる距離で歩いていたとき。
ふわふわのコートに触ったとき。
私、性別で接し方を変えている、と気づいた。
女の子とは、なめらかに腕も組めてしまえるのだ。
ずっと同じように関わっていると信じていて、誇りにも思っていたからショックだった。
私と彼女の距離感。
終始無言で中華を食べた。

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