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ギターを持つ少女との邂逅

10 COFFEE BREWERS 主催のModern Timesというイベントが企画されたのは2019年の冬の話。

開催日となっていたのは2020年5月3日。

そして・・・そう、コロナが地球上で吹き荒れた。

私たちが暮らすここ日本もその類にもれず。
47の都道府の県境に高く冷たく、

「Wonderwall」

が聳えることになる。奇しくもベルリンの壁が崩壊してからちょうど30年というタイミングで。

文字通りエイリアンによって私たちの日常は侵略されることになったという訳だ。

彦星と織姫だって、
一年に一度はmeet upできているというのに。
鍵穴すらない壁のこちらとあちら側に分断されてしまった私たちと、kojikojiとの間に流れる川の流れは残酷なまでに急で。

生き抜くために、身も心も不定休モードで壁のこちら側を主戦場にラットレースに勤しんでいたある日、ビートメイカーのillmoreがUPしていたストーリーをきっかけに、そのギター少女の後ろ髪を掴みかけたと思ったわたしの両の手は弱々しくまた虚しく、宙を空回りし続けることになった。

せっかくなので少し当時を振り返ろうと思う。懐古主義ではないので普段は撮り終えた写真すら見返すこともしないのだけれど。

2020年の5月3日に予定されていた「Modern Times  vol.2」。
昨夜のkojikoji solo tour が形になった理由でもあるこのライブ。

2019年の春から夏にかけて立案された際のこのイベントのメンバーは・・

-kojikoji
-lo-key desighn
-ziw
-bebeeri
-ciatre

という錚々たるキャスト。何がすごいって、この5組全てが、Covid-19の影響をなんなら追い風に変えてステージをきっちり上げ終えているという事実。そして未だ、彼らはその手綱を緩めることをしらない。もちろん、コロナは文字通り、

「disaster」

だったのだから、泥水も舐めただろう。悔し涙も人知れず流したのかも知れない。それでも2022年の暮れにおける世間が彼らに抱く評価は押し並べて高い。

「Regretばっかの毎日」が並んだslow daysが彼らにとって今頃は、笑い話の一つになっていることを切に願わずにはいられない。

こうした景色を神様は私たちにスライドとして見せながら、今頃どこで何を思うのだろう。

思わず3番目の指を立てたくもなるのは人の情(きがい)というものだ。

そしてそれぞれが吹き荒れる突風に対して身を低くサバイブしながら、大切に懐に忍ばせていた懐中時計の秒針はあの夜(2022.12.4.)のあの時間で重なることになった。

広くはない会場は静寂に包まれていた。
100人を超えるオーディエンスが一堂に介しているのにも関わらずだ。

何かしらの力が働いた上での秩序のようなものを感じた。
あまりの静けさに聞き手ひとり一人の鼓動が聞こえるんじゃないかとも思った。

言葉にするのが憚れるほど。
会場にはただただLOVEが溢れていたし。
てか、
LOVEで満たそうよ今夜、と確かに私たちの目の前でkojikojiが優しくただ魂の温度高くギターを奏で続けていた。

穏やかに気高くそして自然体で。

まるでその様はこの2年の間に世界中で流されたたくさんの涙を供養するかのようでもあり。
皆の心の傷に音の絆創膏を貼るように。
パンにMellowのjamを塗って、
ドレミの音符をミルクに溶かすように。

私たち皆がこの数年で溜め込んでしまっていた、気体なのか液体なのか、何というか、心の汚れのようなもの、が一気にある意味溶解される瞬間の連続だった。

わたしはたまらなくなり。
この時間が永遠に終わってしまわぬようにと会場を出た。
最後の1曲が始まる前に。

終わりに立ち会わねばこの時間を永久に箱にでも閉じ込めておけると思ったから。

でもね。
kojikoji。
僕らとしては、
そのあたたかなミルクは君にこそ飲んで欲しいんだ。

身も心も不定休で走ってきたのは誰でもない。
君なんだ。
僕らは、

「耳が幸福〜」

とか何とか言って癒してばかりもらっている。

君は多くは語らない。
人に願う暇があるのなら歩こう歩こうと自身に言い聞かせながらストイックに歩き続けている。
いつだって自分のことは後回しで。
自分と繋がっているファンの為に。
喉を痛めながら指腹を傷つけながら。
今日もきっとどこかで誰かの為に歌い続けている。

でもね、
君はkojikojiである前に、
一人の人間なんだ。

恩返しや感謝の伝達の為に自分の羽を織ってはいけない。

肩に落ちる雨粒が重すぎて嫌になる日があれば、
穴のない傘を喜んで差し出すから。

slowでいいから、
どうか自身のペースで。

うっすら下から漏れ聞こえたビート
久々の再会を祝うような振動
嬉しいも悲しいもこの夜に任せて
だんだんと大きくなる声

すっと雲を飲み込んだ感覚
すると心に流れだす風景
すっとすする さすれば
同じ温度で泣ける 気がするから
聞かせて

「少しあの時泣いた?」

そう尋ねたくなる横顔にたくさん出会えたいい夜だったと思う。

はぐれ雲と彷徨い、
一人では転べないと言う。

でも君には素敵な仲間がいる。

自分ごとのように、
いつだって君にとっての転ばぬ先の杖になろうと身を挺してくれるあたたかいチームもある。

そして、
走り出す呼吸 鼓動 仕草を見守っているわたしたちたくさんのファンも。

君が子供の頃に求めていた言葉の色を噛み砕いて、
これからの私たちにその歌声とリリックを届けてほしい。

きっとまたどこかで。
約束だよ。
ギターに愛された素敵な天使さん。
本当にありがとう。

Special Thanks to

kojikoji
bebeeri(DJ)
Yuichi Tatsukawa
Broth Works LLC
GoodSound Production
 

10 COFFEE BREWERS 店主





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