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衛星データ販売企業とデータ購入価格 ~多様化し続ける衛星データ市場~

天地人は、衛星データを使った土地評価コンサルを行っているJAXA認定ベンチャーです。地球観測衛星の広域かつ高分解能なリモートセンシングデータ(気象情報・地形情報等)や農業分野の様々なデータを活用した、土地評価サービス「天地人コンパス」を提供しています。

Tenchijin Tech Blogでは、宇宙に関連するさまざまな最新情報を、天地人のエンジニア、研究者、ビジネスリーダーが一歩踏み込んで解説します。
今回は、衛星データ販売を行う企業とデータ購入価格について取り上げます。

近年、衛星データ販売企業の種類は多様化しており、これに伴い衛星データの購入価格にも変動が生じています。本記事では、販売企業の多様性、提供されるデータの多様性と価格に影響する要因について掘り下げていきます。


1. 衛星データ販売業界の多様性

衛星データを提供する企業や団体は多岐にわたります。まず、公的機関としては、日本のJAXA(宇宙航空研究開発機構)やヨーロッパのESA(欧州宇宙機関)などが挙げられます。これらの宇宙機関は、先端技術を駆使して人工衛星を打ち上げ、地球観測から天体観測に至るまで幅広い分野でデータを収集し、研究者、政府機関、民間企業などに提供しています。

JAXAは、日本を代表する宇宙機関であり、衛星データの収集と利活用において国際的なリーダーシップを発揮しています。彼らの人工衛星は、気象予報、環境モニタリング、地震予測などの重要な情報を提供しており、日本国内外の多くの利用者に恩恵をもたらしています。

一方、ESAはヨーロッパの宇宙活動を牽引する機関で、多国籍のメンバー国からの資金と協力を受けて、地球観測から太陽系の探査まで多彩なミッションを実施しています。ESAの衛星から得られるデータは、気候変動研究、災害モニタリング、農業の効率向上など、様々な分野で幅広い応用が可能です。

また、民間企業も種類によって大きく分かれており、特に、人工衛星を保有している企業と、衛星データの販売に特化した企業があります。

以下では、世界・日本で有名な民間企業を4つずつ紹介します。

世界で有名な企業・団体:

Maxar Technologies(米国): Maxar Technologiesは、人工衛星を保有し、高解像度の商用衛星イメージングデータを提供する世界的な企業です。彼らの衛星は地球観測や地理情報システム(GIS)に利用されています。

Lockheed Martin(米国): Lockheed Martinは、米国の主要な航空宇宙および防衛産業企業であり、高度な技術を駆使して航空機、宇宙船、ミサイル、通信システム、情報技術などの製品とサービスを提供しています。人工衛星を保有しています。

Airbus Defence and Space(ドイツ): Airbus Defence and Spaceは、人工衛星を保有し、高度な衛星技術を駆使して地球観測、防衛、通信、ナビゲーションなどの分野でデータを提供しています。

Planet Labs(米国): Planet Labsは、CubeSatと呼ばれる小型衛星ネットワークを使用して、地球全体を毎日撮影し、リアルタイムの地球観測データを提供しています。

日本で有名な企業・団体:

JSAT(スカパーJSAT株式会社): JSATは、人工衛星を保有する日本の主要な企業であり、地球観測データの提供にも力を入れています。

RESTEC(リモート・センシング技術センター): RESTECは、リモートセンシング技術を活用して地球観測データを提供し、環境モニタリングや自然資源の調査に貢献しています。衛星データの販売に特化した企業です。

アクセルスペース(Axelspace Corporation): アクセルスペースは、自社で独自の小型衛星ネットワークを運用、保有しています。

Tellus: Tellusは、日本発の衛星データプラットフォームであり、衛星データの提供をはじめとし、データを利用した新たなビジネスの開発に貢献しています。衛星データの販売に特化した団体です。

これらは、地球観測データの提供において世界的な影響力を持つ一部の企業や団体です。各企業は異なる特性や技術を持ち、さまざまな用途に衛星データを提供しています。

2. どのような衛星データを販売するのか

衛星データはその種類によって分類され、様々な用途に使用されています。

まず、衛星データで分かることを解説するためにデータのカテゴリを「陸域」「海域」「空域」の大きく3つに分け、下のイラストでは、それぞれの領域で取得できるモノ・コトの一例と、そのデータを取得するために必要なセンサをまとめています。

出典:宙畑

1つ目の陸域では、「光学センサ」「SARセンサ」「熱赤外センサ」が使われています。

  • 光学センサ: 光学センサは可視光や近赤外線などの電磁波を使用して、地表の色や形状を観測します。このセンサは高解像度の画像データを提供し、土地利用、植生、都市計画などの分野で広く活用されています。

  • SARセンサ (Synthetic Aperture Radar): SARセンサはマイクロ波を使い、地表をレーダー波でスキャンします。これにより、天候や日光に左右されずに地表を観測できます。SARセンサは地形モデリング、森林監視、海洋監視などで役立ちます。

  • 熱赤外センサ: 熱赤外センサは地表の熱放射を測定し、地表温度や熱分布を把握します。これにより、火山活動、都市の熱島現象、農地管理などの研究に使用されます。


2つ目の空域では、「ADS-B」「マイクロ波放射計降雨レーダ」「ライダー」が使われています。

  • ADS-B(Automatic Dependent Surveillance-Broadcast): ADS-Bは航空機から送信される自動位置情報を受信するシステムで、航空機の位置、高度、速度などの情報をリアルタイムで提供します。このセンサは航空交通管制や飛行安全性の向上に貢献します。

  • マイクロ波放射計降雨レーダ: マイクロ波放射計降雨レーダは、大気中の雨滴や降雨の密度を測定し、降雨量や降雨の分布を把握します。気象予測や洪水予測などに活用されます。

  • ライダー (Lidar): ライダーはレーザー光を使用して対象物までの距離や高度を計測するセンサです。大気中の気象条件や大気汚染のモニタリング、地形マッピングなどに使用されます。


最後に3つ目の海域では、「AIS/SARセンサ」「マイクロ波放射計熱赤外センサ」「マイクロ派散乱計」「マイクロ波高度計」「マイクロ派放射形SARセンサ」が使われています。

  • AIS/SARセンサ (Automatic Identification System/Synthetic Aperture) Radar): AIS/SARセンサは、船舶の自動識別情報とSARセンサによる地表観測を組み合わせて、海域での船舶の監視と海洋状況の把握に用いられます。船舶の位置、速度、航行ルートの監視や海洋災害の迅速な対応に役立ちます。

  • マイクロ波放射計熱赤外センサ: マイクロ波放射計熱赤外センサは、海洋の表面温度を計測します。海洋環境のモニタリング、気象予測、海洋生態系の研究などに利用されます。

  • マイクロ波散乱計: マイクロ波散乱計は、海洋表面の粗さや風の強さを測定し、波の情報を提供します。海洋波のモニタリング、船舶の安全性確保、沿岸域の環境研究に活用されます。

  • マイクロ波高度計: マイクロ波高度計は、海面から衛星までの距離を計測し、海洋表面の高度を推定します。洋上の船舶や潮汐、海面高度の変動を把握するのに重要です。

  • マイクロ波放射計SARセンサ (Scatterometer Synthetic Aperture Radar): マイクロ波放射計SARセンサは、海洋の風速と風向を測定し、風の情報を提供します。航路計画、気象予測、海洋循環研究などに利用されます。


このように、様々な種類の衛星データによって用途に応じた適切な分析が可能となるのです。

最後に、衛星データの販売価格について有料パートにて紹介します。現在無料のデータや、衛星データの販売価格はどのような状況で変化しているのかを解説していきます。


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