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確かな技術力を背景に環境への配慮も欠かさない、カナダの宇宙関連スタートアップの最新情報

天地人は、衛星データを使った土地評価コンサルを行っているJAXA認定ベンチャーです。地球観測衛星の広域かつ高分解能なリモートセンシングデータ(気象情報・地形情報等)や農業分野の様々なデータを活用した、土地評価サービス「天地人コンパス」を提供しています。

天地人は、地球温暖化による気温上昇や異常気象などの影響に立ち向かうために、宇宙の視点から農業の課題解決を目指す「天地人ファーム」を立ち上げました。

宇宙技術を活用して、社会課題を解決することは、近年注目されるトレンドの一つです。宇宙技術は、従来の地上技術では解決できなかった課題を解決するために活用され、社会に貢献することが期待されています。

本日は、世界でもトップクラスの技術力を持ち、環境への配慮も欠かさないカナダの宇宙関連スタートアップを紹介します。

1.カナダの宇宙市場

カナダにはカナダ宇宙庁(Canadian Space Agency、略称:CSA)という、1989年に設立された宇宙に関する政府機関があります。

カナダ宇宙庁は、地球観測・宇宙科学と探査・衛星通信・宇宙への理解促進などを中心に活動しています。
カナダ宇宙庁といえば、「カナダアーム」が有名です。「カナダアーム」は国際宇宙ステーションにドッキングしたスペースシャトルでの作業や、国際宇宙ステーションの建設・メンテナンスに広く使用されました。
カナダは、「カナダアーム」を通じて、国際宇宙ステーション計画に参加しており、国際協力の要として機能しています。

カナダ宇宙庁(CSA)の、2022-23会計年度の予算は3億8830万カナダドル(日本円で約390億円)と発表されています。
JAXAの2021年度の予算額は1,571億円ですので、カナダの政府宇宙予算は日本の25%の規模感です。


出典:カナダ宇宙庁「2022-23 Departmental Plan」より

2019年におけるカナダの宇宙産業の市場規模は、55億カナダドル(日本円で約4620億円)。日本の宇宙産業の市場規模が1.2兆円であることを考えると、カナダの宇宙市場の規模は日本の40%弱となります。

カナダの宇宙産業の、官需・民需の割合を見ると、

  • 官需 11%

  • 民需 89%

であり、日本の宇宙産業の90%弱が官需であることと比較すると、民需の比率が高い市場となっています。

また、内需・外需の割合を見ると、

  • 内需 58%

  • 外需 42%

であり、日本の宇宙産業の95%弱が内需であることと比較すると、宇宙産業を輸出することに成功しています。

カナダの宇宙産業の輸出先は、米国、欧州、アジアの順に多く、アジアへの輸出額が近年増加傾向にあります。


出典:カナダ宇宙庁「2020 State of the Canadian Space Sector Report
- Facts and Figures 2019

カナダと日本の宇宙産業を比較すると、日本の宇宙産業は、官需・内需が多くを占めており、宇宙産業の健全な規模拡大のために、官民連携による民需・外需拡大を目指しています。
日本よりも市場規模の小さいカナダにおいて、宇宙産業の民需・外需が拡大していることは、日本の宇宙産業にとって参考になることも多いのではないでしょうか。
Tenchijin Tech blogでは、日本の宇宙市場やスタートアップ市場に関する記事を掲載しています。よろしければ、こちらの記事もご覧ください。

2.カナダの宇宙関連スタートアップ市場について

カナダにおける宇宙関連スタートアップへの民間投資額は、2021年には米国(840億ドル)、中国(320億ドル)、英国(120億ドル)、ドイツ(110億ドル)に次ぐ40億ドルの投資額となっています。

2021年時点で世界の宇宙関連スタートアップは1万社以上あります。米国(6,477社)、英国(793社)に次ぐのがカナダになります(610社)です。

近年スタートアップ市場として注目されている、中国(536社)、インド(412社)よりも大きい数字となっています。


出典:SpaceTech Analytics「SpaceTech Industry Landscape Overview 2021 Q3

米国と欧州が、宇宙関連スタートアップにとって主要な拠点ではありつつも、カナダも世界トップレベルの市場といえます。

3.カナダの注目宇宙スタートアップの紹介・解説

ここでは、大規模な投資額を受け、世界からの注目を浴びているカナダのスタートアップ4社を、天地人の技術的な視点を交えてご紹介します。

Wyvern Space

Wyvern社は、人工衛星から高解像度のハイパースペクトル画像を撮影できる独自のカメラ技術を開発しており、2018年創業、2022年2月に9億円、同年の11月には10.2億円の資金調達を実施するなど勢いのあるスタートアップ企業です。

■Wyvern社の技術解説

ハイパースペクトル画像に特化した衛星「DragonEye」の開発をしているスタートアップ企業です。

ハイパースペクトルセンサとは、一般に使われているカメラよりもはるかに細かい種類の波長を識別することができます。

どういうことかと言いますと、人間の目は赤・緑・青の3色を感知する事ができ、対象物からの反射光を感知して色を識別しています。
例えばりんごを赤色と感じているのは、光の情報を目で受け、脳の中で赤色だと認識しているからです。
その光の情報の一部は、波長と呼ばれます。波長には種類があり、長さ(λラムダ)の違いによって見える色が変わります。りんごが見えるのは赤色の波長のため、人間には赤に見えるということです。

そして、ハイパースペクトルセンサは、これまで人間の目では見分けられなかった情報を詳細に可視化することができます。

例えば、人間の目には「海」のことを「海」としか見分けることができませんが、ハイパースペクトルセンサだと水深や海底油田の所在など、詳細な情報を認識することができます。

他にも、農業であれば、作物や土壌の状態に関するデータを収集し、作物の収穫量を向上させたり、化学薬品の使用量を減らしたりするのに役立てることができます。エネルギー産業であれば、石油、ガス、石炭などの鉱物の存在を確認したり、パイプライン、送電線、掘削装置などのインフラの状態を監視することもできます。

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この後の記事でも、カナダの宇宙関連スタートアップ3社とその技術の解説をお届けします。

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