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天地人が注目する今月の宇宙ニュース~ リモートセンシング 編~Vol.13

天地人は、衛星データを使った土地評価コンサルを行っているJAXA認定ベンチャーです。
地球観測衛星の広域かつ高分解能なリモートセンシングデータ(気象情報・地形情報等)や農業分野の様々なデータを活用した、土地評価サービス「天地人コンパス」を提供しています。

Tenchijin Tech Blogでは、宇宙に関連するさまざまな最新情報を、天地人のエンジニア、研究者、ビジネスリーダーが一歩踏み込んで解説します。

天地人が注目した3つの海外ニュースを紹介します。

今回は、
・ 山火事からのメタン遠隔検出技術
・最新の民間宇宙船
・大手データプロバイダーによる観測衛星とデブリ監視衛星の打ち上げ
について取り上げます。

それぞれについて、天地人の専門家が、ニュースの注目ポイントや今後の動向を解説します。

1.天地人が注目したニュース3選!

ニュース1:最新の遠隔検出技術で山火事によるメタン放出量が測定可能に

 米国カリフォルニア大学リバーサイド校の研究者らは、最新の遠隔メタン検出技術により、同州の山火事で大量のメタンが放出されており、放出量は年々増加していることを発見した。メタンの検知量は衛星による測定値と一致した。本技術ではレーザーではなく太陽が光源として使用され、また火元から約 65 km離れた場所から測定することが可能であった。

出典:New Remote Detection Technique Helps Quantify Methane Emitted By Wildfires Of 2020, BQ Prime, https://www.bqprime.com/business/new-remote-detection-technique-helps-quantify-methane-emitted-by-wildfires-of-2020

ニュース2:ロッキード・マーティンのLM 400マルチミッション衛星、電磁干渉・電磁両立性試験を完了

米ロッキード・マーティン社の軍事・商業用途に適応可能な中型衛星LM 400の初号機が、電磁干渉・電磁両立性試験を完了した。LM 400は、1つのプラットフォームでリモートセンシング、通信、イメージング、レーダー、永続的な監視など、複数のミッションを実行することが可能であり、工程とコストを削減可能な点で注目されている。

出典:Lockheed Martin's First LM 400 Multi-Mission Space Vehicle Completes Demanding Testing Milestone, yahoo! finance, https://finance.yahoo.com/news/lockheed-martins-first-lm-400-130700118.html?guccounter=1

ニュース3:Spire、地球観測衛星とデブリ監視衛星を打ち上げ

Spire Globalは、米バンデンバーグ宇宙軍基地から6U衛星の打ち上げに成功した。衛星にはハイパースペクトルカメラと土壌水分データを収集するSpire社のGNSS-R センサーが搭載されており、陸上・海洋の生態系における高解像度のデータ収集を行う。また、Spire社はオーストリアの政府と民間企業により開発されたADLER-2も打ち上げた。ADLER-2は、ADLER-1に引き続き、地球低軌道の軌道上のデブリの検出と追跡を支援するほか、世界中のエアロゾルも測定する。

出典:Spire launches customers’ Earth and debris monitoring satellites, ROOM, https://room.eu.com/news/spire-launches-customers-earth-and-debris-monitoring-satellites

2.天地人はこう読む

以下では、本記事で紹介した3つのニュースがなぜ注目されているか、どんなトレンドが今後起こりそうかなど、天地人の専門家の見解を記します。

ニュース1は「国際開発コンサルタントの職務経験を持ち、天地人で事業開発を担当している淺羽
ニュース2は「COOの百束
ニュース3は「通信衛星向けAIプロダクトの開発マネージャーである木村
の見解を記します。


ニュース1:最新の遠隔検出技術で山火事によるメタン放出量が測定可能に

淺羽の解説の前に、記事内で紹介されていたリモートセンシングを用いたメタン放出量の測定方法について簡単に記します。

従来、山火事によるメタン排出量の測定は、航空機で採取した山火事の空気サンプル分析による方法が採用されていました。しかし、この方法はコストが高く、実施には危険も伴います。
そこで、本記事では地上の離れた場所からのリモートセンシングにより測定する方法が開発され、ニュース記事内で紹介されています。

この測定方法では、リモートセンシングとしては一般的なレーザーではなく、太陽を光源として使用しています。
山火事では、地表の一部が局所的に高温となることで大気中に上昇気流(=プルーム)が発生します。
太陽の熱エネルギーをプルーム内のガスが吸収し放出したものを測定することで、エアロゾルや炭素、メタンなどの存在量を把握しています。

出典:Phys.org, Methane from megafires: Novel detection technique raises pollution policy questions

ここからは、淺羽によるニュース解説を記載します。

本記事では、「メタンを含む温室効果ガスは山火事の規模や被害を拡大しており、結果としてより多くのメタンが発生する悪循環が発生している」と指摘しています。

地球温暖化の要因の一つであるメタンの発生を抑制するために、産学官民は様々な取り組みを試行していますが、メタンの人為的発生を規制的・自主的に抑えながら、自然発生を抑え込むのは困難です。

一方、人為起源の温室効果ガスを抑えると、自然起源の温室効果ガス発生を減速させることが可能であることが分かっています。
例えば、日本におけるメタン発生量割合が最も多い発生源は稲作であり、その割合は45%にも上ると言われています。
水田の土壌にはメタン生成菌が潜んでおり、有機物をエサにしてメタンを発生させます。ここでメタンは水田の土壌という自然から発生していますが、それは稲作という人間の行為が引き起こしています。
そのため、人間の活動を見直すことが、自然起源の温室効果ガスを減らすことに繋がると考えられます。

しかし、文明が発展し人類の活動が複雑化するにつれて、人為的なメタンの発生源も複雑化してきています。
そのため、地球温暖化を抑え込むために、ひとつひとつの発生源に対して抑制する方法論が研究されています。

それと並行して、各発生源からのメタンの発生量を測定・モニタリングする技術も発展しています。記事内で紹介されている技術もその一つです。

リモートセンシングを用いた測定・モニタリング方法としては、航空機や人工衛星が用いられることが多いです。
しかし本記事では、地上の離れた場所からのリモートセンシングを用いることで、その安全性を主張しています。
山火事が発生すると、山の上空に煙や熱風が上がっていきます。そのため、上空から撮影するよりも地上の離れた位置からセンシングを行う方が、安全性が高いといえます。

(解説:事業開発 淺羽)


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