見出し画像

新手のラブレター

彼が恋人ができたら友人たちと集合していたというお店を訪れた。

「あの店」と言うだけで集合できるという、なんとも尊くて羨ましい関係性と出来事である。
男3人が集まるには、少しばかりおしゃれ過ぎる気もするが、男子大学生がここの場で珍しく自分の恋バナをするなんて、かわいすぎる。


彼は大学時代の写真を少しだけ見せてくれたことがある。私は、彼の今よりチャラついた大学時代を思い出しながら、この場での彼らの集会を想像しながらフレンチトーストを食べる。
彼が何を頼んでいたのか、聞いておけばよかった。


彼がナチュラルに笑う顔は彼が思っているよりもかっこよくて随分爽やかで、彼はその事に気が付いていなくて。私が何度この笑顔にやられたのかも彼は気が付いていない。

きっと彼は恋人ができた時も同じ笑顔で、報告したのだろうなと勝手に妄想して傷つく。


彼はどんな恋をしてきたのか。

彼はどんな苦労をしてきたのか。

彼は何を楽しいと思ってきたのか。

彼は何に傷ついてきたのか。


彼がどんな人生を歩んできたのか、私は何も知らないし、知ろうともしていなかったのかもしれない。彼は聞いたことしか答えてくれないから、ペラペラお話してはくれない。

他人の人生なんて全部はわかりっこないのに、全部知りたいと思ってしまう。強欲だ。

過去の彼女のことなんて、知ってもなんの徳もないのだけれど全部知りたいのだ。過去の女だけが知っている彼なんて存在されたら、やってらんない。そんなの嫌に決まっている。
でも、彼の中から過去の彼女を消すことができない自分にも嫌気がさすし、深入りしたくないとも思う。


もし、1つ願いが叶うなら

ずっと一緒にいたいとか、結婚したいとか、そんなことではなくて

彼の見てきた、見ているこの世界私も同じ目で心で見ていたいと思う。

どんな色をみてきているのだろうか。



恋のはじまりは知りたいと思うことだ

と聞いたことがある。

彼の過去に嫉妬した時、はじめて恋だと自覚を持った。
私の知らない彼を知る元彼女さんに嫉妬した。知りたいと思った。



彼にちゃんと好きだと伝えた覚えがあまりないように思う。聞かれてとか、好きって言ってくれないよねと言われてからとか、彼をなだめる時だとか、なんとなくLINEでとか、そんな風だ。


ちゃんとまっすぐに目を見て好きだと伝えたい。伝えるだけなのに、伝えらんないのが恋っぽい。


今日こそは、恋人になってくれた君に目を見て伝えよう。この暑いきらきらの夏にはぴったりだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?