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【FC東京】2023年シーズン・プレビュー(2) GK編

今回からはポジション別に今季の戦力を概観して行く。まずはGKから。

GKは主力のスウォビィクが残留する一方で、昨季その控えに甘んじた波多野が長崎に期限付移籍、また長くケガの治療中であった林が仙台に移籍した。児玉は残留、2021年シーズン途中から盛岡に期限付移籍していた野澤大が復帰することとなった。その結果、今季はスウォビィクを軸に、野澤と児玉がサブを争う。

スウォビィクは不動

スウォビィクは昨季仙台から移籍加入、抜群のシュート・ストップでなんども危機を救った。特に一本セーブした後の立ち上がりが速く、重ねてシュートを放たれても連続してセーブしに行ける俊敏さは驚異的といってもいいレベル。彼の加入は林の負傷離脱以降課題だったGKの補強として大きかった。

一方で足許やビルド・アップは必ずしも得意ではなく、最終ラインからの丁寧なビルド・アップが特徴のアルベル監督のスタイルにフィットするかという疑問点は加入当初から指摘されていた。実際開幕当初は敵のハイ・プレスに遭って大きくけることを余儀なくされるシーンも少なからずあった。

昨季シーズン中に徐々に安定感を増し、CB2枚との間のパス交換でボールの逃がし先になることはそこそこできるようになったが、スウォビィク自身からの前線へのけり出しや、ボランチ、SBへのパスはあまり見られず、まだまだ向上の余地は残された状態。

このためもしかしたらオフにGKの補強、最悪スウォビィクの放出もワンチャンあるかと思ったが、早い段階で契約更新を発表、彼とともにシーズンを戦う意志がクラブから示された。チームを鼓舞する彼のコーチングは仙台時代から変わらず熱く、今季も彼にゴールを任せることができるのは僕としては嬉しい。

CBが森重、木本を軸に構成される限り、彼らのところである程度ボールを動かせることは見こめるので、得意のシュート・ストップを武器に、ビルド・アップに取り組むかたちでの貢献を期待したい。

児玉には感謝しかない

児玉は昨季はスウォビィク、波多野に次ぐサードの位置づけでルヴァンカップ1試合の出場にとどまった。過去にはJ2でレギュラーを張った経験もあり、特にどんな状況でも的確にコーチングすることのできる落ち着きは大きな武器だと思う。

また、難しい立場でも緊張感を切らせることなくチームの一員として備え続けることのできる強いメンタルもじゅうぶん見こめるからこそ、クラブも契約を更新したのだろう。更新の発表は彼も早かった。実際、彼が波多野の背後に控えてくれていることの安心感は大きかった。

これまで見た試合ではシュート・ストップ、ハイ・ボール処理などにも特に不安はないと感じているが、スウォビィクがフル・フィットであればそこからポジションを奪うのは難しく、野澤とサブの座を争うことになるだろう。

アカデミー出身の若手である野澤に、将来への投資の意味もこめたアドバンテージがあるのは否定できないが、今季も児玉がクラブにいることの意味は大きく、難しい立場ながら残留を選んでくれたことには感謝しかない。

野澤の目線の置き方

野澤は2021年シーズン途中に当時J3だった盛岡に期限付移籍、すぐにレギュラーを奪取し14試合に出場、J2に昇格した昨季は22試合にレギュラーとして出場した。年代別代表の経験もある期待の若手であり、期限付移籍で実戦経験を積ませて今回クラブに戻したことはタイミングとして納得感はある。

しかし実際どの程度のパフォーマンスが期待できるかは未知数で、まずは児玉とサブを争いながらカップ戦などでの出場機会をもぎとり、将来に向けてアピールしスウォビィクからポジションを奪い取る気概を見せてほしい。

しかし、いずれやってくる「スウォビィク後」を見すえれば、野澤の本当のライバルはむしろ長崎に期限付移籍している波多野であり、安定して長くポジションを任せることのできるGKへの成長を彼と争ってほしい。今季はその争いに名乗りをあげ、自分の立ち位置を示すシーズンになるだろう。

マネージメントの難しいポジション

GKはあたりまえだがポジションがひとつしかなく、レギュラー以外は常に待機を求められる難しい役割である。そしてサブが出場できるのは、自身のパフォーマンスがすごく伸びたみたいなシーズン中にはちょっと想定しにくいケースを除けば、正GKのケガをはじめ、極端な不調、チームの不調など、なんらか具合の悪いケースである。

そしてまた、正GKがケガをしてサブを出場させた場合、そのサブもケガをしてしまって一気にGKがいなくなるのもなぜかよくあるケースで、クラブとしても、GK自身としても非常にマネージがむずかしい。

そうしたなかで3人のGKが互いにポジションを争いながらもひとつのチームとして高め合い、なにがあってだれが出てもきちんとパフォーマンスが発揮できる状態を維持してくれることが、東京が相応の成績をおさめるためには不可欠だ。波多野が果たしていたムードメーカーの役割をだれがどう担うかも含め注目したい。

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