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「筋肉は裏切らない」

「移植の可能性も考慮して、今後は準備を進めていきます。」

 11月10日、2度目の胸骨での骨髄穿刺の簡易結果の報告を受けた後に主治医の先生から説明を受けた。
 『急性リンパ性白血病』の闘病生活を綴り始めてもうすぐ5ヶ月、こういった可能性をまったく考えていなかったわけではないが、やはりその説明は1度では理解しきれず、まだまだ頭の中はごちゃごちゃだが、少しでも自身の心を整理するために、文章として記録しておこうと思う。

▶骨髄穿刺の結果と自分の体質

 2度目の検査は、10月27日に行った1度目とほぼ同一の結果となった。(表現に多少誤りがあるかもしれませんがご容赦ください)
 ◯採取した骨髄液の中に白血病細胞は確認されなかった。
 ◯血球のもととなる幼い細胞があることも確認できた。
 ◯ただし、血球を生み出す活動が活発かと言うとそうではない

 10月11日からの入院期間中、幾度となくヘモグロビン、血小板の輸血、白血球(好中球)の増加を促すフィルグラスチムの皮下注射を行い、血球の回復・維持に努めているが、それらがなければすぐに数値が低下してしまうという状態が続いている。つまり自分の骨髄で十分に血球を生み出すことができていないということである。

 これまでの闘病生活から、どうやら自分自身抗がん剤による副作用が非常に発現?残存?しやすい体質のようである。
 1番最初に行った『寛解導入療法』でも2週間もしない内に一気に脱毛が始まり、その後の地固め療法でも他の患者さんと比較し体調不良が長続きしやすかったようで、先生もその点はずっと気にかけていたようだった。
 そして前回、9月に行った『地固め療法2クール』では、メソトレキセートという抗がん剤を24時間投与し、それが体内に残存しないよう大量の点滴を行うというものであった。

 この頃の投稿を見ても、やはりかなり体調が崩れていたと書いている。
 先生曰く、この時の抗がん剤のダメージが抜けきっておらず『骨髄抑制』の状態が継続していることが血球が回復しない原因ではないかとのこと。
 ただし、一般的に骨髄抑制は1ヶ月程度で回復するものだが、すでに抗がん剤投与から1ヶ月半ほどの時間が経過しているものの、未だ回復の兆しが見られない状態なのは予想外の状態である。

▶病状説明

 11月12日、これまでの治療の進捗確認も兼ねて、妻、娘、両親、妻の両親、自分の7人という大所帯で病状説明に望んだ。(義両親は娘の子守のため早々に席を離れたが…笑)
 先生からこれまでの治療の経過、自分の現状についても説明してもらい、移植の必要性について説明してもらった。そこから、現在の自分の進路は3通り考えられるという結論となった。
 ①このまま血球値が回復しない:移植(造血幹細胞移植
 ②血球値が回復し、MRD(微小残存病変)測定が陽性:移植
 ③血球値が回復し、MRD測定が陰性:化学療法継続

 3パターンの可能性の内、2パターンが移植となる。③は、これまで1ヶ月回復が見られなかったことから厳しいのかなと自分自身は感じており、現実問題として移植が必須ではないかと思っている。そして仮に化学療法を継続できたとしても、次の化学療法の後にきちっと血球が回復してくるという確証もないため、この3択を常に突きつけられた状態となる。
 最悪は、このまま様子見を続ける内に白血病が再発してしまうこと。移植の成功率を高めるには、寛解状態での移植が必要になる。
 今回の病状説明では、もうしばらく血球の回復の様子を確認しながら、並行して移植に必要な準備を始めていくということで話が終わった。
 具体的には、ドナー候補である兄に再度検査を受けてもらい本当にドナーとして対応できるのか、私自身が兄からの移植に対して不利となる抗体を持っていないかの検査などがある。
 病状説明のあと、あまりゆっくり家族と話す時間は持てなかったが、娘を抱っこすることはできた。またしばらく抱っこできない現実を考えると涙が止まらなかった。

▶正直な心境

 これまでの抗がん剤治療は、(副作用でつらい時期はあったものの)比較的順調だったのに、急に血球が回復しないと1ヶ月もの間治療が停滞し、そのまま移植の可能性まで出てきて、恐ろしくてしようがない。
 先生の見立てでは、現時点でとりうる適切な選択肢で移植を行った場合、「8割〜9割は成功する」 とのこと。
 つまり2割近く死んでしまう可能性があるということ。
 そして移植後もGVHD(移植片対宿主病)などの合併症、免疫低下による感染症などにより苦しむ可能性もある。さらに言えば自分くらいの世代での急性リンパ性白血病の5年生存率は6〜7割とも言われ、5年以内に半分近くの人が再発等により亡くなられてしまうという事実。
 正直、白血病にはなったものの、『自分は化学療法だけで白血病を克服し、元の生活に戻れるだろう』と勝手に甘く考えていたようだった。
 この、ある意味では当初から想像できてもおかしくない現実を目の当たりにして、情けないほどに動揺してしまっているのがわかる。
 治療開始時にもかなり不安を感じていたが、今はそれ以上に死んでしまう可能性に恐怖を感じている。 

▶「筋肉は裏切らない」

 先生から移植の可能性の話を受けてから、色々と気持ちの不安を伝えることが増えた。真摯に受け止めてくださり、はっきりと答えを返してくれる先生が担当で本当に良かった。
 上にも書いたように、今後の治療が泣くほど怖いが、かと言って何もせずに過ごしてもただ死んでしまうだけだ。それではこれまでの治療も含め意味がないと思い、何をすればよいか先生に訪ねてみた。
 まず1つ目は、移植が不安ならば、予習をしてほしいと言われた。移植の前後では必ず何かしらの副作用、合併症など予期せぬ状況が発生することがある、その時に慌てることなく看護師さんや先生に状況を伝えることができれば適切な対応ができ、移植後の自身の負担を下げることができるとのこと。
 もう1つは、しっかりと体力をつけること。化学療法でも移植でも、体力をつけておくことは絶対に有効に働くので、変わらず体を鍛えておいてほしいとのこと。現在、白血病の診断を受けた直後から体重が10kg近く増加し、日々のリハビリトレーニングのおかげで、これまでの人生で1番体ががっしりしてきた。

「筋肉は裏切らない」

 これまで色々な症例やデータを基に話をしてくれた先生から、というか医者からここまで脳筋なセリフが出てくるとは思わず、先生と腹を抱えて笑った。だいぶ心の不安が薄らいだ気がした。 

▶今の自分にできることを

 それでも不意に不安を感じて泣きそうになるときがある。家族とのテレビ電話は心の支えになる分、電話後の静寂が「もう2度と直接会えないのかも」と恐怖を覚える時がある。
 こうやって文章を書いているときも、泣きそうになりながら文章がおかしくないか見直している。
 だけど、今の自分が家族のためにできることは、しっかりと白血病に向き合い、できる準備を進めていくことしかない。
 そのために必要な移植に関する資料も準備してもらったし、普段の筋トレに加えて新たにウォーキングも1日のルーティンに加えた。
 怖いものは怖いが、足を止めてても何も改善はしない。今自分にできることを真剣に取り組もうと思う。

最後までお読みいただき、
ありがとうございました!