仮面ライターコーヒー

※作中の登場人物や出来事はすべてフィクションです!

彼の名は仮面ライターコーヒー。
ゾムワールドに潜む善良な市民の敵「ゾムモンスター」と日々戦う正義のヒーローである。
ゾムモンスター達は一般市民に擬態して電脳世界とリアルワールドを行き来している。電脳世界は人類が新たに生み出した新しい第2の世界である。
新しいがゆえに人々の交流は活発だが、秩序はまだまだ発展途上である。
そこに住む善良な一般市民を食い物にするゾムモンスター達を倒しこの世界の平和を守るのが我々の務めである。

今日の敵は電脳世界に来たばかりの住民をいたずらに狙う不埒な輩である。
彼奴等は見た目こそ一般市民と変わらず庶民生活に溶け込んでいる。それ故何か被害が起きてからじゃないと仮面ライターは動けない。
実に歯がゆいところである。しかしむやみやたらに無実の者に疑いをかけ、オンラインパトロールに引き渡すわけにはいかない。

仮面ライターはさっそく被害状況の詳しい聞き込みを開始した。

ちなみに補足するが、仮面ライターはこの世界の正規の秩序維持機構ではない。
彼自身の価値観、かつ独断のもとにゾムモンスターを倒す遊撃部隊である。
ゆえにその従う法律は現実世界のそれに準拠する。もちろんコンプライアンスも重視する。被害者に話を直接聞くことで二次被害の拡大も防がなくてはならない。

話を戻そう。
例のゾムモンスターは主に新しく来た住民をターゲットにコミュニティに潜んでいる様だ。
最初のうちは新規ユーザに親切に、フレンドリーに接するが、その裏で相手を油断させ自然な会話の中から相手の住処、生業、家族構成を聞き出すことを狙っている。
そして相手を心身ともに逃げられなくしたところで電脳世界からリアルワールドに連れ去り事に及んでいるようだ。

今回の被害者である「カラス君(24歳)※空想上の人物」の紹介をしよう。
彼は電脳世界からリアルワールドに連れ去られた後、怖いお兄さんたちに囲まれてしまい金銭を奪い取られてしまった。
元々相手とは一緒のコミュニティで過ごしていたが、一緒にテニスをしようと持ち掛けられうっかり信用してしまい、そしてまたしてもうっかり個人情報を喋ってしまった。

おかげで電脳世界とリアルワールドをつなぐインターフェースポイント(PCの前とでもイメージしてもらいたい)にまで相手の接近を許してしまった。
電脳世界に接続している間、インターフェースにいる者は無防備である。
しかし、近づかれたとて今まで仲良くしていた相手だ。そこまで危険は及ぶまい。そう考えていたのだが甘かった。
都内の体育館でテニスを終えた後、楽しく食事でも行こうかと持ち掛けようとした瞬間、目の前に停まった車から怖いお兄さんたちがやってきて、「どうオトシマエつけてくれんねん!」といった感じで脅されたようだ。その輩はトンカチを所持しており今にも頭をかち割らんという雰囲気だったので彼は逃げ出した。
体育館に戻り、階段を上り屋上から飛び降り建物伝いに走り続けた。
そんなこんなで何とか命だけは取り留めた。

しかし、彼のプライドと純情は傷つけられたままだ。
こんなことを許しておくわけにはいかない。義憤に駆られた仮面ライターはベルトを取り出しスマホを取りだす。
左ひじを曲げ腹に力を込め握りこぶしを握り、スマホを握った右手を高くつき上げる。

そして「Henshin」アプリを起動した。

「返信!!!」

この瞬間から彼は仮面ライターコーヒーである。
電脳世界で新たな獲物を探す敵のもとへ向かった。
場所はアプリの「エネミーサーチモード」が教えてくれる。
青い点が示す方向にコーヒーはひた走る!
奴は見つけた。今日は新たにできたテニスコミュニティに潜んでいた。
初心者募集の緩いサークルで獲物を物色していたようだ。
テニスが出来ないふりで弱みを見せ、教えたがる男たちの心を許そうという作戦のようだ。

「ライターフラッシュ!」

真実という光が敵を照らす!過去に起こしたトラブル事例という名の閃光を使って真実の姿をあぶりだす技だ。
たちまち一般市民はこの光に驚いて敵から一斉に離れる!
これで敵と一般市民を切り離すことができた。正義のヒーローは一般市民をむやみやたらに巻き込まないのだ。

敵は仮面ライターの姿に気が付いて襲い掛かってきた!

「アイデンティフィケイション!」

暗黒のビームが彼を襲う。この攻撃は仮面ライターの力を奪い、同時に相手のインターフェースポイントを強制的に暴く業だ。なんとも恐ろしいが察知済みだ。

当たらなければどうということはない。

「ライターゴーグル」は少し先の未来を映してくれる。ゆえに避けるのは容易かった。

仮面ライターは敵に接近する。そして自身の必殺技の射程に入ったところでアプリの必殺モードをタップした。さきほどのライターフラッシュであぶりだされた真実の姿が光となって敵を四方から取り囲んだ。

「ライターキック!!」

敵は集まった光とともに一撃で電脳世界から蹴りだされた。
積み重ねた悪事を暴かれこの世界からキックされたのだ。
こうして今日も戦いが終わった。

カラス君に事の顛末を報告した。彼はリアルワールドではなかなか異性と話す機会が得られず恋人が出来なかった。
そんな折にこの電脳世界を見つけコミュ力をつけて恋人を作れるようになりたい一心でこの世界に飛び込んだそうだ。
だが不幸なことに若く純真な動機をもてあそぶ不埒な輩に運悪く捕まったしまったそうだ。彼にはこれからは注意してこの電脳世界で過ごしてほしいと伝えた。
(彼にその後恋人ができたという話は聞かない元気でやっているのだろうか)

秩序と平和、そして自由。

この3つを仮面ライターは愛しているのだ。これは柱である。
この柱にこの世界の良さがある。
ゾムモンスターのような連中に壊されるわけにはいかないが、だからといって自らの手で壊してもいけないのだ。
自分たちの手で作り、自分たちの手で守っていく。
それがこの世界のモットーである。
そして、一度作り上げた世界をぶち壊していくのも爽快である。

仮面ライターは電脳世界の平和を守るために今日も行く。
後に彼の活躍が電脳英雄伝として後世に宣べ伝えられることを期待して。

予告
次回の敵は「現実世界ではモテなかったけどSNSでフェミニストになったらモテるかもしれない!と思ってる」敵か、「SNSで真実に目覚めてたら、現実の打ち合わせに寝過ごした敵」が相手だ!

Open your eyes for the next coffee!






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