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【一次創作】 愛はわかるけど恋とはどんなものかしら

一次創作小説「迷宮遺失物回収業者スカベンジャー ハゲタカ」なろうで完結しました。

https://ncode.syosetu.com/n8023il/

一応恋愛タグ入れているように、本作は死体漁りを生業とする回収屋の男が結婚することで終わるお話です。
なので今回はあとがきもかねて私の恋愛創作論を。


【恋愛モノは理解不可能】

幼少期からそうだったのですが、結局成人してからも純粋に恋愛を扱った作品は理解ができないのです。
主軸は「恋愛」だと理解していても、他の部分に目がいってしまう。

煙と蜜くらい年齢差が離れて、明らかに文治さんが許婚のヒロインと一線引いており、今後の時代の流れや二人の身分を考えると「もしかしてコレって二人が一番幸せだった美しい時代を描いているだけでは……?」なんて解釈ができるので読めるのですが。

こういった原因を一言で済ませるとこうなります。

乙女心が足りない。

【でも愛はわかる】

恋愛脳と乙女心が足りないとは言っても、愛はわかります。
愛は別に「人間⇔人間」でなくとも成立しますからね。いや最近は異種婚姻モノのガチ恋愛作品多いけどそういうことじゃないんだ。

愛しいと思うモノを巡る物語はジンと来ます。どんな形であれ。
それこそ「諸君、私は戦争が大好きだ」とかのたまうデブの少佐の愛だってわかります。わかっちゃいけない気がする。

【恋愛モノで『恋』を切り捨てる】

なので、いっそ『恋』という要素を切り捨てたならば、限りなく恋愛モノに近い代物を書けるのではないか。

それを恋愛と言っていいのかどうかはもう作者にも登場人物本人たちにすらわからないので、判断は読者に丸投げしよう!
そこまで付いてきてくださる読者様がいるかどうかもわからないけどとにかくやってみようぜ!の精神でやりました。

本作のテーマは遺品回収を生業とすることから
「失ったモノを取り戻そうとどんなにあがいても、結局何も取り戻せない。それがわかったうえでどうするか」
なので本作では以下のような形でとりあえずの着地点としました。

失った者同士の二人の間に、愛は成立している。
結婚もする。
でも、結局「失ったモノは取り戻せない」ので、結婚はただの手段であって目的ではない。

【試みのきっかけ】

今年書いた自分の記事でまとめたことですが「愛を語るにおいて性愛が往々にしてノイズになる」という結論を出していました。
性愛リビドー純愛アガペーとの葛藤こそが恋愛だという見方もできるのですが。
いずれにせよ社会的、生物的な束縛から解放された愛の方が私にはわかりやすいし、わからないものは書いていても苦痛になる(商業プロ作家の皆さんはそれでもやるのですからご立派です)。

ってなわけで、上述記事で書いたことの一つでもあるのですが「性愛を省いた男女愛=心中モノ」に限りなく近いけど、決して心中するために愛を結ぶわけでもないという方向で。
この世で結ばれないからあの世か来世でって言っても、そんなん叶う保証なんか無いから命を武器にこの世でなんとかやっていこうぜって方が前向きかなと……。

【まっとうな道を歩けない二人】

本作そのもののコンセプトはウィザードリィと世界樹の迷宮ですが、恋愛の主軸となる面は筋肉少女帯のアルバム「月光蟲」収録の「夜歩くプラネタリウム人間」からインスピレーションを貰いました。

※※※

何をやっても、どこに行っても、自ら望んでまっとうな道から外れてしまう二人。
誰のせいでもなく自己責任なので、とにかく暗闇をさまよい歩くしかない。
はっきり言って遠回りな自殺志願者なのですが、ただ死にたいわけでなく納得できる死に場所を探してわざわざ辛い道を選んでしまう。

このあたり忍者と極道の影響もあります。

忍者ほど心身ともに強くはないので、結果的に限りなく極道に近いアクションしか取れないジレンマを書いてみたいというのもありました。

※※※

「夜歩くプラネタリウム人間」が下敷きになったのは、なんだかよくわからないけどこの歌の二人は後ろ向きに全力疾走するパワフルさに惹かれるんですよね。

この世じゃだめなので、この世を儚んで歌う。
海図も持たないでサルガッソー越えようとする。
アガペー(愛)も忘れリビドー(性衝動)も捨ててとにかく歩く。
導くものは、プラネタリウム人間と水族館人間なので自分たちにしか見えない星空。

こんな有り様では行き着く先は破滅だとわかりきっているんですが、この歌の最後はなぜか意味不明にポセイドンが出てくるので「あれ?一周回ってなんとかなっちゃったのか?」とかもうほんとうに理解ができない。

その意味不明さが好き。

その好きを作品にしてみた形です。

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