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文化施設の訪問記録【2024年】※随時更新(7/20更新)


〔三日月宗近〕

会期  : 2023/12/23~2024/3/3
会場  : 東京国立博物館
訪問日 : 2024/1/6
備考  : なし
一言  : 新年にトーハクは良い。展示物からパワーをもらえる。新年パワー。三日月(優美)、わちゃわちゃ鶏(元気)、月の兎鎧(可愛い)、今年の干支(イエーイ)。面白いものたくさんみれました。

〔正宗十哲-名刀匠正宗とその弟子たちー〕

会期  : 2024/1/6~2024/2/11
会場  : 刀剣博物館
訪問日 : 2024/1/7
備考  : なし
一言  : 流派継承の流れが、よく知らない私にも何となく刀から伝わってきて良かった。
江雪左文字の鞘めちゃくちゃかっこいい。正宗、なかなか派手で好きかも。
西郷とか、家茂とかはともかく、はては夢野久作の名前まで出てきてびっくりした。夢野父が持っていた刀剣って、面白い由来だな。

〔ハッピー龍リュウイヤー!〜絵画・工芸の龍を楽しむ〜〕

会期  : 2024/1/2~2024/2/3
会場  : 静嘉堂文庫美術館
訪問日 : 2024/2/3
備考  : なし
一言  : 曜変天目を見たくて行った。思ったより小さいんだね。外側の釉薬が飲み口から高台に向かって大きくたれさがってるところがあって、そこのでろっとした質感が内側の神秘的な美とはギャップがあって、味わい深かった。あと説明文にわびさびの文化では評価が……、みたいなことが書かれていて、確かにとちょっと納得した。
 他の展示物だと、橋本雅邦の龍虎図屏風が良かった。龍は雲、虎は風というのがモチーフの定番らしいのだけど、強風が竹の強烈なしなりで表現されていたのは素晴らしいと思った。
 あと、ミュージアムショップが曜変天目推しで面白かった。魅力的だもんね、分かる。

〔古典的作品の再現者 芥川龍之介「宇治拾遺物語」から「千夜一夜物語」まで〕

会期  : 2023/11/4~2024/2/12
会場  : 田端文士村記念館
訪問日 : 2024/2/9
備考  : なし
一言  : 再話の小説が好きなので見に行った。芥川は博識だと思っていたが、想像よりも多くの書物、ジャンルも様々なものに触れていたのだと知ることができた。学生の頃は友人に作品などを自慢するくらいに闊達だったのに、年をとるにつれてそういったエピソードが減っていたことはどこか物寂しい。
追記  : 芥川の交友録一覧に川端、横光の名前を見つける。川端は関東大震災直後に芥川と吉原を見に、横光は芥川から上海行きをすすめられている。

〔常設展「文学の森へ 神奈川と作家たち 第3部 太宰治、三島由紀夫から現代まで」〕

会期  : 2024/2/6~2024/3/24
会場  : 神奈川近代文学館
訪問日 : 2024/2/11
備考  : 文ストコラボ
一言  : 三島や澁澤の展示が見たくて行った。文ストコラボにも参加し、缶バッチをいただいた。戦後に活躍した作家の作風や主要な作品について、一通り知ることができて面白かった。阿部公房の作品が読んでみたい。
追記  : 三島の展示に川端の名前あり。『盗賊』の序文を書いた、など。

〔生誕300年記念 池大雅――陽光の山水〕

会期  : 2024/2/10~2024/3/24
会場  : 出光美術館
訪問日 : 2024/2/12
備考  : なし
一言  : 池大雅が陽光の画家といわれる所以が実感できたと思う。解説文が明快で分かりやすかった。ふんふん感心しながら全部観賞できたし、自分好みの画を見つけるのも楽しかった。惜しむらくは文人画(南画)の醍醐味たる文と画の合一が私には理解できないことかな(この辺は勉強が必要)。
 青っぽい絵がやっぱ好きだな…今回だと『浅間山真景図』というやつが良かった。『騰雲飛濤図』もよかった。雲のもくもく感と波のしぶきを表す線とかすれ、濃淡が素晴らしい。『蜀桟道図』は奥にある険しい巨大な山々と手前にあるちっぽけな旅の一向の対比が良かった。馬がぽかぽか歩いてるんだけど、馬体をさらっと線で描けてるのがすごい。国宝『楼閣山水図屏風』は京極宮家からの嫁入り道具で一橋家伝来らしくて、徳川慶喜も見たのかなあと思ったり(見てなさそう)…。襖絵とか屏風より、小さい画のほうが好きかも。あんまり大きいと、大きさばかりに気をとられて良さが探せない気がする。
 とても綺麗で機能的な美術館。良い展覧会を見た。休憩場所の居心地も良くて最高。好きな美術館の一つになった。『山邨千馬図』の絵葉書を購入。『山邨千馬図』は描かれた由来が面白い(酔った友人に千匹の馬を描けと言われたとか)。
追記  : 『山邨千馬図』と国宝『十便十宜図』をかつて川端が所有。

〔常盤神社 義烈館〕

"水戸のすごいものあります"

会期  : なし
会場  : 常盤神社 義烈館
訪問日 : 2024/2/24
備考  : 常設展示のみ
一言  : 以前水戸を訪れた際に行けなかったので楽しみにしていた。"義"公・水戸光圀、"烈"公・徳川斉昭から義烈館というらしい。
 展示はかなり充実していたと思う。直筆の手紙や書など、見ごたえがあった。
 水戸黄門と呼べる人間は実は7人いるや光圀は生涯一人だけ手討にしたことがあるなど歴史的な側面から、光圀の人柄がうかがえるような手紙(鮎あげるよという内容など)が確認できてよかった。
 斉昭は筆跡に烈公と称されるような性格が表れていた。斉昭が鍛刀したという"八雲鍛"の刀剣から食事の際に拝んだ農人形などが展示されていて、水戸の発展のため様々な分野を支援していたことが分かる。天狗党党首・武田耕雲斎の刀剣と藤田東湖の書などもあって満足。企画展(?)として全国の絵馬が展示されていたのも面白かった。

〔伊豆近代文学博物館〕

雪が降った日だった

会期  : なし
会場  : 伊豆近代文学博物館
訪問日 : 2024/2/25
備考  : 常設展示のみ
一言  : バスで修善寺から河津まで下る途中で立ち寄れる、道の駅天城越えの中にある文学館。伊豆に関係する文学・作家を扱っている。お目当てはもちろん川端康成。直筆の原稿(伊豆冒頭、単行本のあとがきなど)・手紙(井上靖への穂高行お誘い、三好への原稿料について、梶井全集の相談など)や見たことのない写真(伊豆の文学碑完成時の記念写真。隣の女の子の振袖が川端に少し被っていてちょっと居心地悪そうな感じ)があって楽しかった。川端が実際に打ったという碁盤もあった。
 横光利一の『寝園』は伊豆が舞台であることをはじめて知った。何故か、直筆の手紙(水島治男宛、風邪なのでもう一か月延ばして(何かは分からない)という内容)も展示されており、予想外の巡り合わせにちょっと舞い上がった。
 梶井関連では、友人の中谷孝雄の原稿などがあった。
 最も充実していたのは井上靖であり、旧居まで見学することができる。井上靖が書いた「川端さんのこと」という文章の原稿もある。
 他にも伊豆に関係する文豪は多く、太宰、志賀、井伏、吉川、菊池、三島、幸田、若山などの名前が確認できた。三島が海で船に乗ってポーズを決めている写真の説明「スリリングな海のエロティシズムを楽しむ」が忘れられない。

〔ほとけの国の美術〕

会期  : 2024/3/9~2024/5/6
会場  : 府中市美術館
訪問日 : 2024/3/15
備考  : なし
一言  : 仏画に興味があったので行ってみた。期待以上に良かった。作品ごとに丁寧で親しみのある解説文が添えられていて、仏画初心者の私でも楽しむことができた。取り上げられているテーマも分かりやすく、よくまとまっていると感じた。鑑賞後はちょっとした体験(スランプや塗り絵)を行うことができるのも良い。今回の展示は前期後期で展示物が一部変わるのだが、チケットには2度目の来館時に半額になる割引券がついており、とても親切だと思う。
 展示物のなかでも、特に印象に残ったのは二十六夜町図。夜中、湖の向こうから仏が姿を現す様子を俯瞰で描いている仏画だが、仏の神々しさと人々の静かな期待と興奮が伝わってきた。また、叭々鳥図のジブリキャラっぽい感じも良かったし、石峰寺図のユニークでかわいい絵柄も面白かった。説明文の一部にある「古くから受け継がれてきた仏画の美しさ、神々しさに敬意を持ち、真摯に描いた」画家たちの技術と信念を感じられる良い展示でした。

〔芥川龍之介と美の世界 二人の先達ー夏目漱石、菅虎雄〕

会期  : 2024/2/10~2024/4/7
会場  : 神奈川県立近代美術館 葉山
訪問日 : 2024/3/17
備考  : なし
一言  : 広々とした空間で書簡や絵などをゆっくり鑑賞でき、展示物も多くて、2時間ほどかかった。美術館の立地も海に近くて、すぐ砂浜に降りられるのが良い。
 夏目漱石の描いた絵を初めて見たが、上手だし、教え子に送った葉書の絵は何とも可愛らしい。菊池宛に署名された『羅生門』の本という貴重なものも見られた。芥川の草稿も数が多く、見ごたえがあった。芥川と美術の関わりについて知ることは同時に白樺派の功績も知ることであり、いかに彼らが日本の美術に貢献したかを実感することができた。ちょっとしたレクもあり、クリアすると芥川の描いた河童のステッカーがもらえる。ショップで麻の葉模様の小皿を買った。
追記  : 川端関係では、ロダンの彫刻や十便十宜図の図帖を芥川が下島勲からかりて「比類ない傑作」(『芥川龍之介の回想』)と残したことなど間接的に関わりあるものの出品のほか、展示第五章「末期の眼」の説明文にて川端について直接触れられている(主に同名随筆について)。第五章では川端が懇意にしていた古賀春江(上野在住中、犬を介して知り合う)の絶筆の絵『サーカスの景』が展示されていた。大きな絵で、全体的に暗い画面構成、キリンが宙に浮いていたり、虎が祈りのポーズをしていたり(その虎の周囲だけ明るくぼんやりしている)と、不安になる雰囲気だった。

くらげが流れ着いていた

 美術館から1キロ離れたあたりは横光が一人目の妻であるキミと住んだ借家があった場所であり、周辺を散策し、森戸神社で御朱印をいただいた。

〔『シュルレアリスム宣言』100年 シュルレアリスムと日本〕

会期  : 2024/3/2〜2024/4/14
会場  : 板橋区立美術館
訪問日 : 2024/3/30
備考  : なし
一言  : シュルレアリスムについて興味があったため行ってみた。日本におけるシュルレアリスム発展の流れを大まかに掴むことができた。伝来、発展、拡散、戦争下の弾圧、支配下の抵抗。展示品は後半に向かうにつれて、鮮やかさを失い、色調暗く、鬱屈としてくるようだった。シュルレアリスムは日本の昏い世相や精神性が反映された芸術であると感じた。一番印象に残ったのは小山田次郎の『手』。手のひらに目、全体的に引っ掻き傷がつけられたキャンバスは痛々しい。見ようによってはその傷がピアノ線のように手に絡み付いているように見えて、何かに従わされているような印象も受けた。
追記  : 川端と交友関係にあった古賀春江の『鳥籠』の展示があった。日本にシュルレアリスムがもたらされる前、1929年に公開されたもので、古賀はモダリズムとシュルレアリスムを融合させたような作風だと紹介されていた。奇天烈かつおどろおどろしいものが多い展示品の中でも、子どもの夢のような、ファンタジー感があった。

〔地下鉄博物館〕

入場券と交換できる、むかしきっぷ

会期  : 常設展示
会場  : 地下鉄博物館
訪問日 : 2024/3/31
備考  : なし
一言  : 子ども連れが多かった。実際の車両の展示や運転体験、模型の運転など子どもが喜ぶ内容が充実しているほか、展示物の解説文は本格的で、内容がしっかりしており、勉強になった。

〔芥川龍之介展ー文庫目録増補改訂版刊行記念ー 同時開催:川端文学の名作Ⅰ〕

会期  : 2024/4/6~2024/6/8
会場  : 日本近代文学館
訪問日 : 2024/4/6
備考  : なし
一言  : ショーケース内に原稿や本がところ狭しと敷き詰められており、いつもの1.5倍の展示物があるように感じた。
 葉山の展示で紹介されていたものの実物のいくつかを直接確認できた(マリア観音や遺書の一部)。
 読了した日付と簡単な感想などの書き入れ、アンカット本の状態や読み癖から、当時の芥川の関心事が推測できるというのが興味深い。
 直筆原稿も膨大だが、画も多い。どれも上手いが、なかでも一番印象に残ったのは次男に当てた絵葉書(橋の写真)に記者を描き足しているもので、ユニークで面白い。のっぺらぼうなど妖怪ものも独特の怖さがある。
 夏目漱石の自筆の手紙は年長らしい、指導力のある内容で感嘆した。まさか森鴎外と交流があったとは知らなかった。斎藤茂吉が芥川に宛てた最初と思わしき手紙で「芥川龍之助」となっており、知り合いはじめだから知らなかったのだろうか。こういう推測も、面白い。
 同時開催の川端は、作品ごとの関連物の展示であり、これまで見たことのあるものが多かった。伊豆の踊子は川端本人が当時はあまり評価されなかったと書き残したが、実はそうでもなかったことが意外であった。同作を誉めた鈴木彦次郎は横光のナポレオンと田虫も同じ雑誌で誉めていて微笑ましい。禽獣では、萩原朔太郎の書簡が展示されており、同氏の禽獣への関心がうかがえる。たしかに好きそうだなと思う。禽獣のときの担当編集はのちの上林暁であり、待ちに待って一晩でできた作品だという。名人は正宗白鳥が誉めており、これまたらしいと感じた。川端の読んだ名作の展示が興味深く、正宗白鳥、徳永直、横光利一、谷崎潤一郎、尾崎士郎、瀧井孝作、徳田秋声が紹介されていた。芥川と川端の関係も展示があった。個人的には川端が初めて会った作家である南部修太郎と交流のある芥川という視点で一度、関係をさらってみたい。

 帰りは2キロほど歩いて、横光利一の文学顕彰碑を見てきた。横光の家の石畳が残されている。
 近くには坂口安吾の門柱もある。


〔子どもの本の夜明け 帝国図書館展〕

会期  : 2024/3/26~2024/6/23
会場  : 国際子ども図書館
訪問日 : 2024/4/7
備考  : なし
一言  : 明治から昭和にかけての児童文学の変遷について、分かりやすくまとめられていた。帝国図書館と文豪の関わりについても紹介されていて興味深かった。展示は一部を除きいて写真撮影OKであり、写真展示会のおさらいができるミニガイドが頒布されているのが助かる。
追記  : 図書室に川端の『級長の探偵』の復刻本を見つける。

〔川瀬巴水 旅と郷愁の風景〕

会期  : 2024/4/5~2024/6/2
会場  : 八王子市夢美術館
訪問日 : 2024/4/13
備考  : なし
一言  : 風景画が好きだと自覚できた。なかでも構図の美が感じられるものが好きだ。橋や道が曲線を描いて、画面手前から奥に向かって遠近法により先細ってゆく様子など実に良い。川瀬巴水は月夜、水辺、雨を好んだというが、それも私好みだ。巴水が描く人は画面のバランスをとるための点でありながら、それが自然と調和して成り立っているところが良い。降り注ぐ雨が太さの均一な直線ではなく、中央が膨らみ両端は先細る、それこそ彫刻刀で木を削ったような版画の特徴も味わい深い。巴水と版元の絆、版画の衰退と繁栄、スランプと円熟。版画にかけた一生を、まざまざと作品で見せつけられた展示だった。

〔吉屋信子記念館〕

会期  : 一般公開日が年度により異なる
会場  : 吉屋信子記念館
訪問日 : 2024/5/6
備考  : なし
一言  : 偶然通りかかって、お邪魔させてもらった。明るく開放的で良いお家だった。

〔大和ミュージアム〕

会期  : 企画展は見ず、常設展のみ
会場  : 大和ミュージアム
訪問日 : 2024/6/1
備考  : なし
一言  : 戦艦大和やその他軍艦について、知ることができるミュージアム。時間が足りなくて展示は流し見るのが精一杯だったので、また機会があれば訪れたい。

〔てつのくじら館〕

会期  : 企画展は見ず、常設展のみ
会場  : てつのくじら館
訪問日 : 2024/6/1
備考  : なし
一言  : 本物の潜水艦の中に入ることができる博物館。こちらもあまり時間がなくて、展示はささっと見て終わってしまった。潜水艦の中は想像よりも狭く、任務に従事する人々の忍耐と苦労が忍ばれた。

〔福山城博物館〕

会期  : 企画展は見ず、常設展のみ
会場  : 福山城博物館
訪問日 : 2024/6/1
備考  : なし
一言  : 福山の歴史から体験型コーナーまで大変充実した展示内容の施設だった。時間がなく、体験は火縄銃体験などはできたかったのが本当に残念。

〔特集展示「戒壇院の夏安居 Ⅱ」〕

ミュージアム前にある東大寺大仏さま実寸大の手

会期  : 2024/5/16~2024/7/17
会場  : 東大寺ミュージアム
訪問日 : 2024/6/7
備考  : なし
一言  : 常設展からして、重要文化財から国宝のオンパレード。奈良の文化の深さを思い知った。この前後の寺社巡りも含めて、一生分の仏像を見た気がする。

〔今東光資料館〕

会期  : 2024/3/16~2024/9/8
会場  : 今東光資料館
訪問日 : 2024/6/8
備考  : なし
一言  : 学生時代からの川端康成の友人であり、新感覚派のうちの一人でもあった今東光。展示にも勿論、随所に川端康成の名前がある(新思潮に今を参加させないなら自分も出ないと菊池寛に直談判した話など)。意外なことに交友関係のところに横光利一の名前もあった。『金の話』という随筆が良いと褒めていたようだ。直木にも借りがあったり、吉川を激推ししていたなど、文士との関わりは多い。今は川端に対して並々ならない友情を感じていたようで、肉声が聞けるコーナーでは一部川端のことを話しているものがある(かなり褒めている)。中尊寺貫主になったのち、中尊寺に訪れた川端とともに歩く写真があった。

〔川端康成と王朝文学ー『源氏物語への思い』ー〕

会期  : 2024/6/8~2024/7/15
会場  : 川端康成文学館
訪問日 : 2024/6/8
備考  : なし
一言  : 源氏物語と川端康成の関わりを展示。川端が学生時代や戦中に源氏物語を耽溺していたことや源氏物語の訳を試みようとしていたことは知っていたが、実際のところ源氏物語の内容に触れた話はほとんどないことは知らなかった(浮舟について触れたくらいのようだ)。これから訳にとりくもうとしているんです、と言って各帖の名称だけ並べて書いたものを見せたというエピソードが可愛い。『山の音』『千羽鶴』には源氏物語の影響がみられるとのことで気にしつつ読みたい。
 コロナで長らく使用禁止となっていた映像装置が使えるようになっており、時間の許す限り堪能した。まだすべての映像を見られていないので次の楽しみとしたい。
 常設展は少し展示物の配置が変わったようだった。お気に入りの展示物(雑誌『ひまわり』エッセイ「美しい言葉」国語の教科書への憂いが綴られている)が奥にいってしまい、字が読めなくて少し残念。川端康成青春文学賞入賞作品集二冊をいただく。

〔文豪×演劇―エンパクコレクションにみる近代文学と演劇の世界〕

会期  : 2024/6/7~2024/8/4
会場  : 早稲大学坪内博士記念 演劇博物館
訪問日 : 2024/6/30
備考  : 文アルタイアップ

一言  : 企画展は二室に分かれ、メインは一階の展示室のようだったが、室内の展示ケースには所狭しと展示物が置かれ、物によっては十行ほどにもになる説明文のパネルがついており、とても見応えのある展示だった。常設展では演劇発展の歴史が分かるため、時間があるならば常設展から見ていくのがおすすめだ(その後に企画展を見ると理解度が深まる)。
 一階廊下に募金をすると坪内逍遥の映像が見られるからくりがあるので、これもおすすめ。また、時間帯によってはミニシアターで昭和期の映画を見られる。このときは『黒蜥蜴』を上映していた。
追記  :川端関係では『浅草紅団』の復刻本。梅園龍子(かつて川端が支援した)の写真。『雪国』ポスター。横光関係では「男と女と男」という題の台本とプログラムが展示されていた。

〔2024年度春季企画展 カフカ没後100年記念 「変身」するカフカ 展〕

会期  : 2024/4/26~2024/9/16
会場  : 早稲田大学 国際文学館(村上春樹ライブラリー)
訪問日 : 2024/6/30
備考  : なし
一言  : 演劇博物館の隣にあったため入ってみたが、想像以上に良い施設だった。様々な場所に本棚および本と椅子が置かれ、来館者は自由に読書を楽しむことができる。大変居心地の良い空間であり、カフェスペースもあるため、いくらでも長居ができてしまいそうだ。
 カフカの企画展も良かった。『変身』を読んだことがなかったのだが、展示室内に文庫本や漫画、近くに椅子があり、手軽にカフカに触れることができた。『変身』を知人の前で朗読したとき、カフカは笑いながら話したというが、とてもそんな内容ではない。私個人としては認知症の老人とその家族に当てはめて考えてしまい、しばし憂鬱な気分になった。
 カフカの『変身』に影響を受けた文学者も紹介されており、中島敦や村上春樹、手塚治虫、最近だとアニメ化された『怪獣8号』の作者およびその漫画が展示されていた。実に多様。アンケートに答えると企画展イメージのシールがもらえる。記念にいただいた。
 この施設そのものが気に入ってしまったため、今度は読書をするためだけに訪れたいと思う。

〔刀剣乱舞で学ぶ 日本刀と未来展 ‐刀剣男士のひみつ‐〕

会期  : 2024/7/10~2024/10/14
会場  : 日本科学未来館
訪問日 : 2024/7/14
備考  : 刀剣乱舞コラボ
一言  : まず、壁面に刀剣男士が勢揃いした巨大なポスターを見て興奮した。展示は文字解説よりも体験中心に構成されており、一つずつ体験するには列に並ぶ必要があるので時間がかかるが、展示の総量としては物足りなさを感じた。今剣の展示はボイスも相まって涙腺が刺激された。物を伝える、想いを引き継ぐということを深く考えていかねばならないと感じた。最後のオリジナル刀剣男士作成はとても面白い企画だと思った。推しと並べられるのも良いし、別の人が作った刀剣男士をスクリーンで見ることができるのも良い。お土産ではバインダーを購入した。参考になるからは分からないが、私は一通り展示を確認してから、空いてる体験があり次第、並ぶもしくは展示を見ていた(一つ目の部屋ははじまりのムービー直後は混むが、しばらくするとがら空きになるため、タイミングによってはゆっくり展示を見ることができる)。しかし、刀身を冷却する体験、研ぐ体験、刀を振るう体験は体験時間の長さのためか、どのタイミングでも混雑しており諦めた。

〔没後25年記念 東山魁夷と日本の夏〕

ポスターの写真を撮り忘れた
展示中の奥村土牛『水蓮』をモチーフとした和菓子

会期  : 2024/7/20~2024/9/23
会場  : 山種美術館
訪問日 : 2024/7/20
備考  : なし
一言  : 山種美術館所蔵の『京洛四季』を見るのはこれで二度目であり、しかし何度見ても惚れ惚れする作品だ。東山魁夷が師である結城素明から聞いた「心を鏡のようにして自然を見ておいで」という言葉が美しいのは、東山の画が美しいからだろうか。「時の前を流れて行くものこそ生である」という東山の言葉が如何にも画家らしいと感じた。普通ならば時の中に生があると考えるのではないだろうか。自然の四季のスケッチを続けた東山の観察眼の片鱗を感じた気がした。本展のメインである『満ち来る潮』は金箔銀箔などを用いた豪壮な作品だった。完成品に至るまでのスケッチや小下図も公開されており、僅かながら制作過程の一端を感じることができる。唐招提寺御影堂の壁画『濤声』の習作を見られたことが個人的にはうれしい。唐招提寺の御影堂の壁画は今年に見に行ったばかりだった。習作と完成品では色合い風合いがかなり異なった。ここからあの素晴らしい壁画にどう近づいていったのかは気になるところだ。しかし『濤声』も『満ち来る潮』も、同じ日本の海を描いた作品なのに感じられるものは少し違ってくるところが面白い。ちなみにどちらも岩の上に残った海水が岩の溝に沿って流れ落ちる部分が好きだ。
 東山以外の作品では、並木秀俊の『華火』が良かった。截金の技法を用いて描かれた花火は派手でありながら品があり、まるで実際に音が聞こえてくるかのようにリアリティがあった。自分の忘れてしまったはずの記憶の中の花火が思い起こされた気がして感動した。
追記  : 東山が『京洛四季』を手掛ける契機となった川端の「京都は今描いといていただかないとなくなります」という関係性が紹介されていた。信州・安曇野で撮影した写真(1970年/井上靖・川端・東山)の写真が展示。川端が井上に信州行きを誘う手紙は伊豆近代文学博物館で見たなと回想。また川端に直接の関連はないが、長良川を描いた作品が別作家で二作品あり(『流離の灯』加藤栄三、『鵜飼』川合玉堂)。長良川、鵜飼と言えば川端の『篝火』が思い浮かぶ。岐阜は初恋の人・初代と結婚の約束をした地だった。