2021年春、Coupaの日本での取り組みが変わった(2022年6月)
「最強のフライホイールがあるからだ- Coupaの4割成長のビジネスモデル- (2022年6月)」では、米国の状況を取り上げました。では日本市場はどうなっているんだろうか、「成長のフライホイール」がどう回り始めているのか、それを後半に整理してみます。
1. セールスフォースなどの日本仕掛け人を戦略パートナーにCoupa株式会社設立
転機は2021年4月に訪れました。小関 貴志氏を社長にCoupa株式会社が設立されたのです。直接の契機は、米国での買収に即して、日本でもCoupa Software合同会社とLLamasoft Japanを統合した新体制をスタートすることでした。しかしCoupa社内の単純な統合には留まりませんでした。ジャパンクラウドが新会社Coupa株式会社の合弁戦略パートナーとなったのです。
セールスフォース、コンカー、マルクト、もはや日本に無いことが考えられないのIT企業であることは、誰にも同意いただけると思います。
ところで皆さんは、これらの日本進出には共通の仕掛け人がいることを果たしてご存じでしょうか? ベンチャーキャピタルのサンブリッジグループ-日本オラクル初代会長のアレン・マイナー氏が創業した組織がそれに当たります。アレン・マイナー氏は、セールスフォース創業者のマーク・ベニオフと協力し、セールスフォースを2000年に日本進出させ、その際の手法を活かして10社以上の米企業を日本市場に進出させた”すご腕”です。私も数年前に講演を聞く機会がありましたが、非常に興味深い内容でした。
Coupa株式会社(日本法人)を合弁設立したジャパンクラウドは、このサンブリッジグループの系列です(アレン・マイナー氏もChairmanに名を連ねています)。ということは、次の「もはや日本に無いことが考えられないのIT企業」の誕生をわれわれは目の当たりにするのかもしれません。
2.Coupa株式会社はとても魅力的な会社です
Coupa株式会社(日本法人)の代表取締役社長に就任された小関 貴志氏もジャパンクラウドの出身です。
そしてご就任以来、Coupa株式会社が際立っているなと思えるところがいくつかあります。私が把握している範囲ですが、以降に3つ整理してみます。
(1).私はこう思う、こうしたい:トップが自ら方向性をメッセージするすがすがしさ
Coupa株式会社で、まず第一に思い至るのがこの点です。日本に進出している購買ソリューションは複数ありますが、「われわれは日本市場で何をなしたいのか」の”志”をホームページなどで表明しているのは、Coupa株式会社だけしかありません。他社は、本社のホームページを部分的に日本語化した程度。日本市場に対して”顔が見えない/意思を見せない”姿勢のままです。様々な社内事情があるにせよ、社外から見れば、この状態は興ざめです。
対してCoupa株式会社の興味深いところは、経営トップ自身が、日本市場をどう把握し、そこで何をしていくつもりかを、米国本社(HQ)施策の単なる受け売りではなく、ご自身の考えに基づいて率直かつ判りやすく述べているところにあります。例えば、Coupa株式会社のホームページには、以下に抜粋した「社長メッセージ」が掲載されています(同様なものは、他社にはありません)。この”熱量”の違いが、Coupaを日本市場で際立たせる一因と思います。何かやってくれそうだとは思いませんか。
なお、7月14日(木)のCoupa Japan Symposium2022では、小関社長の40分間のオープニング講演が予定されています。そこで語られる新たなメッセージは、とても楽しみです。
(2).独自サイト coupa.co.jpでの迅速で柔軟な独自性の発揮
日本市場対応ももう1つの事例が、独自サイトcoupa.co.jpの設置です。ITベンダーで各国法人が独自ドメインを持つことは、通常はありません。しかしCoupa株式会社は、敢えてこれを行いました。なぜなのでしょうか。
Coupa株式会社(日本法人)の設立に際して、様々な社内課題の洗い出しが行われたと想定します。その1つが、グローバル共通のcoupa.comへの情報登録の煩雑さであっただろうことは、社外の私にも感じられました(課題だなぁと思っていました)。しかし、いわゆる”外資系あるある”で、本社にものを言うのは簡単でありません。
しかし就任3か月後ぐらいに小関社長と別件でお話をした際に、「あぁ、あれは独自ドメインで解決します」とあっさり表明されました。そして程なく現在の日本法人独自サイトcoupa.co.jpが立ち上がりました。
的確な問題把握、迅速な対応、やり遂げてしまう剛腕ぶり、そしてその裏にある日本市場への「熱量」、これらはCoupa株式会社が日本市場で何かを起こしそうな期待感をいっそう高めます。ちなみにこの独自サイトcoupa.co.jpは、最新かつ充実した日本語での情報源として有益です(日本語はやっぱり楽です)。
(3).2社合同後の社内体制の整備(Team Building)も完了
それとともに、Coupa株式会社の社内も「なにかいい感じ」を感じます。組織形成の「タックマンモデル」に即すと、以前のCoupa は混乱(Storming)期が少し長引いている気がしていました。実績あるメンバーが集まると「俺って、こんなにすごいんだぜ」の自己主張の段階が起こるのはよくあります。しかしやがて相互理解が進み、”あうんの呼吸”で組織が動くようになるというのが、タックマンの理論です。
ところが現在のCoupa株式会社は、社外の目ですが、とても働きやすそうなのです。お会いしている小関社長中心の話になってしまいますが、一例をあげると、私がCoupa社員の方とテレビ会議する初回タイミングには、必ず小関社長が同席していらっしゃいます。少し経つと"あとはよろしくね"的に部下の方に任せて退出されるのですが、目を配られている様子が感じられます。経営トップが全般に目配りをしたうえで、具体的には担当がどんどん進めていける…これって、ものすごく働きやすい環境ではないでしょうか。しかも背後には、優れたビジネスモデルである「成長のフライホイール」があります。働きやすくて、働き甲斐がある(成果が上がりやすい)会社って素敵だなと思います。
(4).整理すると3点、すなわち…
1).成長のフライホイールという確約されたアドバンテージがある
「成長のフライホイール」で仕事の成功が見えている
2).日本市場をこう変えようという「熱量」がますます増した
日本市場に対する”志”、独自の活動を進める気概で進んでいる
本社(HQ)の言うなりではない独自性も保たれている
3).やる気がある人には働きやすくて、働き甲斐がある会社と思う
3.日本でも「成長のフライホイール」が回り始めたCoupa
(1).以前は「成長のフライホイール」の回転が止められていた
とは言っても「成長のフライホイール」が日本市場で回らなければ、社内組織の整備が進んでもどうにもなりません。しかし以前は「成長のフライホイール」の回転が始まらない状況がありました。
2019年7月の「SAP Ariba Live Tokyo」の開催は、当時のAribaトップの佐藤恭平氏の就任直後に当たり、かつSAPがIntelligent Spend Managementを日本市場で打ち出したタイミングでした。当時のAribaはオープンで私も出席OKだったのですが、イベントでの佐藤事業部長の講演には従来のトップにない”凄み”がありました。
イベント後の展開も鮮やかでした。目を引く導入事例の報道が相次ぎ、さらにはSAPブランドで官庁連携の動きが伝わるなど、付け入る隙が見えない「Aribaの天下」の雰囲気でした。「成長のフライホイール」を有する企業への対抗戦略の1つである「回させない」の好例が展開されたのです。
(2).条件が整い、「成長のフライホイール」が回り始めた
しかしコロナ禍を始めとする様々な事態がありました(詳細はちょっと控えます)。さらにCoupaも日本市場での”仕込み”を着々と進めていました。その結果Coupa株式会社が設立されると、”仕込み”も含めたCoupaの成長のフライホイールが、日本でも遂に/一気に回り始めた、それが現時点です(7月14日のSymposiumでぜひ確認を)。
4.人気ドラマの初回を見逃していいか- COUPA Japan Symposium 2022の残り半分の宣伝
Coupa株式会社は2021年4月の設立です。しかし昨年はコロナ禍でSymposiumの開催が見送られました。ということは、今年が設立以降最初の所信表明となります。来年は「昨年はこう申しましたが…」の雰囲気が不可避と思います。つまり今年を逃すと、人気テレビドラマの初回を見逃すような”残念なこと”になってしまうのではないでしょうか。
7月14日のSymposiumは、導入先も増えたCoupaの最新状況を把握できる絶好の機会です。
加えて、翌7月15日はSAP SAPPHIREで購買・サプライチェーン領域が取り上げられます。購買領域のITソリューションでAribaとCoupaの両方を検討せずに社内稟議をあげると、いまや「片手落ち」の誹りは免れません。
その意味からも、購買ソリューションの現況を知るに見逃すことができない絶好の機会が7月半ばにやってきます!!
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