「恋の嵐」

ねるとん。

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駅前の建物の二階にある喫茶店。
初老のマスターがおり、ウエイトレスとして働く今日子、若い男性スタッフ村上、の三人で営業しているお店。常連客のマツダ。

マツダの独白。
ウエイトレスの今日子に想いを寄せていたが、勇気が出ず、外堀を埋め続ける日々だったが、昨晩、占い師に「進む時」と言われた。今日こそ、進む日だ!
と、立ち上がった時、今日子の視線は少しズレていて、入り口の方を見ている。「たっくん」と呟く今日子。
入り口にはスーツケースを引いた20代後半と思わしき男が立っていた。

恥ずかしくなりトイレに向かうマツダ。
戻ってくると、男と今日子は二人で話し込んでいる。
席を少し寄せて聞き耳を立てるマツダ。
どうやら二人は恋人同士であった過去があり、男は今日子を置いて東京に出たが、そのうち、自然消滅。何年かして夢を諦めて戻ってきた、というドラマチックな展開を見せていた。

最初は今日子も「何しに戻ってきたんだ」と険悪で、マツダは「しめしめ」と思っていたが、そのうち雲行きが怪しくなってくる。
「ずっと待ってたんだよ」など。
マツダ独白「嘘だろ、そのパターン入るか?」
昨晩の占い師の言葉が蘇る。
占い師「いくつもの障害が現れますが、進むことを諦めてはいけません。今がその時です」
マツダ「今がその時!」
と、思い切って振り向く。
同時に「ちょっと待ってください!」と若い男の子スタッフ、村上が二人の側に立っている。
村上「僕、今日子さんのことがずっと好きでした」
マツダ「まじで?」

誤魔化すマツダ。
どうやら、村上くんは今日子に話を聞いており、男に怒っているようだ。
「今日子さんはずっと待ってたんですよ!」
謝り始める男。
振り上げた拳をしまえず、そのまま席に座る村上。
マツダ「座るんかい」
村上「で、どっちを選ぶんですか」
今日子「……」
松田「悩むんかい」

占い師の言葉が蘇るマツダ。
占い師「ねるとん……」

マツダ「ちょっとまった!」と立ち上がるが、ちょうど三人とも出て行ったところだった。
座るマツダ。
マスターが話しかけてくる。
「行かなくて良いんですか?」
マツダ「……行ってきます」
マツダも喫茶店の外へ。

三人で話しているところへ追いつくマツダ。
ついに告白する。
今日子「……お名前……」
めげない。
マツダ「マツダです。いつも見てました」
引いている村上、男、今日子。
マツダ「ねるとん!」
握手を差し出すマツダ。

今日子「マツダさんはないです」
マツダ「……すいませんでした!」

「あ、まだお会計が、」など言って退散するマツダ。
店に戻るとマスターが「早かったですね」など。

マツダ「マスター。僕はもうこのお店に来れません。マスターの入れてくれるコーヒー、美味しかったです。」
マスター「インスタントですけど」
マツダ「最後に、名物のパフェ、食べて良いですか?」
マスター「わかりました」

コーヒーを飲むマツダ。
視線の先、駅前のロータリーではまだ三人が話している。
巨大なパフェが来る。
マツダ「これは一人では食べきれないな」

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おやすみなさい。


読んでいただきありがとうございます。血が沸騰していますので、本当にありがとうございます。