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初心者のための機動戦士ガンダム兵器解説『MS-07H グフ飛行試験型』

●開発経緯

 ジオン公国軍は地球侵攻作戦に向けて、汎用型のMS-06Fをベースに地上戦用に改修を施したMS-06Jを開発しましたが、早くもその性能に限界を感じ、全面改修が行われることになりました。

 60%を超える新規パーツを用いて完成した機体にはMS-07の型式番号が与えられ、制式採用されることになります。しかし、予てより問題視されていたMSの地上での移動力、展開力の低さは克服されておらず、要撃爆撃機ド・ダイYSとの連携によって、一定の解決を図ることになりました。

 MS-07について、詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

 ただ、人的資源の乏しい公国軍は航空機パイロットを別個に用意する余裕はなく、なんとかMS単体でこの問題を解決できないかと考えます。そこで計画されたのがMSそのものに飛行能力を付与しようというものでした。

●開発の段階でMSの汎用性は犠牲に

 計画が承認されると、アイザック・ウーミヤック大佐を中心とした開発チームが編成され、サイド3の29バンチコロニー工業地区にて、開発がスタートします。

 その時点で既にMS-07Aの量産が始まっていたため、試作機であるYMS-07Aが3機、YMS-07Bが1機、テストベッドとして、使用されることになりました。

 コロニー国家であるジオン公国は航空機開発技術を持っておらず、航空機ですら大推力で強引に飛翔させていたほどなので、ヒト型のMSであれば、同様の方法を選択せざるを得なかったのは自明です。

 ランドセルにはメインエンジンとなる熱核ロケットエンジンのほかに可変式の整流板を設置し、腰部に第2エンジン、脚部にも大推力のロケットエンジンが設置されています。

後ろから見ると、ベース機との違いが分かりやすいと思います。

 また、安定した飛行を目指すため、両腕のマニピュレータが5連装75mm機関砲に換装されたほか、両脚部には180mmロケット砲が装備され、兵装は全て内装式となっています。

 これは設計の段階で既にMS-07の高い近接格闘能力だけでなく、MSの持つ汎用性自体を捨て去っていることを意味し、計画の規模がそれほど大きいものではなかったことが窺えます。

●開発は難航を極める

 4機の試作機が完成すると、実地試験を行うため、キャリフォルニア・ベース、テストセンターを経て、アリゾナにあるフラットネイル空軍基地に移送されます。そして、2週間の調整を行った後、ビリー・ウォン・ダイク大尉をチーフとした6名のテストパイロットチームによる飛行試験が開始されます。

 4週間のうちに4機で合計38回の飛行試験が行われましたが、結果は長距離ジャンプの域を脱することはできず、運動性は劣悪で、機体重量の問題から航続距離も短く、とても実用化できるものではありませんでした。

 ドロップタンクを増設したMS-07H-2へと改修作業も行われましたが、更なる機体重量の増加を招き、若干の改善は見られたものの、根本的な解決には至りませんでした。

●空中爆発事故により計画は中止

 計画期間が終了した後も規模を縮小することを条件に研究の続行が承認されます。フラットネイル空軍基地には比較的良好な試験結果を出していたYMS-07Aをベースとした3号機とYMS-07Bをベースとした4号機のみが残されることになりました。

 そのうち4号機は脚部推進エンジンを新型に換装し、腰部には飛行を安定させるベントラルフィンを増設、ショルダーアーマーも有翼型に変更されたMS-07H-4に改修されます。

 これにより、滞空時間の延長や運動性に改善は見られたものの、エンジンの調整に難航していました。そして、テスト10日目に無理な飛行に機体が耐え切れず、テストパイロットのフランク・ベルナール少尉を乗せたまま、空中爆発事故を起こしています。

 事故後、計画は中止され、MS-07にはド・ダイYSが配備される形で収束していくことになります。

●開発計画のその後

 H型の試験データを元にツィマット社はMS-09の開発に乗り出すことになり、MSの飛行能力付与を諦め切れないジオニック社の技術者はサイド3で秘密裏に研究を続行し、後のMS-07H-8開発に繋がります。

“MS-07H グフ飛行試験型”

●スペック

全高:19.3m
頭頂高:18.8m
本体重量:63.9t
全備重量:76.6t
ジェネレーター出力:1,034kW
スラスター総推力:50,875kg
装甲材質:超硬スチール合金
主な搭乗者:ビリー・ウォン・ダイクほか公国軍テストパイロット

●基本武装

○5連装75mm機関砲
 両腕のマニピュレーターの五指が砲身となっています。前腕部に弾倉が増設されたことで、装弾数が増加しています。空中からの射撃に特化し、近接格闘は想定されておらず、汎用性は低下しています。

○180mmロケット砲
 両脚部に2基ずつ装備されています。資料によっては記載されていない場合も多く、詳細は不明です。

開発の段階から“飛行可能な特殊任務用MS”となっており、最初から汎用性は失われていました。

●戦後、連邦軍によって運用される

 戦後、連邦軍に接収され、コックピットがリニアシートに変更されるなどの近代化改修を受けた上で少数が生産されています。脚部推進エンジンは熱核ジェットエンジンに換装され、MS-09のようなホバー走行に改められていました。

 U.C.0087年5月にジャイアント・バズを携行して、ジャブロー防衛の任に就いている姿が確認されています。

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