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初心者のための機動戦士ガンダム兵器解説『MS-07 グフ』

●開発経緯

 ジオン公国軍は、コロニー落としの後の地球占領作戦に投入するため、当時主力兵器だった“MS-06”を地上戦用に改修した“MS-06J 陸戦型ザクII”を開発しました。

 MS-6Jについて詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

 しかし、本来宇宙用であるMS-06を改修するにも限界があり、その性能は満足できるものではありませんでした。そこで、MS-06をベースとしながらも、地上戦用として再設計された“MS-07計画”と“MS-08計画”が進められることになります。

●MS-07計画

 ジオニック社は、MS-06Jをベースに“YMS-07A プロトタイプ・グフ”を開発しました。空間戦用のパーツを完全に取り除き、地上戦に最適化したため、60%を超える新規パーツが使用されています。

 MS-07に求められたのは、「地上戦能力の強化」と「対MS格闘戦能力」で、主にラジエーターの強化や機体の軽量化、高出力ジェネレーターの搭載、装甲の改良による耐弾性の向上が図られました。

 また、コックピット周辺の装甲の強化やシールドを手持ちあるいは前腕部のハードポイントに装着する形に変更し、両肩部にスパイク・アーマーが装備されました。

●SFSの前身

 地上戦におけるMSの運用で問題視されていたのが展開力でした。そのため、“ガウ級攻撃空母”や“ファットアンクル”が開発されましたが、コストの問題から大量に用意することはできません。そこで考え出されたのが“要撃爆撃機ド・ダイYS”との連携でした。

 ド・ダイYSは、対地対空で使用できるミサイルランチャーを装備した爆撃機でしたが、ペイロードに余裕があったため、MSを上に乗せて、輸送や空中戦を行わせようとしたのです。MSを航空機に乗せるというアイデアは、後にSFS(Sub Flight System)と呼ばれ、普及していくことになります。

 MS-07は、このド・ダイYSとの連携を想定したため、MS-06では指揮官機にのみ装備されていたマルチ・ブレード・アンテナが標準装備されることになりました。

“要撃爆撃機ド・ダイYS”

●MS-08計画

 MS-07を開発したジオニック社に対し、ツィマット社はMS-06Fをベースに“YMS-08 高機動型試作機”を開発しました。

 MS-08はMS-07と同様、ラジエーターの強化や機体の軽量化、耐弾性の強化などが図られたほか、「ゲリラ戦」や「ジャンプ能力の強化」が重視されていました。

 公国軍は当初、コロニー落としでジャブローを破壊した後、地球を占領する計画がありました。そして、総司令部を失った連邦地上軍の反攻はゲリラ戦となることを予想し、それを迅速に鎮圧するため、機動性の向上を重視したわけです。

 また、MSとの格闘戦も想定し、背部と脚部に新型推進エンジンを搭載することで、素早く小刻みな短距離ジャンプの実現を目指しました。

 しかし、出力不足から想定していたジャンプ能力の強化は望めず、燃費やコストという課題もクリアできなかったため、5機が試作された時点で、YMS-08の開発は中止されてしまいます。

 ただ、開発コンセプト自体は非常に評価され、MS-08計画はMS-07計画へ統合されることになります。

●YMS-07Bの完成

 第1期地上用MS開発計画はMS-07計画に一本化され、量産化に向けて更なる改良が加えられます。

 流体内パルスシステムの技術向上により、機体内部のスペースに余裕ができたため、試作3号機の両腕部には近接格闘戦用の固定武装が設けられることになりました。

 また、地上戦において最も損傷するリスクの高い脚部の動力パイプを内装し、膝関節部には保護カバーも設けられました。

 さらにMS-08計画で開発された新型推進エンジンを背部と脚部に搭載したことで、ジャンプ能力も強化されました。高出力ジェネレーターの搭載や各種補助デバイスの改良によるエネルギー効率の向上も相まって、高い運動性を獲得することになります。

 その他、外装の整理が行われた後、“YMS-07B”として完成し、その試験を兼ねて、一部が第三次降下作戦で実戦投入されました。

 劇中でランバ・ラルが搭乗した機体がこのモデルで、対MS白兵戦用武装として、試作型ヒート・ソードが試験的に装備されています。

●量産化

 YMS-07Bは、MS-06Jの生産ラインを転用し、ほぼそのままの形でグラナダやキャリフォルニア・ベースで量産され、主に北米やアジア方面に配備されました。

 MS不足を訴え、一刻も早い補給を求める前線の声に応える形で、当初は量産体制が整っていなかった固定武装を持たない、両腕とも通常のマニピュレーターの“MS-07A 先行量産型グフ”が生産され、兵装はMS-06のものが流用されました。

 MS-06を大きく上回る運動性や機動性は勿論、ド・ダイYSとの連携による展開力の向上や空中戦も可能となったことでエースパイロットを中心に愛用されることになります。

“MS-07B グフ”

●スペック

頭頂高:18.2m
本体重量:58.5t
全備重量:75.4t
ジェネレーター出力:1,034kw
スラスター総推力:40,700kg
装甲材質:超硬スチール合金
主な搭乗者:ランバ・ラル(YMS-07B)、サイラス・ロック、マルロ・ガイム、ヘイブ、マーチほか公国軍MSパイロット

●基本武装

○ヒート・ロッド
 右腕部に内蔵された電磁鞭で、ルナ・チタニウム合金製の装甲を切断できるほどの威力を誇ります。敵機の武装を絡め取ったり、機体に巻き付けて電流を流すことで、機体だけでなくパイロットにもダメージを与えることもできます。その反面、使いこなすには相応の技術が求められます。

○5連装75mm機関砲
 左腕マニピュレーターの五指すべてが砲口になっており、弾倉は左腕部に内蔵されています。装弾数が少なく、弾倉の交換もできなかったり、威力や射程距離はそれほどでもありませんが、取り回しが良く、近接格闘戦で効果を発揮したほか、情報が出回っていない時期は隠し武器として、不意を突くことができました。ただし、扱いが難しく、命中精度に難があったり、マニピュレーターとしての機能が制限されたことで、汎用性の低下を招きました。

○グフ・シールド
 近接戦闘時の広い防御面の獲得とデッドウェイト化を避けるため、手持ちあるいは左腕のハードポイントにマウントする専用のシールドに変更されました。

○試作型ヒート・ソード
 対MS白兵戦用の兵装として、YMS-07Bに試験的に装備されました。シールド裏にマウントされ、使用時に柄に充填されている形状記憶処理済みのセラミックス系高分子化合物によって、瞬時に刀身を形成します。打突よりも斬撃に向いており、一回の戦闘で十数回は使用できます。

“試作型ヒート・ソード”

●現場からの評判が悪く衰退

 エースパイロットからは好評を博したMS-07でしたが、近接格闘に特化した性能は一般兵が扱うには難易度が高く、MS-06Jとほとんど変わらない働きしかできませんでした。

 また、非常に効果的だったド・ダイYSとの連携も人的資源の乏しい公国軍にとって、別個に航空機パイロットを用意することが困難になってきます。

 さらに固定武装を導入したことで、汎用性の低下や整備の煩雑化を招いたことで、現場レベルでの評判も決して良いものではありませんでした。

 その後、改良型の開発は続きますが、“MS-09 ドム”の登場により、生産は縮小していくことになります。

 ただ、戦後は操縦系技術の発展やパイロットの育成も進んだことで、MSには近接戦闘に耐え得る高い運動性と機動性が求められるようになっただけでなく、SFSとの連携も主流となっていきます。

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