見出し画像

第9回機動戦士ガンダム解説『膠着状態』

 “地球侵攻作戦”を開始したジオン公国軍は次々と地球における勢力圏を拡大していきました。しかし、地球連邦軍の激しい抵抗と戦線を拡大し過ぎたことによる疲弊も大きく、ジャブロー陥落にまでは至りません。そんな中、来るべき反攻作戦に備え、連邦軍は“V作戦”を始動し、本格的にMSの開発、生産に乗り出しました。

 詳しくは前回の記事をご覧ください。

●補充部隊の降下

 公国軍はその戦力に対して過剰に戦線を拡大してしまったため、末端にまで補給が行き渡らなくなったことで、その勢いも次第に鈍化していきました。

 また、兵士たちは皆コロニー出身者だったため、特に砂漠や熱帯地域の過酷な環境に耐えられなくなり、士気の低下も問題になっていました。スペース・コロニーは過ごしやすい気温で常に管理されており、害虫も存在しない清潔な環境で保たれています。コロニー出身者は緑や海の臭いですら我慢ならないとぼやいたほどでした。

 そんな状況を打開するべく、U.C.0079年4月4日、公国軍はスエズ運河付近に補充部隊を降下させています。ジャブローに繋がる重要拠点であるダカールを死守するため、アフリカ・中東地域は連邦軍の抵抗が激しく、激戦区となっていたからです。

 補充舞台は中東およびアフリカへの侵攻を開始、西はアトラス山脈まで、南は中央アフリカにまで侵出し、アフリカ方面軍となります。

●キャリフォルニア・ベースの始動

 補充部隊の降下と同じ頃、第二次降下作戦で手に入れたキャリフォルニア・ベースでMSや航空機などの開発・量産体制が整い、戦力の拡充が行われるようになりました。

 MS-06Jの実戦データが集まったことや現地での試験が可能になったことで、様々な地上戦用MSや水陸両用MSが開発・量産されることになります。

 また、兵士不足を補うため、汎用性を犠牲にする替わりに高火力・高機動を実現したモビルアーマー(MA)の生産も進められていきました。

 一方、グラナダ工廠では、陸戦能力を廃した宇宙用高機動機“MS-06R 高機動型ザクII”のプロトタイプが完成しています。

●セモベンテ隊

 U.C.0079年4月29日、鹵獲した6機のMS-06Jと2輌のM61A5MBTで編成された連邦軍の特殊部隊“セモベンテ隊”が友軍を装い、北米アリゾナ砂漠の公国軍第128物資集積所を襲撃しています。

 セモベンテ隊は鹵獲したMS-06JでMSを用いた戦術の確立やMS部隊の指揮官育成のために結成されました。しかし、友軍と偽装して襲撃を行うことは、味方に攻撃される危険性を伴います。また、敵国の標章を使用することは国際法上、違法となるため、捨て駒として利用された可能性も考えられます。

 同年5月9日にも、同隊による公国軍第67物資集積所の襲撃が行われましたが、作戦行動中に評価試験のために降下された公国軍の試作モビルタンク“YMT-05 ヒルドルブ”と遭遇して、交戦することになります。YMT-05の撃破には成功したものの、セモベンテ隊も全滅してしまい、結果的には相打ちという形で終わっています。

●本土防衛ラインの完成

 U.C.0079年5月17日、“宇宙要塞ソロモン”が完成します。これは連邦軍の“ルナツー”と同じく、資源採掘用にアステロイドベルトから持ち込まれた小惑星を軍事基地に改修したものです。

 同年6月30日には、ソロモンと同様、小惑星を軍事基地化した“宇宙要塞ア・バオア・クー”が完成し、これとソロモン、グラナダを結んだ本土防衛ラインが完成します。これは連邦軍の戦力を集結させても、突破は困難だと言われるほど堅牢なものでした。

●トライデント&ジャベリン作戦

 U.C.0079年5月21日、公国軍はロシアとアフリカの勢力圏を繋げるため、中東への大規模な攻撃を行っています。

 これは欧州方面軍による地中海側からの侵攻“トライデント作戦”とアフリカ方面軍による陸路からの侵攻“ジャベリン作戦”という二面作戦で進められました。

 同月24日、欧州方面軍が連邦軍の地中海艦隊を壊滅、翌25日にアフリカ方面軍がアレクサンドリアを制圧、28日には両軍による攻撃でエルサレムを制圧しています。

 結果的に作戦は成功に終わりましたが、キシリア派の欧州方面軍とドズル派のアフリカ方面軍との間で連携が取れておらず、公国軍の被害も少なくありませんでした。

 この戦いで、水陸両用MSとして、初めて制式採用された“MSM-03 ゴッグ”が実戦投入され、活躍を見せましたが、対空攻撃能力を持たないことから、連邦軍の爆撃機“デプ・ロッグ”による爆撃で被害を出しています。

 当時、一番の激戦区とも言われた中東を制圧した公国軍でしたが、ダカールを制圧する余力は残っておらず、攻めあぐねることになります。

●ヘリオン作戦

 U.C.0079年5月22日、連邦艦隊は旧サイド5の残骸が散乱する暗礁宙域に潜伏し、地球とグラナダまたはサイド3間の物資輸送を阻止しようと、地球軌道上の公国軍艦隊に奇襲攻撃を仕掛ける“ヘリオン作戦”を実行します。

 それまで大艦巨砲主義を掲げる連邦軍は、宇宙戦闘機をそれほど重要視しておらず、コロニーの守備隊に少数が配備されているだけでしたが、同作戦では大量の宇宙戦闘機が投入されました。

 連邦軍は宇宙戦闘機“FF-S3 セイバーフィッシュ”でMSを引き付けている間に新造された宇宙突撃艇“パブリク”が公国軍艦艇に肉薄して、対艦ミサイルで攻撃するというMSを無視した戦術を展開しました。

 連邦軍による攻撃は翌23日まで続き、対空機銃を持たず、弾幕を張ることができない“ムサイ級軽巡洋艦”に対して、かなりの効果を発揮しましたが、結果としては連邦軍の大敗に終わっています。

 これ以降、連邦軍による補給艦等への奇襲攻撃は中断されることになります。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?