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第8回初心者のための機動戦士ガンダム解説『V作戦始動』

 U.C.0079年2月、ジオン公国軍は“地球攻撃軍”を設立し、“地球侵攻作戦”を開始しました。地球においてもミノフスキー粒子散布下におけるMSを使った戦術は有効で、地球の広範囲を占領下に置くことに成功しました。しかし、兵士の少ない公国軍はいたずらに戦線を拡大してしまったことで、末端まで補給が届かず、占領したところで何もできないという状態に陥ることになります。

 詳しくは前回の記事をご覧ください。

●連邦軍によるMS開発

 U.C.0078年3月、地球連邦軍は“RX計画”を始動し、MSに対抗するための新兵器開発を進めていました。最初に完成したのが、当時主力戦車であった“M61 61式戦車”の後継機開発と統合されて開発された大型戦闘車両“RTX-44”でしたが、その重量による機動性の低さから実用性は皆無と言っても良いものでした。

 しかし、ジオン公国より亡命してきた技術者たちの協力を得ることに成功すると、MS開発の方向性が定まり、本格化することになります。

 まず、MS開発技術を持たない連邦軍は既存の兵器をベースに長距離射撃による支援を目的としたRX-75、その空間戦闘用RX-76の開発を行うと共にその他の基礎技術の研究を行います。

 次に基礎研究が進み、MSの雛形が完成すると、中距離支援を目的としたRX-77の開発を行うと共に機動性や運動性の向上を目指します。

 最後に近接格闘戦に耐え得る機動性や運動性を持つRX-78を開発し、量産機のベースとすることにしました。中距離支援は兵装の変更で、長距離支援は艦砲射撃で対応することで、単一機種を量産して生産効率の向上とコストダウンを目指したわけです。

●RX計画で生まれた新技術

 連邦軍は小型熱核反応炉や二足歩行システム、精密なマニピュレーターの開発に難航していましたが、その他の分野で公国軍を超える新たな技術を生み出していました。

○フィールドモーター

 MSの駆動システムとして、“サムソニ・シム社”によって開発されました。従来の電動モーターの電磁石やコイルをIフィールドに置き換えたようなもので、Iフィールドとミノフスキー粒子の反発力を利用して、モーターを駆動させます。

 駆動には電力を使用するため、パルスコンバーターや動力パイプを必要とせず、ミノフスキー粒子自体も質量が限りなくゼロに近いこともあり、軽量でありながら高出力で反応速度も高いものになっています。

 また、各モーターが個別に作動しているため、動力パイプの破損による出力低下もおこりません。

 その反面、消費電力が大きい、整備を行う人間にそれなりの技術が要求されるというデメリットも存在しました。

○ルナ・チタニウム合金

 月あるいはルナツーで産出される高純度のチタン、希土類金属などを低重力下で精製した特殊な合金で、MSの装甲素材として使用されました。開発自体はU.C.0064年からスタートしていましたが、改良を重ねることで、軽量でありながら、高い対衝撃性や対放射線性、耐熱性を獲得しました。

 しかし、一部の素材が高価だったことや硬いが故に加工が困難であったことから、量産機には不向きでした。量産機の装甲には別の素材が採用され、試作機やシールドにのみ使用されることになりました。

●V作戦の始動

 RX計画自体は着実に前進していましたが、規模としては小さかったこともあり、MSの完成を待たず、一年戦争が勃発しました。そして、その緒戦において、公国軍のMSを使った戦術を前に大敗を喫してしまいます。

 MSの脅威を目の当たりにし、一時は捕虜にまでなってしまったレビル将軍は、戦局を打開するにはMSが必須だと痛感することになります。そして、U.C.0079年2月13日、「MSの開発・量産」「MSを運用するための母艦の建造」「MSを使った戦術の確立」を三本柱とする“V作戦”を立案し、同作戦を最優先事項とするように高官たちを説得します。

 しかし、高官たちの多くは緒戦の敗北を奇襲によるものが大きいと判断し、宇宙艦隊の再編を優先するべきだという意見が多数を占めていたこともあり、根回しに時間がかかってしまい、V作戦の始動はU.C.0079年4月1日にずれ込んでいます。

 V作戦が始動すると、MSの研究開発に予算や人員が集中し、飛躍的に進んでいくことになります。

●ビンソン作戦

 連邦軍はV作戦と同時に“ビンソン計画”も進めていきました。これは最優先事項となるはずだった、来るべき反攻作戦に備え、マゼラン級やサラミス級の建造を中心とした宇宙艦隊の再建を行うといったものです。

 ただ、V作戦とのすり合わせが行われたことで、当初の計画とは異なり、MSの搭載、運用能力やミノフスキー粒子散布下での戦闘に対応した武装が艦艇に付与されるなど、旧態依然とした大艦巨砲主義から脱していくことになります。

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