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初心者のための機動戦士ガンダム兵器解説『MS-06R-2 高機動型ザクII後期型』

●開発経緯

 ジオン公国軍は南極条約締結により、戦争の長期化を見据え、MS-06に替わる次期主力MSとして、MS-11の開発を進めていました。

 しかし、MS-11に求められたハードルは高く、開発は遅延していました。さらに公国軍は地球侵攻作戦に戦力を割いていたため、宇宙攻撃軍による早期の戦力増強を求める声も大きくなっていき、連邦軍がMS開発に成功したという情報までキャッチしたのです。

 そういった背景からMS-11が配備されるまでの繋ぎとして、新たな主力MSを決めるコンペティションが実施されることになります。

 ジオニック社はMS-11の開発が遅延していたこともあり、提出できるMSがありませんでした。そこでMS-06R-1AをベースとしたMS-11の試験機を改修した本機を急遽開発して、ツィマット社のMS-09Rと競うことになります。

 MS-06R-1AおよびMS-09Rについて、詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

●MS-11の試験機がベース

 ジオニック社はMS-06R-1Aに開発中だったMS-11用の新型ジェネレーターを搭載したほか、脚部補助推進器周りに増加装甲を取り付けるなどの改修を施したMS-11の試験機として、“MS-06R-2P”を開発しました。

 このR-2P型は公国軍初のビーム・ライフルの運用を目的とした試験機でした。しかし、新型ジェネレーター搭載により、ビームの発射には成功したものの、出力や冷却システムに問題を抱え、実用化にはほど遠いものでした。

 そんな中、次期主力MSのコンペティションが実施されることになり、提出するMSのなかったジオニック社はこのR-2P型をベースに従来の実体弾を使用する本機を急遽開発することにしました。

●ザクの皮を被ったゲルググ

 本機はR-2P型のジェネレーターを簡略化したものを搭載し、ビーム兵器の運用を断念しましたが、余剰電力が生じたため、その分を推力やアクチュエーター出力に回すことができました。その結果、高い機動性と運動性を獲得しました。

 その他にもバックパックの燃料タンクを大型化し、航続距離の延長を図ったり、装甲材質の改良により、軽量化と耐弾性の両立にも成功しています。

 このように外観上はザクに近いものの、内部構造は従来のR型ともまったく異なる新型機となっており、スペックだけで見れば、競合のMS-09Rを上回る性能を誇り、後に「ザクの皮を被ったゲルググ(MS-11改めMS-14の通称)」と呼ばれました。

●制式採用は逃すが・・・

 そんな本機でしたが、コンペティションではツィマット社のMS-09Rに敗れています。スペックでは勝っていましたが、様々な問題点があったのです。それはR型が慢性的に抱える兵器としてのバランスの悪さでした。

 内部構造が従来のMSとまったく異なり、新たな生産ラインを立ち上げる必要があり、生産性が悪く、コストも高い、運用面においても稼働条件がシビアで整備性が悪い、最後にパイロットに求められる操縦技術が高いというものです。

 ジオニック社はこの公国軍の裁定に意義を唱えることはありませんでした。それはあくまで本命はMS-11であり、その開発にある程度の目処が立っていたからではないかと考えられます。

●ジョニー・ライデン専用機

 本機の生産は僅か4機で終わっており、その内の1機は開発チームに残され、MS-14の開発に使用されています。そして、残りの3機はエースパイロットの元へ送られることになります。R型は量産機としては問題がありましたが、腕のあるパイロットと整備士が組めば、戦果は大いに期待できました。

 その中で最も有名なのが“真紅の稲妻”ことジョニー・ライデン専用機でしょう。彼が本機に搭乗した期間は僅かでしたが、撃墜スコアのほとんどは本機によるもので、彼自身も「06-R2こそが自分の愛機である」と語ったという資料もあるようで、彼を代表する機体とも言えるでしょう。

“MS-06R-2 高機動型ザクII後期型
ジョニー・ライデン専用機”

●スペック

全高:18.0m
頭頂高:17.5m
本体重量:58.2t
全備重量:75.0t
ジェネレーター出力:1,340kW
スラスター総推力:60,000kg
装甲材質:超硬スチール合金
主な搭乗者:ジョニー・ライデン、ギャビー・ハザード、ロバート・ギリアム

●基本武装

○360mmジャイアント・バズ
 一年戦争当時、MS用携行兵装としては最大級の実体弾砲で、巡洋艦クラスであれば、一撃で撃沈させるほどの威力を誇ります。砲弾は後方の弾倉に10発装填されています。キャリフォルニア・ベース占領時に手に入れた戦艦用の360m砲弾およびその生産ラインを利用するため、H&L(ハニーウォール アンド ライセオン)社によって開発されました。

○120mmザク•マシンガン
 MS-06以外にも広く使用されたジオン公国軍MSの一般的な兵装です。モノアイとスコープを連動させることで、精密射撃も可能です。装弾数は145発で、セミオートとフルオートに切り替えが可能になっています。徹甲弾、榴弾、徹甲榴弾、成形炸薬弾など弾種も豊富に用意されています。

○280mmザク•バズーカ
 弾速に難はありましたが、その高い威力は対艦用兵装として猛威を振るいました。装弾数は単発もしくは5発とされますが、装填する描写がなく、詳細は分かりません。

○ヒート•ホーク
 セラミック系高分子化合物の刃を赤熱化することで、対象を溶断します。数回使用すると、刃先が劣化してしまい、交換が必要になります。

“360mmジャイアント・バズ”

●MS-14 ゲルググに繋がる

 エースパイロットの元へ渡った3機が戦場で活躍する中、開発チームの元に残った1機はR-3型のベースとなりました。これはMS-14の試験機として、遂にビーム兵器の搭載に成功し、次世代機の誕生に繋がっていきます。

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