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第5回初心者のための機動戦士ガンダム解説『一年戦争勃発』

 実戦用モビルスーツを完成させたジオン公国は、地球連邦との戦いに向けて、更なる軍事拡張を進めていきます。また、それと同時に挑発行為を繰り返し、反応を窺いました。圧倒的に戦力で勝る連邦は本当に戦争を仕掛けてくるとは考えておらず、大きな行動は起こしませんでした。これにより、ギレン・ザビ総帥は遂に連邦との戦いを決意するのでした。

 詳しくは前回の記事をご覧ください。

●3秒間の布告

 U.C.0079年1月3日7時20分、ジオン公国は地球連邦政府に対し、独立を宣言すると共に宣戦布告を行いました。サイド3はU.C.0058年に既に独立を宣言していますが、改めてジオン公国が独立国であることの確認と、独立した国家間の戦争であることを強調したのです。

 ギレンの開戦演説は全地球圏に放送されましたが、連邦軍はジオン公国など全く相手にならないといったような余裕の表情を浮かべました。しかし、一瞬にして、その余裕の表情は消え去ることになります。

 ジオン公国の宇宙攻撃軍は宣戦布告後、僅か3秒後に連邦軍軌道防衛艦隊を急襲しました。ミノフスキー粒子によって、全ての電波通信が遮断され、連邦軍は大混乱に陥ります。連邦本部に情報が行き渡ったのは8時50分のことでした。100隻余りの大戦力を誇った軌道防衛艦隊は、MS-06Cの核バズーカなどにより、次々と撃沈されていき、なんと開戦後2時間で壊滅してしまいました。

 時を同じくして、突撃機動軍は月面都市グラナダ、サイド1、サイド2、サイド4に攻撃を仕掛けます。瞬く間にグラナダを制圧し、各サイドの駐留軍を壊滅させてしまいました。

 また、連邦寄りの態度を取ったスペース・コロニーに対しても、容赦なく攻撃を加えます。核バズーカによってコロニーを破壊したり、皮膚に付着するだけで死に至ると言われる特殊な神経ガス“GGガス”をコロニーに注入し、住民を虐殺するということも行われています。毒ガスによる虐殺を行った兵士たちには、重要施設を制圧するまでの間、住民の抵抗を抑えるための催眠ガスであると伝えられていました。

●スペース・ノイドを敵に回したジオン公国

 多くのスペース・ノイドたちは、ジオン・ズム・ダイクンの主張には賛同していましたが、ギレンの選民思想や勝機があるように見えない主戦論には賛同できませんでした。議会も基本的に連邦寄りです。そのため、各サイドは連邦側に付き、ジオン公国の攻撃対象となってしまったのです。

 しかし、サイド6だけは日和見を決め込みました。サイド6は、両陣営に関わりが深い有力者が多く暮らしていて、商工業が発展し、独自通貨まで発行されているような裕福なコロニー群です。議会は戦火を免れるため、両陣営と密約を交わし、裏で物資を支援することで中立を保つことになります。

 また、月面都市グラナダは地球から見て、月の裏側に位置し、月の外側に位置するサイド3建造のために作られました。そのため、古くから親交が深く、ザビ家にも協力的でした。開戦直後にほとんど血を流すことなく、ジオン公国に実行支配されることになり、突撃機動軍の本拠地となります。

 ジオン公国はスペース・ノイドの虐殺を行ったため、酷い恨みを買うことになりました。生き残ったコロニー出身者たちには、連邦軍に志願兵として入隊し、ジオン公国と徹底的に戦うという道を選んだ者も多くいました。

 その結果、スペース・ノイドの大半を敵に回してしまったことで、ジオン公国は孤立してしまい、慢性的な兵士不足に陥ってしまうことになります。

●ブリティッシュ作戦

 連邦艦隊を撃滅したジオン公国軍は、GGガスで住民を抹殺したサイド2の第8バンチコロニー“アイランド・イフィッシュ”にMSや作業ポッドを使って、外装の補強と核パルスエンジンの取り付けを行いました。そして、翌日のU.C.0079年1月4日、アイランド・イフィッシュを地球へ向けて発進させます。ジオン公国は、スペース・コロニーを大質量兵器として、地球へぶつけようとしたのです。所謂“コロニー落とし”です。

 ジオン公国が狙うのは、連邦軍総司令部“ジャブロー”でした。ジャブローは南米の地下にあるということだけはわかっていましたが、正確な場所はわかりません。また、分厚い岩盤で覆われており、核兵器の直撃にも耐えると言われていました。ジオン公国はジャブローをコロニー落としによって破壊し、連邦軍の戦意を喪失させることで、早期に戦争を終わらせようとしたのです。

 ギレンは、この作戦を植民地を失った大英帝国になぞらえて、“ブリティッシュ作戦”と名付けました。

 ジオン公国の狙いにようやく気付いた連邦軍は、ティアンム提督を総司令とする艦隊を集結し、コロニーを護衛するジオン艦隊と激戦を繰り広げます。地上からも核兵器によるコロニー迎撃を行いました。しかし、決死の抵抗も虚しく、ジオン艦隊はティアンム艦隊を退け、遂にコロニーを大気圏に突入させます。

 連邦軍はコロニーの大気圏突入不可避と見るやジャブローからの撤退を開始しました。実際にコロニーが大気圏に突入すると、大混乱に陥り、ジオン公国との和平交渉へ臨もうという案が持ち上がるほどでした。しかし、コロニーがアラビア半島上空を通過しようとした時、奇跡が起こりました。コロニーが崩壊、四散したのです。

 ただ、ジャブローは直撃を免れたものの、その残骸はオーストラリア東海岸、北太平洋から北米大陸に降り注ぎました。その結果、シドニーは消滅し、発生した大津波で太平洋沿岸地域は壊滅的な被害を受けることになります。

 U.C.0079年1月10日、ブリティッシュ作戦の失敗を確認したジオン公国軍は各基地へ帰投し、連邦軍も残存戦力をルナツーに集結しさせ、戦力の再編成を行いました。

 この一年戦争緒戦の8日間は“一週間戦争”と呼ばれます。この一週間戦争での犠牲者は40億人以上とも言われ、人類史上最も悲惨な戦いとして、その歴史に汚点を残すことになりました。

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