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第4回初心者のための機動戦士ガンダム解説『開戦前夜』

 ミノフスキー粒子を軍事利用することで、それまでの戦争の常識が覆ることに着目したジオン公国総帥のギレン・ザビは、圧倒的に戦力で勝る地球連邦軍との戦争にも勝機を見出しました。そして、ミノフスキー粒子散布下に最適化した新しい機動兵器“モビルスーツ”を開発したのでした。

 詳しくは前回の記事をご覧ください。

●MS-04 プロトタイプ・ザクの完成

 ジオニック社の開発したMS-01 クラブマンは、あくまで新しい機動兵器の雛形の完成であり、まだまだ実戦に耐え得る性能ではありませんでした。ジオニック社は、更なる改良を加えていきます。そして、機動性の向上を目指したMS-02、装甲の強化や耐G性能の向上を目指したMS-03を開発しました。

 それでも、まだまだ性能は不十分と判断されてしまいます。そんな流れを変えたのが、ZAS社の開発したミノフスキー・イヨネスコ型熱核反応炉でした。なんとMSに搭載可能なサイズまで小型化することに成功したのです。これにより、従来機とは比べものにならないほどの機動性や運動性、パワーなどを手に入れました。

 そして、“MS-04 プロトタイプ・ザク”が完成します。これにより、ようやくMSの実戦投入に目処が立つことになります。また、この時期にMS用の手持ち兵装の開発も進んでいきました。

●MS-05 ザクの制式採用

 U.C.0074年2月、MS-04をベースに“YMS-05 試作型ザク”がロールアウトされます。その性能は高く評価され、遂に制式採用が決まりました。YMS-05はテストパイロットや整備士などからヒアリングを行い、操縦系統やOS、整備性などに改良が加えられた後、U.C.0075年7月に量産が開始されました。

 最初期に量産された“MS-05A 先行量産型ザク”は、ギレン・ザビの妹であるキシリア・ザビに設立された教導機動大隊に送られ、パイロットの育成やMSを使った新たな戦術の考案などに使用されました。そして、そこで得られたデータから洗い出された問題点を改良した“MS-05B ザク”が本格的に量産されることになります。

●MS-06 ザクIIの開発

 U.C.0076年、MS-05の成功によって、ジオン公国はMSを主力兵器に採用することを決定します。それと同時に、汎用機をベースに局地戦用機を展開していくという方針も打ち出されます。資源の乏しいジオン公国はパーツの共有率を高め、生産コストを抑えるという方法を選択するしかなかったのです。

 MS-05は徹底的に無駄を省き、コストを抑えた完成度の高い機体でした。しかし、それ故に拡張性に乏しく、これ以上の展開は見込めませんでした。そこで開発されたのが“MS-06A 先行量産型ザクII”です。

 MS-06Aは機体内部に余裕を残し、汎用性や拡張性を担保したまま、全面的な性能の向上にも成功しました。パイロットからの評判も非常に高く、U.C.0077年には量産が開始されています。

 しかし、キシリア麾下の諜報機関が「地球連邦軍によるMSの研究が始まった」という情報をキャッチしたことで、MS-06Aの量産が中断されます。そして、より武装を強化した“MS-06C 前期生産型ザクII” を開発し、こちらの量産に切り替えることになります。

 MS-06Cの大きな特徴は、“戦術核の運用”です。戦術核を使用する際、放射線を遮断できるように機体には対核装備が施されていました。

●RX計画の発動

 ジオン公国によるMS開発は、極秘裏に行われていたわけではありませんでした。勿論、作業用重機として公表していたわけですが、ロケット開発が弾道ミサイル開発とイコールとされるように、地球連邦政府もMSの軍事利用を疑っていました。

 しかし、連邦軍の見解は「MSに戦略的価値はなく、技術的優位性のアピールに過ぎない」というものでした。敵を知るという意味で、MSの研究はスタートしましたが、その有用性に関しては見誤っていたのです。

 しかし、連邦軍が事故により漂流していたMS-05を回収したところで流れが変わります。地球軍の総司令官であったレビル将軍はすぐに兵器開発局にMSの解析を進めさせます。そして、最新テクノロジーが詰まったMSに危険を察し、U.C.0078年3月に独自のMS開発を進める“RX計画”を議会に承認させます。

 RX計画は、61式戦車に替わる次期主力戦車開発と統合され、“RTX-44”を開発します。これは対MSを想定した大型戦車だったのですが、その重過ぎる機体から機動性に難があり、とても実戦に耐え得るものではありませんでした。

 しかし、今にも戦争を始めようとするジオン公国から亡命してきた技術者たちの協力を得ることに成功し、RX計画は根本から見直されることになり、後のRXシリーズ開発に繋がっていきます。

●国家総動員令発布

 U.C.0078年2月、ジオン公国はコロニー間の輸送船を襲撃します。連邦政府がどのような反応を見せるのか試したのです。しかし、連邦政府はこれを事故として処理、各コロニーの駐留部隊を増強し、軍事的圧力をかけるだけでした。

 この反応を受けて、連邦政府は圧倒的な戦力差を前にジオン公国が戦争を仕掛けてくるとは思ってもいないと考えたギレンは開戦を決意しました。

 そして、MS-06Cから対核装備をオミットし、総合性能を向上させた汎用機“MS-06F 量産型ザクII”、宇宙用装備をオミットし、地上戦用に改修した“MS-06J 陸戦型ザクII”、さらにエース・パイロット用に機動性を大幅に向上させた“MS-06S 指揮官用ザクII”などのバリエーション機を次々と開発し、開戦の準備を進めていきます。

 ギレンはMSの性能やパイロットの数、熟練度など、万全を期して開戦に持ち込みたかったのですが、連邦軍がMS開発を始めたという情報を得たことで、開戦を急ぐことになります。

 そして、U.C.0078年10月に国家総動員令を発布しました。それと同時に公国軍の再編成が行われています。ギレン直属の国防軍、キシリア麾下の突撃機動軍、ドズル(デギンの三男、キシリアの兄)麾下の宇宙攻撃軍に分割されました。これはキシリアとドズルの戦略、戦術的思想の相違による対立を抑えるための苦肉の策でした。

 これに対して、連邦軍は翌11月に観艦式と称して、サイド3宙域に大艦隊を航行させます。両軍の緊張は日に日に高まり、遂にその日がやってくることになるのです。

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