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第3回初心者のための機動戦士ガンダム解説『モビルスーツの誕生』

 ジオン・ズム・ダイクンはサイド3の独立を宣言しますが、連邦政府はこれを認めませんでした。ダイクンの死後、後継者となったデギン・ソド・ザビはサイド3を共和制から公国制に移行し、以降は長男のギレン・ザビが指揮を執ることになります。

 詳しくは前回の記事をご覧ください。

●ミノフスキー物理学会の発足

 宇宙世紀のエネルギーは主に重水素とヘリウム3を用いた核融合発電で賄われていました。核融合により発生する熱で湯を沸かし、その水蒸気でタービンを回して発電するというもので、核融合自体は最先端技術でしたが、それ以外は旧来の原子力発電とほとんど変わりありません。また、核融合の際に放射線が発生するため、大規模な施設が必要でした。

 U.C.0035年、物理学者のトレノフ・Y・ミノフスキー博士は発電所の近くで不思議な電波障害が起こっていることに気が付きました。これを調査していくうちに、未知なる素粒子の存在を疑うようになります。

 博士はその新粒子の存在やそれを使った新しい技術に関する研究を原子力物理学会で発表しました。しかし、博士の理論はあくまでも仮説でしかなく、従来の物理学の常識とはかけ離れたものであったため、学会に受け入れられることはありませんでした。それどころか、データの捏造を疑われ、学会を追放されてしまうのでした。

 そんな博士に救いの手を差し伸べたのが、デギン・ソド・ザビでした。デギンは博士の研究に興味を持ち、博士をサイド3へ招聘し、支援を行います。そして、U.C.0045年に“ミノフスキー物理学会”が発足しました。

●ミノフスキー粒子の発見

 U.C.0069年、ミノフスキー物理学会によって、遂に新粒子の存在が実証されます。新粒子は発見者の名前を取って、“ミノフスキー粒子”と名付けられます。これによって、様々な新しい技術が生まれ、世界を一変させることになります。

 ミノフスキー粒子はヘリウム3の核融合により発生します。電磁波や放射線を反射吸収する性質を持ち、周囲に撒き散らすことで、広範囲に電波障害を引き起こします。これにより、レーダーや通信機器、ミサイルのような誘導兵器を無効化することができるのです。

 つまり、第二次世界大戦以前のような有視界戦闘に巻き戻せるというわけです。地球連邦軍はレーダーや誘導兵器を駆使して戦うことを前提としているので、圧倒的に戦力で劣るジオン公国にとって、逆転の糸口と考えられました。

●ミノフスキー・イヨネスコ型熱核反応炉

 ミノフスキー粒子は電荷を加えることで立方格子状に整列し、“Iフィールド”と呼ばれる力場を形成します。Iフィールドは熱や放射線を閉じ込めて、それを電気エネルギーに変換する作用を持っていました。

 ミノフスキー博士はこれを利用すれば、小型かつ高出力の核融合炉を開発することができると考え、研究を続けました。そして、イヨネスコ博士の協力を得て、遂に“ミノフスキー・イヨネスコ型熱核反応炉”の開発、実用化に成功します。

 これもジオン公国にとって朗報でした。核反応炉を兵器に搭載すれば、従来よりも大きな電力を半永久的に使用することができるため、圧倒的な機動力や継続戦闘能力を得ることができるのです。

●メガ粒子砲

 さらにミノフスキー学会は、ミノフスキー粒子を強力なIフィールドで圧縮すると、ミノフスキー粒子が融合し、強大なエネルギーを持つ、“メガ粒子”に変化することを発見しました。

 そして、このメガ粒子を従来の砲弾と置き換えた“メガ粒子砲”が開発されることになります。核兵器に匹敵するほどの威力を持っていたメガ粒子砲でしたが、ミノフスキー粒子の圧縮には膨大なエネルギーを必要としたため、この段階では大型艦艇や宇宙要塞にしか搭載することはできませんでした。

●ミノフスキー博士の亡命

 ミノフスキー博士は自身の仮説を証明し、様々な技術を生み出して、人々から賞賛されることに喜びを感じていましたが、それと同時にその技術が軍事利用されていくのに恐怖を覚えていました。

 U.C.0071年、ギレン・ザビが『優性人類生存説』を発表します。その内容を簡単にまとめると、「現在起こっている様々な問題の原因は、増え過ぎた人口なのだから、一度整理する必要がある。そして、残す人間もきっちり選ぶ必要がある」というものです。

 この論文を読んだミノフスキー博士は、ギレンの恐ろしい野望に手を貸していることに気付き、翌年のU.C.0072年に地球連邦政府に亡命します。

 そして、博士はジオン公国の恐ろしさを主張するのですが、この時点で戦力差は大人と子供以上だったため、まったく相手にされませんでした。それどころか、連邦軍にも技術の軍事利用を強要されることになってしまうのでした。

●モビルスーツの誕生

 U.C.0071年、ギレンは各兵器メーカーに“ミノフスキー粒子散布下に最適化された機動兵器”の開発を命じました。ミノフスキー博士が亡命した後も開発は続けられます。そして、U.C.0073年にコンペティションが開催されます。

 その中で特に異彩を放ったのが、ジオニック社の開発した“ZI-XA3 クラブマン”でした。全高14mほどの人型をした機械にギレンは思わず冷笑しましたが、すぐにその印象は変わることになります。

 宇宙空間ではデッド・ウェイトとなると思われた手足は、“AMBAC”システムの採用により、運動性と継続戦闘能力の向上に繋がりました。

 AMBACとは、“Active Mass Balance Auto Control(能動的質量移動による姿勢制御)”の略で、宇宙空間において、手足を振った反作用を利用して、機体を旋回させるシステムです。これにより、推進剤を消費することなく、素早い姿勢制御を行うことが可能でした。

 さらに二本の脚は、重力圏では歩行を可能にし、二本の腕は人間が扱う既存の兵器をスケールアップしたものを使い分けることができたり、作業用重機としても使えるという高い汎用性を持っていました。

 人的資源の乏しいジオン公国にとって、その汎用性の高さは非常に魅力的だったこともあり、コンペティションを制し、“MS-01”の型式番号が与えられました。モビルスーツの誕生です。

 モビルスーツとは、“MOBILE Space Utility Instrument Tactical(機動汎用戦術宇宙機)”の略で、MSとさらに略して表記されることも多いです。

『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』では、“MW-01 モビルワーカー”に変更されています。

 この段階では、まだまだ実戦に耐えられる性能には至っておらず、あくまでも雛形が完成したという段階でしかありません。この後、ジオニック社はさらなる改良を加えていくことになります。

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