第6回初心者のための機動戦士ガンダム解説『ルウム戦役』
ジオン公国は、地球連邦政府に対し、独立を宣言すると共に宣戦布告を行いました。奇襲効果やMS隊の活躍もあり、公国軍は戦闘を優位に進めていきます。ギレン総帥はコロニーを地球に落とし、地球連邦軍総司令部“ジャブロー”を破壊する“ブリティッシュ作戦”を発動しますが、連邦軍の決死の抵抗に遭い、作戦は失敗に終わります。
詳しくは前回の記事をご覧ください。
●第二次ブリティッシュ作戦
国力の乏しいジオン公国は、短期決戦で終結させたいという狙いがあり、すぐさま第二次ブリティッシュ作戦に向けての準備を開始します。開戦時とは異なり、連邦軍の抵抗が厳しくなることが予想されたため、保有する戦力の半数以上を投入することになります。
コロニー獲得のために狙ったのはサイド5、通称“ルウム”です。サイド3とは月を挟んで正対する位置にあり、各コロニーの動きを監視するのに最適でした。そのため、連邦軍のコロニー駐留部隊では最も規模が大きく、開戦時には攻撃対象になりませんでした。
一方、連邦軍は一週間戦争で負傷したティアンム提督に代わり、レビル将軍を宇宙艦隊の総司令官に任命します。レビル将軍は公国軍の動きを察知し、その目的を見破りました。ルナツーへ艦隊を集結させていては、公国軍のサイド5侵攻へ間に合わないと、ジャブローへの指示を仰がず、それぞれの艦隊へサイド5に急行するよう命令を下します。
●ルウム戦役
U.C.0079年1月15日、公国軍はサイド5への攻撃を開始します。これを瞬く間に制圧すると、第11バンチコロニー“ワトホート”への核パルスエンジンの取り付けと外装の補強作業に取り掛かりました。
そこに到着したレビル艦隊は、すぐさまジオン艦隊への攻撃を開始します。それに対し、宇宙攻撃軍総司令ドズルは、自軍を艦隊迎撃部隊とコロニー防衛部隊に二分し、対応します。ここに“ルウム戦役”が勃発しました。
レビル艦隊は戦力差がジオン艦隊の約3倍と圧倒的だったため、艦隊戦を有利に進めます。また、コロニーの改修作業に当たっていたMS隊が稼働時間延長のために大型の推進剤タンクを積んでいたことによる機動力の低下によって、次々とMSを撃墜していきました。
ドズルはコロニーの改修作業を断念し、レビル艦隊の殲滅に戦力を集中させます。そこから公国軍の逆襲が始まります。その中でも特に活躍したのがシャア・アズナブルとガイア、マッシュ、オルテガの“黒い三連星”でした。
シャアはマゼラン級宇宙戦艦1隻とサラミス級宇宙巡洋艦4隻を撃沈する戦果を上げました。赤く塗られたMSの軌道がまるで彗星のようだったことから“赤い彗星”と呼ばれることになります。
黒い三連星は三位一体の連携技“ジェット・ストリーム・アタック”を駆使して、レビル艦隊の旗艦であるマゼラン級宇宙戦艦“アナンケ”を撃沈し、脱出を図るレビル将軍を捕らえました。
旗艦を失ったレビル艦隊の戦線は崩壊し、遂にルナツーへの撤退を決定します。しかし、公国軍の追撃を掻い潜り、無事にルナツーに辿り着いたのは、投入した戦力の僅か20%だけでした。
一方、大勝したように見えた公国軍の被害も決して小さくはなく、作戦の続行は断念せざるを得ませんでした。また、相当数のMSと共に開戦前から育成してきた熟練パイロットを失ったことは、人的資源の乏しい公国軍にとってはかなりの痛手となりました。
●南極条約の締結
第二次ブリティッシュ作戦も失敗に終わったジオン公国でしたが、ルウム戦役でのMSの活躍や捕虜にしたレビル将軍の映像を使って、自軍の大勝利を喧伝しました。
しかし、実際はルウム戦役までに戦力の約30%を失い、戦争を継続するのは困難な状態で、一刻も早く連邦と講和を結びたいというのが本音でした。
U.C.0079年1月20日、ジオン公国は中立を宣言したサイド6を通じて、連邦政府に講和を打診します。連邦もこれに応じて、南極基地で講和会議が開催されることになりました。
ジオン側の提示した条件は、無条件降伏に近い極めて厳しいものでした。連邦政府は早々に交渉を打ち切ろうとしますが、再度コロニー落としを実行するという脅しに屈してしまい、不利な条件で交渉を進めていくことになります。
同年1月31日、講和条約の調印が行われようとしていた時、まさに奇跡が起きました。なんと連邦軍の特殊部隊によって、レビル将軍が救出されたのです。
レビル将軍は直ぐさま全世界に向けて、演説を行いました。ジオン公国に戦争を続ける余力などなく、徹底抗戦すべきという所謂“ジオンに兵なし”演説です。これにより、連邦政府は息を吹き返し、ジオン側の要求を退けました。最終的にこの交渉は“南極条約”と呼ばれる戦時条約の締結のみに終わり、連邦とジオン公国の戦争は継続していくことになります。
●南極条約とは?
南極条約は以下の3項から成ります。
NBC兵器および大質量兵器の使用禁止
NBC兵器はNuclear(核)、Biological(生物)、Chemical(化学)兵器のことで、核バズーカやGGガスなどが該当します。また、大質量兵器はコロニー落としが該当します。
ジオン公国はこれらに替わる兵器として、メガ粒子砲の研究を進め、MSでも運用できるサイズまで小型化することを目指していくことになります。
2.中立コロニー、月面恒久都市、木星船団への攻撃禁止
木星船団は木星へ赴き、ヘリウム3を採掘し、持ち帰る人たちです。宇宙世紀のエネルギーはヘリウム3を用いた核融合に頼っていて、これがなければスペース・コロニーを稼働することもできません。ですから、木星船団を襲うのは止めましょうという話です。
3.捕虜への人道的扱い
捕虜に対して、食事を与えない、拷問を行うことなどを禁止し、人権を尊重しましょうという取り決めです。
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