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第10回初心者のための機動戦士ガンダム解説『戦力拡充期』

 ジオン公国軍は3度に渡る“地球降下作戦”を実行し、次々と勢力を拡大していきました。しかし、拡げ過ぎた戦線を維持するには、あまりにも戦力が少なく、末端まで補給は届かず、過酷な地球環境は兵士たちの士気を低下させました。U.C.0079年4月4日、補充部隊を降下させ、一番の激戦区と言われた中東地域の制圧に成功しましたが、消耗も大きく、その勢いも止まってしまいました。地球連邦軍もその機に乗じて、反攻作戦に打って出る余裕はなく、戦争は膠着状態に陥りました。

 詳しくは前回の記事をご覧ください。

●新型MSの誕生

 公国軍は一度戦力を立て直すため、大規模な軍事行動は控え、戦力の拡充を行います。その中で、新型MSが完成しています。

 U.C.0079年6月、ツィマット社が“YMS-09 プロトタイプ・ドム”をロールアウトします。熱核ジェットエンジンを応用したホバーユニットによる高速移動を実現し、地上での移動力の低さを補うというものでした。同機は制式採用され、同年7月頃には“MS-09 ドム”として、量産されることになります。

 一方、ジオニック社は“MS-06R-1A 高機動型ザクII”をロールアウトしています。MS-06Fの汎用性を捨てて、空間戦に特化した高性能機で、エースパイロットから好評を博しました。しかし、コスト面の問題や高い操縦技術が求められたことにより、少数の生産に留まりました。R型の開発は早くから進められていましたが、ルウム戦役で多数の熟練パイロットが失われてしまったことで、ニーズが変化したわけです。

●潜水艦隊の結成

 同月、公国軍はキャリフォルニア・ベースにて鹵獲した連邦軍の攻撃型潜水艦VIII型を改修し、MS運用能力を付与した“ユーコン級潜水艦”も完成させています。そして、ユーコン級は北大西洋に配備され、潜水艦隊が結成されると、翌月には太平洋、インド洋、北極圏にも配備が進みます。

 コロニー落としによって引き起こされた津波の影響で、環太平洋の港湾が壊滅し、連邦海軍が機能不全に陥っていましたが、連邦軍はより戦略性の高いMSの開発や宇宙艦隊の再建に全力を注ぎ込んだため、制海権は公国軍が掌握することになります。

●フラナガン機関の設立

 U.C.0079年6月の主な公国軍の動きとしては、初のニュータイプ研究機関である“フラナガン機関”の設立が挙げられます。

 フラナガン機関は一部のパイロットが亜光速で飛んでくるメガ粒子砲を高確率で避けるという現象を解明するため、キシリア・ザビによって立ち上げられ、サイド6の8バンチコロニー“パルダ”を拠点に研究を行っていきました。

 機関の長となったフラナガン博士は“ミノフスキー物理学会”の創設メンバーのひとりで、ミノフスキー物理学に精通していただけでなく、大脳生理学や心理学の権威でもありました。

 戦前、彼はミノフスキー粒子が人体に及ぼす影響を研究し、人体への悪影響はないとしましたが、人体の周囲でミノフスキー粒子が振動を起こすことを発見しました。しかも、この振動が強く起こる者ほど、洞察力に優れていたり、環境への適応能力や科学技術への理解力が高いといった特長を持つことが確認されたのです。被験者の中には、この振動を感知できる者もいたようです。

 彼はこの結果からジオン・ズム・ダイクンが唱えた人類の革新“ニュータイプ”の存在を科学的に証明できるのではないかと考えました。しかし、この時点ではニュータイプの存在はまだまだ懐疑的で、それ以上の研究を続ける予算は付きませんでしたが、フナラガン機関の設立により、ニュータイプ研究は飛躍的に進んでいくことになります。

●ニュータイプ研究の闇

 フラナガン博士はミノフスキー粒子を電気的に振動させることで通信を行う“ミノフスキー通信”の基礎理論を完成させました。映像や音声までは難しかったのですが、簡単なコードであれば送受信が可能で、ミノフスキー粒子散布下における長距離通信手段としては画期的なものでした。

 一年戦争末期になると、脳から発せられる感応波を機械語に翻訳して、機械を操作するサイコ・コミュニケーター(精神感応通信機)、通称“サイコミュ”を完成させます。

 これにより、レバーやフットペダルなどを使用せず、思考によって機体を操作することが可能となり、非常に高い反応速度を得ることができました。さらに遠隔攻撃端末をミノフスキー通信によって操作することで、目視できないほどの長距離からの攻撃も可能となりました。

 しかし、博士がニュータイプと定義する“強い感応波を持つ人”でなければ、サイコミュを扱うことはできず、そのような人は極少数しか現れません。そこで、サイコミュを扱うことができる人がいなければ、そういう人間を人工的に作ってしまえば良いという発想に至るわけです。これが後の“強化人間”に繋がっていきます。

●カナヴェル海戦

 U.C.0079年6月12日、サイド6沖で示威活動を行っていた連邦艦隊がパトロール中の公国軍巡洋艦隊を発見し、奇襲攻撃を仕掛ける“カナヴェル海戦”が起こっています。

 結果としては、連邦艦隊の惨敗に終わっていますが、消耗戦を強いることで、じわじわと公国軍の戦力を削り取ることは地上軍への支援にもなり、ひとつの戦闘として見れば、単なる敗北であっても、戦略的には着実に連邦軍有利に傾いていたのです。

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