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イツカノユウグレ

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日々の残像

日々の残像

柔らかな日差し、空には細く白いラインが描かれた青い空が広がっている。風がどこか優し気に肌を撫でるよう流れている。秋晴れ。紅葉のシーズンも相まってか、人々は外に出かけている。少し外に出かけてみようかと思った。そんな出来心で外出する時は、決まって地元のちょっとした名所である背割堤まで足を向ける。名所と言っても、春の花見のシーズンにしか人出がある訳ではなく、大体いおいて閑散とした場所だ。
京都府と大阪府

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記憶のこだま

記憶のこだま

冬の始まり。遠くから流れてくる風の感触が冷え冷えとしてきている。木々の葉は気が付くと黄色や赤に染まり、虫たちは然も静けさを奏でるようなすました音を鳴らす。先日まではうだるような暑さの中を、緑一色の世界で、はいつくばって動き、蝉の鳴く声に気持ちをいらつかせていたことが、まるで別世界での事のようだ。
どれだけ日々季節が巡るのを目の当たりにする環境にいても、どれだけ育つ植物を横目に見ていても、そこに関心

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目覚めの時間

目覚めの時間

朝、アラームの音とともに、今日も一日が始まるのかと思いながらも、頭の中では二度寝の算段をする。二度寝のまどろみは、大体において、嫌な気分だ。今日という日がまた始まるのかと、些か暗澹たる思いとともに、無味乾燥な夢を見る。そして、家を出る時間ぎりぎりまで、何とも言えない眠りをおくる。
一日の始まりが、空腹からはじまると言っていた人がいた。何と羨ましいと、勝手ながら思っていた。他にも、眠りの時間に満ちた

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何を見ても何かを思い出す

何を見ても何かを思い出す

『何を見ても何かを思い出す』というヘミングウェイの小説がある。彼の生前に発表されなかった小説だと、その本の表紙に大体的に喧伝されていた。10数ページの短い小説。学生の頃、何気なしに読んでみたが、僕の中に特に印象はそれほど残らなかった。けれども、その題名だけは、なぜだか心の中に残り続けた。

思い出していることがある。自分の中の記憶を探るのは妙だ。今の自分という枠組みを抜きにして、かつてあった出来事

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