タタカエショーゴ
ワールドカップ出場権を懸けた大一番。川崎フロンターレからは谷口彰悟、山根視来の二人が選出された。
招集メンバーの顔触れ自体は目新しいものではなく、今までに招集されていたメンバーを中心に選んでいる印象だ。
前回の代表戦では山根は出番がなかった。右サイドバックは酒井宏樹との争いとなるが、最近の浦和の戦績の不安定さ、酒井自身のコンディションも怪我がちなところもあり不透明ではある。
フィジカルの優位性がある酒井と意外性・得点力の山根。どちらが先発でも不思議ではない。あとは森保監督の判断次第か。
さて、谷口である。前回の2連戦では吉田、富安の「代役」で出場し守備だけではなく鋭い縦パスを打ち付けるなどほぼ完璧なプレーで存在感を出した。その好調をJリーグの開幕からも継続している。
今シーズンの川崎はディフェンスラインに不安を抱えている。圧倒的なフィジカルで地上戦も空中戦も抑えていたジェジエウが昨シーズン終盤からの負傷から復帰できておらず、その穴を埋めると目されていた車屋も開幕戦で肩を負傷。本職のセンターバックは谷口と山村和也の実質2枚のみという状況である。さらに左サイドバックの登里享平のコンディションがイマイチで浦和戦では負傷退場。新人の佐々木旭や本職がアンカーの塚川孝輝が務めている。
そんな状況ではあるが川崎は暫定首位に立った(3/16時点)。得点数自体はそこまで多くなく、勝利した試合も1-0、2-0、2-1、1-0と接戦が続いている。
何とか耐え凌いでいるのはチーム全体の粘り強さやチョンソンリョンのスーパーセーブもあるが、ここまでの谷口彰悟のパフォーマンスは目を見張るものがある。
単純に強くて速い。それはもちろんだが周囲のウィークポイントをすべて無くしてしまうようなカバー範囲の広さが今季は目立つ。センターバックを組む山村和也は圧倒的な高さを誇り空中戦はほぼ無敗の一方、背後へのスピードについては不安がある。山村が競った後の処理や背後を取られた際のカバー範囲とスピードがとんでもないのである。
さらに左サイドバックのキャスティングが毎試合変わる状況で、隣のポジションの谷口は上手く声を掛けながら守り切っている。
元々は「大学No.1ボランチ」の触れ込みで入団してきたが近年はすっかりセンターバックが板に付いている。(そもそも川崎で中盤で出場したのが数えるほどであるが…)。それもあり足元にも自信のあるプレーヤーであることは事実である。
が、しかし。昨シーズンは彼のビルドアップが引っかかるシーンも時折見られた。ちょっとしたタイミングのズレではあるが、どこか上手くいかないシーンも散見された。
それがどうだ。今シーズンの彼はほぼパーフェクトである。走って良し、跳んで良し、繋いでよし。危ないシーンには彼がことごとく顔を出し目を摘み取るなど穴が見つからない状態である。(某スポーツ紙はアンカーの橘田健人が5人いる表現をしていたが、谷口もそれに双璧を成している。)
前回の1-2月シリーズで得た自信があるとは思う。思い返せばあの2戦で最終ラインから田中碧、守田英正などの中盤へピタッと、スッとつける縦パスを何本も見せた。そこで得た自信を完全にリーグ戦へ昇華させることができている。
充実のパフォーマンスで迎える大一番。負傷が長引く冨安健洋の「代役」での出場は濃厚である(板倉晃の出場の可能性が0というわけではないことは述べておく)。
あえて「代役」としたのはこの一戦が彼のキャリアの大一番であるといっても過言でないことを示している。ここで結果を残せばワールドカップ本大会への出場はおろか中心になれる可能性もある。
クラブではルーキーイヤーから出場を重ね、中心となってきた谷口。ここから日本を代表するセンターバックになれるかどうかはこの2連戦がカギを握っている。
とにかく結果を残すことが求められる、ワールドカップ予選は出場権を得るか失うかの2択である。クラブで見せている美しいほどのパフォーマンスでなくてもいい。
戦え彰悟。その先に得られるものは出場権以外の大きなものがあるはずだ。