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お菓子の袋からペットボトルを作れる!?

6月30日に「使用済みプラスチックの再資源化事業に取り組む新会社設立」というニュースリリースが流れました。

プラスチックの再資源化技術に使用予定のアネロテック社の技術を少し調べてみたら面白そうだったので、メモします。

アネロテック社とは?

・2008年創業
・本社:米国ニューヨーク州パールリバー
・業種:バイオ化学ベンチャー企業
・技術:非食用の植物由来原料から石油精製品と同一性能を持つベンゼン・トルエン・キシレン(BTX)を生成

サントリーは2012年からアネロテック社と植物由来原料100%使用ペットボトルの共同開発に取り組んでいます。

植物由来原料100%使用ペットボトル

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旭リサーチセンター資料」より引用

ペットボトルはモノエチレングリコール(MEG)と高純度テレフタル酸(PTA)より作られます。これまでは、植物由来原料から作られるのはMEGのみため、配合量からPETの植物由来原料の割合は30となっていました。サントリーは2013年に、このPETを使用した製品を導入しています。

アネロテック社のBio-TCat ™技術は非食用の植物由来原料からPTAを作れるため、植物由来原料100%使用ペットボトルの研究開発が行われています。

ちなみに、ペットボトルのキャップはポリエチレン(PE)でできており、こちらは2019年に世界ではじめてサントリーが100%植物由来原料の製品を導入しました。

お菓子の袋からペットボトルを作れる?

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Anellotech社HP」より引用

ここからが、本題のプラスチックの再資源化に関わる技術です。
Anellotech社のPlas-TCat ™技術はPepsiCo社のLay’s Barbeque Potato Chipからペットボトルの主要な原料であるパラキシレン、オレフィン(エチレン、プロピレン)等の生成に実験室レベルで成功しました。

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Anellotech社資料」より引用

Plas-TCat ™技術の詳細は分かりませんが、資料にはThermal crackingの文字が見えるので、PEを熱分解してZSM-5と呼ばれるゼオライト触媒を用いてOlefinsやBTXの収量をあげているのかと思います。

課題

Anellotech社の資料では、potato chipsの包装はPPとPEから構成されていました。日本食品包装協会の資料によると、スナック菓子包装の一部にはPETも使用されているようです。旭リサーチセンターの資料によると、PETは熱分解に持ち込まれるのは望ましくないとあります。

循環型経済の成立のためには、PETを前処理で除く、PETを含まない包材に統一するといった工夫が必要そうです。

編集後記

複合素材の熱分解は今後の展開がとても楽しみです。熱分解に持っていくまでに消費者、事業者からプラスチックを回収する方法も課題になりそうです。熱分解の実用例とか詳しい方はご教示いただけると幸いです。
最近、サントリー様の引用が多いですが、回しものではありません。サントリー様の取組みが先進的なため引用が多くなります。

参照サイト

1.SUNTORY:使用済みプラスチックの再資源化事業に取り組む新会社「株式会社アールプラスジャパン」設立
2.旭リサーチセンター:リサイクルが進むPET樹脂は 循環経済を実現するか
3.SUNTORY:サントリー天然水リニューアル(2013)
4.Anellotech:Bio-TCat™ for Renewable Chemicals & Fuels
5.SUNTORY:世界初!飲料用ペットボトルに植物由来原料を100%使用したキャップを導入
6.豊通ケミプラス株式会社:バイオポリエチレン
7.Anellotech:Anellotech’s Technology Converts Lay’s Potato Chip Bag into Key Chemical Required for New Plastic Bottles
8.旭リサーチセンター:「プラスチックのケミカルリサイクルとその技術開発(下)
9.日本食品包装協会:「第2章 スナック菓子へのアルミ蒸着フィルムの利用

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Photo by Linus Nylund on Unsplash

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