『ドードー鳥が見た夢は』act4

act4.京也の通学路

セットは街。ネオン街のような雰囲気。中心にバス停。その横に京也が立っている。袖から一人の男(クマ)が登場。京也に気付き、近づく。

クマ「おう、京也じゃん!浮かない顔してどうしたの!」
京也「どうしたもこうしたもないよ。寝不足で」
クマ「寝不足?何々、何で?ゲームでもしてんの?ドラクエ?7?」
京也「違うよ」
クマ「じゃあ、勉強か。物理だろ、物理」
京也「ちがーう」
クマ「じゃあ…、淫行か!相手は誰だ!ねぇ!アキ子か!アキ子!」
京也「違う!兄貴だ!」
クマ「兄貴?!兄貴と淫行してんのか?!怖っ、何おまえ!恐怖の京也!きょふや!」
京也「違う!兄貴が夜中に唸ってるのがうるさくて眠れないんだよ!」
クマ「あ、なんだ、そんなことか」
京也「『そんなこと』じゃないよ。そのせいで睡眠不足で毎日眠いんだよ」
クマ「じゃあ、大変だな。兄貴どうにかしないとな」
京也「どうにかしたいけどできないんだよ。相手は寝てるし、オレも他に寝る場所がないし。八方塞がり」
クマ「それはどうしようもないな」
京也「そうなんだよ」
クマ「ふーん。…何で兄貴唸ってんだろうね?」
京也「さぁ、知らない。寝言の時もあるから何か夢でも見てるんだろ」
クマ「夢か」
京也「きっと悪夢だな」
クマ「じゃあ、その悪夢をどうにかすれば良いんじゃない?」
京也「そんな、人の夢なんかどうしようもないだろ。叩いても蹴ってもつねっても起きないし、兄貴。夢の内容をコントロールできるワケでもないし」
クマ「うーん。…いや、できるかもしれないぞ」
京也「え?」
クマ「こないだ僕のじいさまが新たなる発明品を生み出したんだ」
京也「クマのじーさんが?」
クマ「たしか夢に関する発明だって言ってたはずだ。もしかしたら京也の兄貴に使えるかもしれない!」
京也「クマのじーさんが…」
クマ「何だよ、そのワードがそんなに引っ掛かるの?」
京也「だって、クマのじーさんの発明って、いっつも何か…アレだし…」
クマ「アレって、どれ?」
京也「奇抜というか、ポンコツ?」
クマ「ポンコツじゃないよ!」(カバンの中をいじりながら)「ほら、僕がいつも愛用しているシャープペンシル」(ペンを取り出す)「『へらないんデス』!!これ、どんなに書いても芯が減らないんだぜ!原理は不明だけど!」

クマ、ペンを京也に手渡す。

京也「うん…」(イヤそうに)
クマ(カバンの中をいじりながら)「そして僕が愛用しているカッター」(カッターを取り出す)「『サビないんデス』!!水気のあるものを切ってそのまま放置しても一切サビない!しかもサイドのボタンを押すと、なんとまぁ、カッターがハサミに変形するんだ!原理は不明だけど!ホラ!」

クマ、カッターを京也に手渡す。

クマ「そしてドンジリにひかえまするは、僕愛用のお箸『何でもつかめるんデス』…」
京也(さえぎるように)「分かった!分かったから!クマのじーさんの発明がポンコツじゃないことはよく分かった!だから説明はもういいよ!」
クマ「そう?じゃあ、やめる。…で、どうする?」
京也「え?」
クマ「じいさまの発明品見に行く?」
京也「今から?」
クマ「うん。じいさまんち、ここだから」(後ろの家を指差す)
京也「ここなの?!知らなかった…」
クマ「じゃ、そういうことで決定ね。さぁ、行こう!」(京也の腕をつかむ)
京也「本当に信頼できる発明なんだろうな?!」
クマ「大丈夫だ!!…(小声で)多分。」
京也「多分?、今、多分って言った?!」
クマ「言ってない!いいから行くぞ!」(扉を開けて)「じいさまー!!」

二人、扉の中へ。扉を閉める。
暗転。

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