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ガンバ大阪U23に未来はあるのか

ガンバ大阪U23が発足して3年が経ちました。スポーツ誌の報道で、ガンバ大阪がU23チーム廃止を検討しているという情報もありました。そこで、ガンバ大阪U23チームに関して振り返ってみました。

ガンバ大阪U23は2016年にスタート。ユースからトップチームへ昇格した18歳~20歳世代の実戦経験を積ませる場が少ないという問題を解決するため、以前よりあったセカンドチーム構想がJ3リーグに参入する形で実現。
当時、上野山氏(現・ガンバ大阪取締役)は「ユース出身者を3年鍛え上げたい。トップチームに戦力を供給していく体制を構築していく。」とコメントしていました。

1:ガンバ大阪U23の歩み
2:U23を持つことのメリットとデメリット
3:育成の結果
4:今後の展望

1:ガンバ大阪U23の歩み

各年代の体制や成績を見ていきます。

2016年 堂安・初瀬などJrユース三冠世代の台頭
監督:實好礼忠(兼トップチームコーチ)
コーチ:トップチームコーチが兼任
主な出場選手:田尻、林、西野、野田、平尾、初瀬、嫁阪、内田、小椋、市丸、岡崎、妹尾、二川、堂安、小川、高木、食野(ユース)、呉屋など
リーグ戦績:9位(10勝8分12敗 42得点41失点)
指導方法:セパレート(トップチームと練習分離)
OAの起用:あり

堂安、初瀬などJrユースで三冠を達成した世代の選手を擁していたこともあり、初年度で9位とそれなりの結果を残しました。一方で、オーバーエイジ(以下OA)として出場した二川、小椋、阿部、大森らが移籍してしまうなど、選手起用で難しい面が露呈した1年でもありました。U23で出場機会を得ていたユースの食野はトップ昇格となりました。

2017年 選手不足に悩まされた1年
監督:宮本恒靖
コーチ:山口智(ヘッドコーチ)、イ・チャンヨブ(フィジカル)、松代直樹(GKコーチ)
主な出場選手:林、谷(ユース)、ペスヨン、野田、河井(ユース)、平尾、森、嫁阪、高、高江、芝本(ユース)、中原、足立翼(ユース)、妹尾、食野、郡、一美、白井(ユース)など
リーグ戦績:16位(7勝5分20敗 31得点65失点)
指導方法:セパレート(トップチームと練習分離)
OAの起用:基本的になし

2017年は初年度の反省から、トップチームとU23を完全分離。監督・コーチともに専任となり、監督には宮本が就任。OAに関しても基本的に使わず、ケガ人が出てもトップからではなくユースから選手を借りてくるほどの徹底ぶり。選手層が若くなったことや、ケガ人の続出、トップチームの練習に選手を取られるなどして満足にメンバーをそろえられない試合が続き、スタメンの大半をユースからの2種登録選手が占める試合もありました。結果、連敗が続くなど辛い1年となりました。U23で出場機会を得ていたユースの谷、芝本、白井はトップ昇格が決まりました。

2018年 宮本体制から實好体制へ
監督:宮本恒靖(兼トップチームコーチ)→實好礼忠
コーチ:トップチームコーチが兼任
主な選手:谷、鈴木、野田、西野、山口、松田、森、市丸、芝本、高、高江、福田、妹尾、食野、高木、井出、一美、中村など
リーグ戦績:6位(13勝8分11敗 53得点43失点)
指導方法:トップチーム合同練習→セパレート(7月より)
OAの起用:あり

宮本体制2年目。OA起用と戦力の充実、一美・食野・高江を始めとした選手らの成長もあり、序盤から勝ち点を積むことに成功。一方でトップチーム構想外でOAとして起用していた矢島や泉澤が夏に移籍してしまうなど1年目に近い現象が起きました。またトップチームの成績不振の影響を受けてか7月よりトップとU23の練習がセパレート形式になり、ベンチメンバーがGK含め3人しかいなくなるなど昨年に近い試合もありました。宮本監督のトップチーム就任に伴い、實好監督が就任。選手に寄り添った指導で成績も安定し、6位と過去最高の順位でフィニッシュしました。2種登録からの選手起用は最低限に留まり、一美・中村・高などはトップの試合に出る機会も増えました。

2:メリットとデメリット

実際にU23チームを運営してみて、想定内・想定外の色んなことが見えてきました。メリットとデメリットを挙げてみます。

メリット
・若手選手が実戦出場の機会を得られる
・プロ契約が早まる

一番のメリットは言うまでもなく若手選手が実戦の機会を得られること。U23を経由してトップチームに引き上げられた選手、または移籍した選手は後述します。また出場機会が増えたことによって若手選手のプロ契約が早まりました。

デメリット
・人件費を始めとした費用がかさむ
・選手のモチベーション維持が難しい
・移籍市場において「J3(U23)送りにされる」などと言われる

デメリットは費用面が大きいです。U23はトップチームの試合と比べると動員数は大きく見劣りし、興行としても厳しいように思えます。初年度こそ物珍しさからか動員数がそこそこありましたが、そこがピークとなってしまっています。
そして何より想定外だったのが選手達の反応です。ある程度想像はしていたと思いますが、選手達の反応はよりシビアなように見えました。選手からするとU23は「自クラブの中の底辺」といった印象を受けてしまうのか、屈辱的だったとか悔しかったという旨のコメントを残す選手もいました。トップ戦力外(ケガ含む)→U23→移籍という流れの選手も、二川・小椋・岡崎・岩下・内田・田尻・泉澤・矢島と思いつくだけでかなりの数になります。
また「U23のあるチームに行くとJ3送りになる可能性がある」としてトップチームの補強活動の際に悪影響を及ぼしているのではないか、という懸念もあります。

3:育成の結果

U23の目的は優勝することではなく、育成。目標をどこに定めているかにもよりますが、若手選手をどれだけトップチームに送りこめたか、または他のクラブから必要とされる選手に育てあげたか、といったところが基準になると思います。

U23からトップチームに引き上げられた主な選手
初瀬亮(2016)、堂安律(2017)、中原彰吾(2017)、林瑞輝(2018)、高江麗央(2018)、食野亮太郎(2018)、高宇洋(2018)、一美和成(2018)
U23を経由して他チームに移籍した選手(元トップチーム選手は除く)
堂安律(→フローニンゲン)、中原彰吾(→長崎レンタル)、嫁阪翔太(→盛岡)、田尻健(→金沢レンタル)、平尾壮(→福岡レンタル→町田)、森勇人(→水戸)

冒頭の上野山発言の「ユース出身者を鍛え上げる」では4名が、「トップチームへ戦力を供給」についても少なくとも7名が該当し、それなりに結果が出ているように思えます。全てが「U23チームがあったことによるもの」であるとは言い切れませんが、J3で出場機会を得られたことでトップチームの戦力になったり、移籍のチャンスをつかんだ選手がいることは事実だと思います。

4:今後の展望

今年の秋ごろ、ガンバ大阪がU23チームからの撤退を検討しているという情報がありました。3年やってみて、そういった結論に至ることに理解はできます。また先日、来年のU23チームは基本的に21歳以下の選手で構成するという情報がありました。これは冒頭の「3年鍛え上げる」の原点回帰といったところでしょう。

出場機会に関しては他のJ2クラブ・J3クラブにレンタルすることでも得られます。観客動員数は2016年をピークに下がっており、1試合平均で2401人(2016年)→1226人(2017年)→1382人となっています。今年は昨年に比べて少し伸びましたが初年度ほどには集まりませんでした。観客数に差はあれど、この傾向はU23を抱えるセレッソ大阪、FC東京も同様でした。

来年に向けた動向では、ユースからの昇格者は奥野耕平ただ一人です。高体連からの獲得情報は今のところありません。加えて、U23で出場を重ねていた西野、妹尾、森の契約満了と一美にも期限付き移籍の噂があるなどOUTのほうが多い現状となっています。選手は足りていませんが、ユースから2種登録で補充する形を採るのでしょうか。
監督に関しては實好監督の京都サンガ移籍が発表されました。後任監督は発表されていませんが、森下仁志氏が就任するという報道もありました。

個人的には、育成を掲げるガンバにはU23を継続してほしいと思っています。U23の試合で各自がアピールし切磋琢磨する、そこで活躍した選手がトップチームへ引き上げられる、または他クラブへ移籍して活躍する(移籍金を得る)、そういった循環を今後も見せてほしい。
サポーターに出来ることは、応援すること、そしてU23の試合を見に行くことだとも思います。
クラブが今後どういった動きを見せるのか、注目しています。

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