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石田流解体新書③「対後手角交換石田流33銀型~44銀」

1図

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 1図は33銀型に16歩としたところです。
 前回はここから後手が24歩とする指し方への対応を解説しましたが、56角と15歩のコンビネーションが抜群で、先手が後手の飛車交換の筋を迎撃することに成功しました。

 途中の58銀と自陣を引き締める手や86歩からの玉頭攻めは、参考になったと思います。


1図からの指し手
44銀(2図)

2図

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 今回は44銀と出る手を見ていきます。

 現在のアマチュア棋界では、後手で角交換型の石田流を指される方の8割がたは、この44銀型にするようです。

 と言うのも、前回解説した渡辺ー久保戦のイメージが強烈過ぎて、後手が24歩から仕掛けるのを避ける傾向にあるからなんです。
 まあ、アマチュアの石田流党としては、
「あの久保九段でさえ短手数で負けてしまったのだから、ちょっと指す気がしないよ」
と思っても仕方がないと思います。

 ただ、面白いことに、プロで角交換型の石田流が出現した場合には、44銀より24歩の方が多いんですね。
 理由は明らかになっていないのですが、プロ棋士は44銀型を避ける傾向にあるようです。

 と、前置きはここまでにして、講座の先を進めましょうか。


2図からの指し手
56角(3図)

3図

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 先手は44銀と出られても、やはり56角と打ちます。

 ただ、24歩の時の56角と44銀の時の56角は主旨が違いまして、今回は1筋攻めの意図ではありません。

 戻って、56角では、58金右(A図)や66銀(B図)などの手も有力ですので、後手の狙いを知るためにも簡単に説明しておきます。

A図

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B図

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 A図の58金右は最も自然な手です。
 ですが、後手の攻めを誘発しやすく、あまり得策とは言えないようです。

 と言うのも、ここで後手から55銀(C図)と出る手があるからなんですね。

C図

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 55銀の意味は、
「5筋の歩を突いてこい」
です。

 注文通り56歩と突きますと、64銀 66銀(D図)と進みます。

D図

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 66銀で66歩と突くのは、先手から仕掛けの取っ掛かりがなくなってしまい、千日手が予想されるので不可。
 なので66銀は39角から馬を作る順を防いで順当なところですが、こう上がってもやはり千日手が懸念されます。

 D図から、33桂 15歩 54歩(E図)と進むと、やはり先手から仕掛けるための取っ掛かりがありませんし、15歩で55歩(F図)と突っ張るのは、後手が74歩 68金直 84歩 15歩(G図)などと黙って駒組みを進めてくれれば、次の26飛~56角~36歩を見て作戦成功ですが、すぐに54歩と反発され、同歩 同飛(H図)のように進むと次に56歩~39角が見えており、先手が指しにくくなります。

E図

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F図

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G図

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H図

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 H図から57歩と先に受ければ先手はすぐに潰れることはないですが、せっかく5筋の位を取ったのに、解消された上に相手にだけ一歩を持たせる結果になるのでは、何をやっているのか分かりませんね。

 なので、C図の55銀に56歩と突いて銀を追い払うのは作戦的に損となります。

再掲C図

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 C図では、26飛(I図)もあります。

I図

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 ですが、I図から33桂 68金直 44飛(J図)と進んだだけで、先手の次の指し手が難しくなります。

J図

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 J図で56歩は、64銀と引かれてやはり千日手を心配しないとなりません。
 ですので、56歩は得策ではありません。

 かと言って、55の銀を捕獲しようと66歩(K図)と突きますと(65歩~56歩の意味)、34角(L図)と王手で打たれて失敗となります。

K図

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L図

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 L図からは88玉とするくらいですが、25角と一歩をかすめ取られ、以下、17桂(跳ねないと24飛で困る) 34角 65歩 24歩(M図)で先手の構想は旨く行きません。

M図

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 M図の24歩が34の角の退路を確保しつつ25歩を見せていて味が良いですね。

 と言うことで、J図は先手の指し手が難しいのですが、不利かと言われるとそうでもなかったりします(笑)。

 J図で、15歩(M図)はあります。

M図

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 15歩は、隙無く構えて、後手からの仕掛けを誘っている意味です。

 以下、後手が動くなら36歩(N図)と64角(O図)が考えられます。

N図

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O図

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 N図36歩に、同銀や同歩は46銀と出られて失敗です。
 負担にさせたかった55の銀が自陣に進軍してくるのは、気持ち的にも良いモノではありませんしね(笑)。

 なので、36歩は同飛の一手。
 そこで28角(P図)が後手の狙いとなります。

P図

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 P図以下は16飛 25桂 56歩 64銀 66角 34飛 38銀 37桂成 同銀 同角成 同桂 同飛成(Q図)が一例で難解な形勢です。

Q図

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 Q図は先手が駒得をしていますが、後手は竜が出来ていてこれから攻める方針が分かりやすいので、形勢は難解なものの後手ペースだと思います。

 ただ、駒得をして受ける展開が好きな人にはありかもしれませんので、一概にダメとは言いませんが、まあ、私ならそもそものA図58金右を選ばないですね(笑)。
 58金右は堂々とした手なのですが、後手の石田流党が待ち受けているところだと思いますので、よほど深く研究していないと先手が良くはならないと思います。

 ですが、様々な手筋が飛び交う非常に面白い戦いにはなりますので、実力養成用としてはありですね。


 O図の64角も見ておきましょう。

 64角の狙いは46銀と出て、力尽くで捌く意味です。

 ですが、先手に45歩(R図)という軽い手筋があり、64角の構想は旨くいきません。

R図

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 45歩に同飛は、41角 22金 24歩(S図)で先手有利。

S図

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 S図は先手の2筋突破が受かりませんし、飛、角、銀が重く、すぐには捌けないので(46銀には56銀が先手になるため)後手の構想が破綻しています。

 ですが、M図で64角と打ってくる人ってかなり多いんですよね(笑)。
 なので、一応、対応を書いておきました。


再掲M図

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「難しくても互角の戦いになるのなら、それはそれでありでしょう?」
と思ったあなた……。

 そう、仰る通りなんです。
 互角の戦いになるなら……、ね。

 ですが、M図で本当に厄介なのは、36歩や64角とせず、84歩(T図)と突いて千日手を狙うことなんです。

T図

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 T図で56歩と突けば64銀で千日手コース確定ですし、66歩と突いて打開含みに駒組みをすると、今度は34角ではなく36歩と突かれて、以下、同飛 64飛(U図)で先手が困ります。

U図

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 U図は66銀と28角や27角の打ち込みが同時に受からず、後手がまんまとペースを握ったと言えます。


 ……と、長々とA図58金右の変化を見てきましたが、先手がなかなか良くならないことが分かったと思います。

 後手を活かした千日手狙いと、55銀からの変化が厄介で、先手は思うような構想が描けないのです。

 なので、難しいとは思いますが、私は58金右を推奨しません。
 色々と工夫した結果が千日手では、徒労感がハンパ無いですのでね(笑)。


再掲B図

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 B図66銀も見ておきましょう。

 66銀の狙いは、
「55銀と出られると厄介なので、まずは66銀と出てその筋を消しておこう。……で、後手が5筋を突いてくれば飛車の可動域が狭まるので、先手の駒組みがしやすくなるはず」
というものです。

 具体的には、B図以下、54歩 15歩 55銀 77銀(銀交換は乱戦に持ち込まれるので不可) 74歩 88玉 33桂 78金 84歩 66歩 64銀(V図)のように進みます。

V図

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 V図はたしかにしっかりと駒組みが出来ました。
 この後は58金からもっと堅く囲うことも可能そうです。

 しかし、満足な駒組みが出来ても、何処で仕掛けるのでしょう?
 後手は55歩と突けば54飛~34飛を繰り返し、千日手含みの手順を続けるでしょう。
 そうなった時に打開のプランがないと、模様が良いだけで勝ちにはつながらないんです。

 B図66銀もA図58金右同様に、有力な手段ではあります。
 ですが、後手の千日手狙いを打開するのが難しいので、積極的におススメしたいとは思わないんですよね。

 なので、3図56角を本譜とします。
 56角なら、少なくとも千日手にはなりませんのでね。


再掲3図

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 56角の意図は、
「後手は千日手含みの展開を狙っている。その原因となっているのは、4段目で飛車がウロウロと動き回れて、形を崩さずに待つことが出来るからだ。だったら、まずはその飛車を不自由な場所に追いやってやろう」
ということです。

 実際、56角と打てば、次の手は33飛しかありませんので、狙いは一応達成出来ますが……?


3図からの指し手
33飛 66歩(4図)

4図

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 33飛には66歩と突いて角の逃げ道を空けます。
 今回の56角の主旨は飛車の封じ込めですので、可能な限り角のラインを維持し、後手の飛車を捌かせないことが眼目となります。


4図からの指し手
55銀 67角 84角(5図)

5図

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「おいおいっ! なんか、したり顔で解説してるけど、これ、66銀が受からないじゃねーかっ! こんなんどう見ても居飛車が悪いだろっ!」
と思ったそこのあなた(笑)。

 そう、たしかに次の66銀は受かりません。

 ですが、それもこちらの予定通りだったりします。
 逆に言うと、後手は84角くらいしかなかったりします。

 例えば、84角で他の手を指すとして、どんな手があるでしょうか?

 64歩(W図)は、角の頭を狙う意味で自然ではあります。

W図

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 しかし、64歩には75歩(X図)と84角を予め緩和しておくのが味が良いです。

X図

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 また、64歩で44歩も考えられますが、それには58金右(Y図)と上がっておけば、結局、後手は84角くらいしかなく、本譜と似たような進行になります。

Y図

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5図からの指し手
68金 66銀 同銀 同角 77銀(6図)

6図

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 68金では58金右もあり、それでもほぼ同様に進みます。
 ただ、68金の方が77の地点と57の地点の両方に利いていますので、若干優りそうに思います。

 また、77銀では77桂(Z図)もあります。

Z図

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 Z図は、相手に攻めさせてカウンターを打つ方針です。

 以下、44角(84角も難解) 58金右 66銀 56角 77銀成 同金 85桂 88銀 77桂成 同銀 55金 67角 66金 同銀 同角 77銀 69銀 88玉 58銀不成 同飛(ア図)が一例で、難解ながらも先手が指せます。

ア図

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 ただ……。
 時間がたくさんある将棋ならともかく、10秒将棋や切れ負けでこの展開は正直避けた方が良いと思います(笑)。

 なんせ、ア図だけでも44角、77角成、65金と、後手から攻めを繋いで指す指し方があり、それぞれを考えなくてはならないので。

 先手陣は薄いので、受け間違えれば即、致命傷になります。
 そのリスクを負ってでも指したい方は、Z図77桂を選んでも良いと思いますが、まあ、手堅く77銀と打った6図の方が方針が分かりやすく勝ちやすいと思いますので、こちらを推奨しておきます。


6図からの指し手①
44角(7図)

7図

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 44角では84角(イ図)もありますので、後述します。

イ図

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7図からの指し手
24歩 同歩 同飛 23歩 28飛(8図)

8図

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 先手は44角にすぐ24歩から飛車先交換をします。
 これが実は超重要で、この先の変化に多大に影響します。

 7図では58金右(ウ図)もありそれも有力なんですが、58金右には64歩(エ図)が成立します。

ウ図

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エ図

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 64歩の狙いは、54歩~74歩~73桂と、桂も攻めに使う順を見せながら駒組みを進める意図です。
 そうなると先手は67に角を打ってしまった関係上、進展性がありませんので、作戦負けになる恐れが出て来ます。

 ですので、出来れば後手の駒組みが進む前に攻めたいのですが、エ図で45歩(オ図)とするのは、55角 56銀(56歩は37角成 同桂 36歩があって危険) 77角成 同金(同桂は66銀で後手良し) 65歩(カ図)と進み、難解な将棋となります。

オ図

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カ図

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 カ図では、77金の形が薄く、次に66銀と打ち込まれる手があり、攻めたつもりが受けに回らざるを得ない展開になるのが不満です。

 とは言っても、47金 66銀 49角 34飛(キ図)のように進めば難解ではあるのですが……。

キ図

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 ですが、キ図は抑え込んでいたはずの後手の飛車が活用されていますし、依然として歩切れの先手としては、受けに回るのもかなり大変だと思います。

 エ図64歩にすぐ45歩は難しそうなので、24歩 同歩 同飛 23歩 28飛(ク図)と歩交換して待つと、今度は54歩 45角 63銀打(ケ図)と一転して駒組みを狙われ、結局、難しい分かれとなります。

ク図

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ケ図

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 ケ図から後手は74歩~73桂もありますし、53角と引けば44歩から飛車の活用も見込めますので、形勢は互角ですが、先手が好んで飛び込む変化ではないと思います。

 と言うことで、ウ図58金右は難しいですが、受けに回るか駒組みかの選択を迫られので、8図のように先に歩交換をしてしまった方が優ると思います。


8図からの指し手
54歩(9図)

9図

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 9図で64歩(コ図)は、成立しません。

コ図

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 コ図以下、45歩 55角 56銀 77角成と進んだ時に、同桂と取れるからです(サ図)。

サ図

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 58金右の形で77同桂と取るのは、66銀で角が逃げられませんので後手ペースとなりますが、サ図で66銀と打たれても58角(シ図)と角を逃げて何でもありません。

シ図

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 また、66銀で36歩から飛車を捌くのは、以下、36同歩 同飛 58角 34飛  35歩(セ図)で先手が有利となります。

セ図

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 セ図以下、同飛は26角から馬を作って先手ハッキリ有利。
 54飛は、41角でやはり先手有利。
 24飛は、25歩 54飛 66角 33桂 26飛(ソ図)と、抑え込みの体制を確立させて先手が有利となります。

ソ図

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 ソ図以下は、47角~58金右と活用し、しっかり自陣を調えてから36飛と34歩を狙ったり、55銀と飛車を詰ます手を狙えば自然に先手が勝てると思います。


 と言うことで、8図から64歩は色々と変化があっても49金型が活きて先手が指せる流れでした。
 つまり、8図のように先手が24歩から一歩交換するのは、64歩を簡単に突かせない効果があるんです。

 なので、後手は角の退路を作るために、9図54歩と突くくらいとなります。


9図からの指し手
45角(10図)

10図

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 45角が狙いの一手です。
 この歩取りが意外と受けにくいんですね。

 物理的に54の歩を助けるには53銀、65銀 55歩しかありませんが、53銀は銀を打ってくれた上に角の退路が封鎖されたので、58金右から囲って先手に不満はありません。
 65銀は考えられますが、これには67金(タ図)が手堅い一手。

タ図

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 67金は放っておくと75歩~66歩で銀を捕獲する狙いなので、53角と引いて75歩を阻止しますが、66歩 74銀 68金(チ図)で、角を67に引くスペースを作って先手が良くなります。

チ図

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 55歩は、後手としてはやりたくない一手です。
 ここを突くと44の角の利きが止まり、後手に攻め味がなくなってしまうからです。
 なので、角の利きがなくなったことに満足して、58金右と上がっておき、53角と引いたら66銀(テ図)と出っ張った55の歩を狙って先手有利となります。

テ図

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 と言うことで、物理的に54の歩を助けるのは旨く行かないことが分かりました。

 そこで、後手は軽く受け流す手を目指しますが……?


10図からの指し手
55角 58金右(11図)

11図

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 歩を守ったり逃げたりするのは旨く行かなかったので、今度は55角とします。

 55角は、54角と歩を取ると34飛(ト図)と活用する意味です。

ト図

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 先手の角は飛車を抑え込む目的で打ちましたので、ト図は形勢が悪い訳ではないですが、方針にそぐわないので54角は損な手になります。

 なので、現状では54の歩は取れません。

 そこで、先手は58金右と金を引き締めます。

 11図は先手が作戦勝ちだと思います。
 理由は、後手が一歩得しているものの、6筋の歩が伸びる展開にならないので、先手が玉頭に脅威を抱えなくて済んでいるからです。

 とは言っても、11図を作戦勝ちと断定して話を終えるのではかなり乱暴ですので、11図以降に考えられる展開を幾つか紹介しておきます。


 11図から後手には4手段あります。

 64歩(ナ図)と、44歩(二図)と、36歩(ヌ図)と、64角(ネ図)です。

ナ図

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二図

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ヌ図

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ネ図

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 ナ図の64歩は、6筋の歩を伸ばして玉頭攻めをする狙いですが、疑問手です。
 と言うのも、56銀と角取りに出られと44角と引くしかなく(46角は48飛で角が助からない)、結局54角(ノ図)と歩を取られてしまうからです。

ノ図

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 ノ図で34飛は、45角とされると33に引くしかないので不可ですし、放置すると22歩の手筋が飛んでくるしで、64歩は旨く行きません。


 二図44歩は、飛車の可動域を拡げながら55角を活かして先手の飛車のこびんを攻める意味です。

 しかし、44歩には54角とやはり歩を取る手が成立し、以下、43銀 65角 36歩 同銀 46角 47金 64角 88玉(ハ図)で、持ち駒の銀を投入したのにこびん攻めが旨くいかず芳しくありません。

ハ図

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 ハ図でなおも35歩とこびん攻めに拘るのは、25銀と棒銀に出られて後手が困ります。


 ヌ図36歩は、二図44歩の変化だと同銀と取られてしまうので、先に突き捨てて同歩と取らせる意味です。

 36歩 同歩 44歩 54角 43銀 65角 45歩(ヒ図)で、後手の攻めが決まったかに見えますが、ここで75歩(フ図)が落ち着いた一手です。

ヒ図

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フ図

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 75歩は、64歩と突かれた時に角が76に逃げる意味です。
 そして、46歩の取り込みに56銀と出て大丈夫とみているのです。

 フ図以下、46歩 56銀 64角 37桂 36飛 38歩(へ図)でピッタリ受かりますし、次の43角成や44歩が狙いとして残っていますので、先手がハッキリ有利となっています。

ヘ図

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フ図ですぐに取り込むのは無理なので、54歩(ホ図)と先手の角道を遮断しつつ後手の角にヒモを付ける手も考えられます。

ホ図

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 しかし、54歩には48金(マ図)が受けの好手。

マ図

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 マ図以下、46歩 56銀 47歩成 55銀 48とに、44歩(ミ図)が切り返しの一手で、先手は駒損をせずに捌けますので有利になります。

ミ図

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 55に角を置いたままだと当たりが強いので、一回64角と引くネ図も考えられます。

 しかし、角道が玉から逸れたので88玉(ム図)と深く囲って、やはり36歩からの攻めは大丈夫です。

ム図

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 ム図から、36歩 同歩 44歩 54角 43銀 65角 45歩 37桂 46歩 56銀 36飛 38歩(メ図)で、やはり先手が有利です。

メ図

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 後手の角が64にいるので64歩が突けず、75歩の一手を省くことが出来ますので、56銀とかわした手が角に当たらなくても受けが成立するのです。

 以上で、6図から44角と引いた変化の解説を終わります。

 24歩からの飛車先交換を優先し(8図)、64歩と突いてくるのを阻止して、54歩に45角(9図)と出るのが急所でした。

再掲8図

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再掲9図

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 9図以下は変化が多いですので、もし講座を読むだけでは理解しにくいようなら盤に並べてみて下さいね。



6図からの指し手②
84角(12図)

12図

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 84角は64歩や74歩と突いて、玉頭戦に持ち込む狙いです。


12図からの指し手
58金右(13図)

13図

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 44角型ではすぐに24歩から飛車先交換をしましたが、84角型は57の地点を狙っていますので、まずは58金右と57の地点を補強しておくことが大事です。

 対して後手は、ここから二通りの指し手に分かれますので、それぞれ説明していきます。


13図からの指し手①
64歩 24歩 同歩 同飛 23歩 28飛 65歩(14図)

14図

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 後手は64歩と突きます。
 これは、
「歩の無い筋の歩を伸ばせ」
の格言通りの手で理に適っています。
 狙いは67角の頭である66の地点。

 先手も一方的に攻められては酷いので、24歩から飛車先交換をして反撃の準備をします。

 後手はなおも65歩と伸ばして14図となります。

 65歩以外の手でしたら、先手はどの手に対しても同じ対応で良いのですが、64歩~65歩とシンプルに歩を伸ばした場合のみ次の手が違いますので、先にそちらから説明します。


14図からの指し手
86歩 74歩 56角 54銀(15図)

15図

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 86歩が重要な一手です。
 65歩と先手が角頭を狙われたので、後手の角頭も同じように攻める狙いです。

 後手はこのまま85歩と突かれると93角とするしかなくなりますので、74歩と逃げ道を作るのは順当なところ。

 その74歩を見て、56角と出るのが先手の狙いです。
 56角は65角~74角と歩をパクパク取り、玉頭の制空権を取ること。

 そうなっては酷いので、後手は54銀と持ち駒の銀を投入して歩を守ったのが15図です。

 15図の54銀では、73桂(モ図)と節約して受ける手や、55銀(ヤ図)と角にプレッシャーをかける手もありますので、順に見ておきましょう。

モ図

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ヤ図

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 モ図73桂は相当に図々しい手なので、先手は85歩と突いてとがめに行きます。
 以下、同桂の一手に88銀(ユ図)が冷静な受けで、次の86歩が受かりませんのであっさりと先手が良くなります。

ユ図

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 ヤ図の55銀には65角(ヨ図)と歩を取りながら出ます。

ヨ図

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 ヨ図で63銀と上がられると、角が狭く先手がピンチのように見えますが、以下、24歩 64歩 23歩成 同金(同飛は同飛成 同金 43角成で先手大成功) 56角 同銀 同銀 24歩 42銀 32飛 53銀成 72金 47金(ラ図)で、先手が駒損をしていますが、後手が歩切れで23の金が遊び駒になっている関係上、先手の53の成銀の存在が大きく、先手陣が堅いのと6筋に歩が利くので先手が有利となります。

ラ図

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 途中、24歩に同歩と取るのは、以下、56銀 64銀 74角 同銀 24飛(リ図)の十字飛車が決まり、先手有利。

リ図

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「石田流を相手にすると、受けばかりの展開で嫌になる」
なんて思っている方は、リ図のような強襲を食らわせられたら溜飲が下がりそうですね(笑)。

 ラ図以下は、55銀~88玉と十分に力を貯め、65歩~64歩を実現させれば後手は持ちこたえることは出来ませんので、相当先手が勝ちやすい展開となっています。


15図からの指し手
66歩 同歩 85歩 73角 66銀 65歩 同銀 同銀 同角 34飛 56角 24飛 同飛 同歩 74角(16図)

16図

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 15図から66歩 同歩 85歩 73角 66銀(ル図)が巧妙な手順です。

ル図

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 先程まで65歩の位を取られ、84の角のにらみに防衛していた6筋が、あっと言う間に先手の勢力圏になりました。

 後手は黙っていると先手からの玉頭攻めが待っていますので、65歩と銀を相殺してこれ以上玉頭に勢力を張られないようします。

 後手の34飛は、働きの無い飛車を働かせる意味で、この一手です。
 対して、先手の56角は、74の歩が取れないので順当なところ。
 飛車に当てられた後手は24飛と飛車を交換して勝負に出ます。

 16図は、まだ勝ち切るには大変ですが、先手が有利な局面です。
 39飛(レ図)と飛車を下ろされたら、59飛 同飛成 同金 66歩 58銀 55角 77銀(ロ図)と、手堅く自陣をまとめておけば何でもありませんし、後手からは他に旨い攻め筋もありませんので。

レ図

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ロ図

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 ロ図は74の角が攻防に利いていて先手陣には隙がありません。
 また、41角成や84歩からの玉頭攻めもありますので、先手が方針に迷うことは無いと思われます。



13図からの指し手②
64歩 24歩 同歩 同飛 23歩 28飛 74歩(17図)

17図

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 後手は65歩が早いと目標にされましたので、今度は74歩と角の退路を確保しつつ慎重に進めます。

 先手は58金右と上がり、2筋の歩を交換して戦いに備えるのは同じです。

 17図の次の手が、84角型に対する急所の一手です。
 この構想があるので、84角型は旨く行かないと言っても過言ではないです。


17図からの指し手
86銀(18図)

18図

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 86銀が、後手の角頭を脅かしながら、端攻めと75歩からの玉頭攻めをにらんだ急所の一手です。

 対して、後手には73桂、54歩などの手段が考えられます。


18図からの指し手①
73桂(19図)

19図

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 73桂は一番攻撃的な手段なのですが、桂の頭が急所になりやすくリスクも大きいです。


19図からの指し手
75歩 同歩 95歩 同歩 94歩 76歩 同角 65銀 67金右 76銀 同金(20図)

20図

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 75歩と95歩を突き捨てて、94歩と垂らすのが先手の狙いです。
 2筋の歩交換で得た持ち歩をここに使うのが旨い筋なんですね。

 後手は放置すると95銀と出られて角が死んでしまいますので、76歩~65銀と先手の角に当てながら受けます。

 しかし、先手の67金右が強手です。
 角銀交換で駒損しても玉頭攻めが繋がる方が大きいとみているのです。

 仕方がない76銀に同金と取った20図は先手有利。
 次の74歩と95銀の狙いが同時には受かりませんので。


18図からの指し手②
54歩(21図)

21図

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 54歩は前に出過ぎると反撃が厳しいとみて、様子を見た手です。
 84の角を62~44に活用するような手も含みにあります。


21図からの指し手
95歩 同歩 94歩 62角 75歩 84銀(22図)

22図

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 先手は54歩に端から仕掛けます。

 後手の62角は予め当たりを避けた手で予定通り。
 そして、75歩と先手は狙いの玉頭攻めを開始しました。

 対して、後手の84銀は手堅く受けた意味。
 とにかく玉頭をおさめ、左辺の駒を活用するまでは我慢するつもりです。

 84銀では75同歩(ワ図)や44角(ヲ図)も考えられます。

ワ図

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ヲ図

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 ワ図以下、93歩成 同玉(同香は75銀で次の94歩がある) 95香 同角(82玉 91香成 同玉には34香がある) 同銀(ン図)で、駒得の先手有利。

ン図

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 ン図以下は、95の銀を86~75に使う感じで指せば次第に駒得が活きてきます。

 ヲ図44角は狙いの角の転換ですが、以下、77桂 75歩 同銀 74歩 64銀 63歩 73歩 同桂 同銀成 同玉 93歩成 同香 94歩(ガ図)で、端攻めが決まり先手有利。

ガ図

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 素直に75同歩も、角の利きで牽制する44角も不可ということで、84銀に期待がかかりますが……?


22図からの指し手
74歩 63銀 56銀 36歩 47金 37歩成 同金 22金 77桂 74銀 45銀 63銀 65歩(23図)

23図

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 74歩に63銀は、玉頭をおさめる方針なら自然な流れです。
 このまま74銀~72金と何事もなく囲えれば、後手は安泰となります。

 56銀は玉頭方面と45銀~34銀の両方を狙っています。
 受けられた方と逆の方を攻める意図です。

 36歩は、飛車の可動域を拡げながら角筋を通した意味です。
 同歩 同飛となれば、一気に後手の飛車が動き出しますので、先手の47金もこうするところ。
 37歩成 同金と金をおびき出してから、22金と34歩から飛車を取られる手を防ぎます。

 ここで77桂が力を貯めた一手です。
 45銀(ギ図)とすぐに攻めたくなりますが、それには72金 34銀 31飛 43銀不成 42歩 同銀成 35飛(グ図)で、形勢が悪い訳ではありませんが、やや成銀が空振りしている感じがするのが不満でしょうか。

ギ図

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グ図

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 77桂に74銀と歩を払うのは、そう指したいところ。
 74銀で72金は、65歩 同歩 64歩 同銀 65銀 同銀 同桂(ゲ図)で、74の歩が残ったまま玉を薄くされて後手が不満でしょう。

ゲ図

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 先手は後手の74銀を見て45銀と出ます。
 今度は54に銀が出られるので、それを阻止して63銀もそう指すところ。
 そして、65歩と玉頭をこじ開けに行ったのが23図になります。

 23図は先手有利です。
 次に64歩 同銀 54銀とすり込む手が防ぎにくいからです。



 以上で、角交換型石田流33銀型から44銀と出る指し方への対応の解説を終わります。

 次回は、31銀から穴熊を目指す指し方への対応を解説いたします。

 では……。


 と、ここで講座を終ろうと思ったのですが、今回は長いので、最後にまとめを書いておきます(笑)。


3図

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 44銀にすぐ角を打つのが先手の骨子となる一手でした。
 他の変化も難しいですが、受け一方の展開を回避するのなら、56角が優秀です。


5図

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 84角で66の歩は取られてしまいますが、それは予定に入っていますので大丈夫です。
 むしろ、
「一歩を損することで角を打たせた」
ということですし、
「84角以外の変化を消した」
意味もありますので。


6図

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 77銀としっかり打つ方が、後で攻める展開になりやすく優ると解説しました。


7図

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 44角にはすぐに2筋の歩交換をし、64歩を突かせないことが大事です。
 49金型のままの方が58角と逃げられて幸便でしたし、54歩に45角と出て先手が指せる流れなことを解説しました。


12図

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 84角と引く指し方には、58金右~2筋の歩交換をした後、角を目標に玉頭戦に持ち込むのが良いと解説しました。
 64歩~65歩には86歩~56角。
 その他の指し手の時には86銀~端を絡めて……。
 何れも先手が受け一方になることなく攻める展開が望めます。


 と言うことで、今度こそ本当に終わります(笑)。


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